「炎と闘う隊員たちに捧ぐ」オンリー・ザ・ブレイブ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
炎と闘う隊員たちに捧ぐ
つい最近も米カリフォルニアで大規模な山火事が発生しニュースで報じられたが、こちらは2013年にアリゾナで起きた大規模山火事。
その未曾有の大災害に立ち向かった森林消防隊員たち。
見る前から期待してたが、やはり良かった! 日米で成績不振が不思議なくらい。
炎に挑む男たちの如く、胸アツな一作!
話的にはオーソドックス。
隊員たちのドラマが描かれる。
クライマックスまで退屈…なんて事はなく、ストレートで見応えある。
軸として描かれるのは、指揮官と入隊したばかりの新人。
指揮官のマーシュ。
個性的な隊員たちを束ね、率い、多くの山火事と戦ってきた大ベテラン。
消火法はかなり変わったやり方。
そんな彼には果たしたい夢がある。それは、精鋭部隊“ホットショット”になる事。
彼の隊は“2軍”。経験も実績も豊富なのに、いつも格下扱い。
それが悔しい。
自分の名誉の為ではなく、隊員たちや町を守る為。
熱い漢。
ジョシュ・ブローリンがハマり役。ブローリン自身も実際に消防隊員経験があるという。
新人隊員のブレンダン。
入隊前はヤク中で、逮捕歴もあり。堕落した生活を送るダメ人間。
ある時、元恋人の妊娠を知る。娘が産まれる。
これを機に自分を替え、真面目に生きようと入隊。
元ヤク中には死にそうな訓練の日々。しかし、必死で食らい付く。
マイルズ・テラーがまたもや厳しいしごきに耐え抜く。
隊の昇格と新人の成長が並行して描かれる。
ある現場で、ホットショット昇格審査。
自分のやり方が認められず、マーシュが審査員にブチギレ。
不合格確定…と思いきや、合格! 遂にホットショットに!
役立たずで厄介者で足を引っ張ってばかりだったブレンダンも、隊の一員として成長していく。
隊員たちと絆も育まれる。何かと突っ掛かって来て揉めた事もある隊員とは親友に。
元恋人ともヨリを戻し、初めて娘を抱く。
晴れてホットショットとなった隊はある山火事で町のシンボルである老大樹を守り、英雄となる。
全てが薔薇色。胸がすくほど爽快。
全てが順調だと、不安も出てくる。
ブレンダンは家族の為に、安全な建物消火への転属を切り出す。
マーシュの怒りを買う。
マーシュが激怒した理由は、自分に対して。
自分はいつも仕事優先で家族を顧みず、それを理解してくれている妻と結婚し安定した生活を送っているが、本当は妻も不満と心配を募らせている。
この若者は昔の自分と似ている。強引に引き留めて、こいつに自分と同じ道を歩ませたくない。
しかし、こいつを手放すのは惜しい。それほど気に入ってもいる。
マーシュも苦悩している。
その象徴が、昔ある山火事現場で見た、火の海の中を逃げ惑う火だるまの熊。
出口の無い炎の中で、自分も悶え苦しんでるのではないか…。
マーシュが出した決断は…。
そんな時遂に、発生する…。
最初は単なる小火にしか過ぎなかった。
しかし、それはあっという間に拡大。圧倒されるほどに。恐ろしいほどに。
彼らが守る山、森林、大自然。
序盤の訓練中見渡したその風景は、雄大で素晴らしいものだった。
が、ひと度炎に包まれれば、脅威でしかない。
本当にそうだった。
何もかも燃やし、飲み込むそれは、まるで生きている炎の怪物だ。
彼らは山々を守っているのではない。闘っているのだ。
クライマックスの山火事は、さすがのスケール。
スペクタクル・ムービーの醍醐味充分。
ラストは隊全員でこの山火事に立ち向かい、見事鎮火させる、スリリングで熱いドラマになると思いきや…、
期待と違った。衝撃的、まさかの結末。幾ら実話とは言え…。
ネタバレチェックを付けるので結末に触れるが、
ブレンダンは監視役として、隊と別行動。この時の意味深な別れがその後の運命を示していた。
現場に留まった隊は、炎に取り囲まれ飲み込まれ、全員死亡。
ただ一人生き残ったブレンダンの心痛は計り知れない。
自分が犠牲になれば良かった…。
いや、彼一人だけでも生き残って良かった。
隊を辞めようとしていたブレンダンだが、きっと…。
ただ一人生き残った罪悪感ではなく、隊の一員として居られた誇り。
命を引き換えにしてまでも闘った隊員たち。
彼らを伝える為に。
決して、忘れない。