「人間味に溢れた佳作」オンリー・ザ・ブレイブ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
人間味に溢れた佳作
予告編を見て、ドロップアウトした若者が共同体の価値観に認められることで社会復帰を果たすリバイバルストーリーだろうと勝手に想像していた。たしかにそういう場面もあったが、全体としては森林消防士たちのリアルな群像劇で、安易な予定調和に陥らない骨太の作品になっている。
主人公の隊長は、非論理的で理屈の通じない妻となんとか折り合いをつけていこうとする一方、発生する森林火災が人々の生活を脅かさないように日々の厳しい訓練を欠かさず、実際の鎮火活動では経験則を生かして効果的な対策を速やかに実施する。誰もが尊敬の念を禁じ得ないだろう。
事実に基づいた作品とのことでストーリーはどうしても地味にならざるを得ないが、地味なりに、男たちの優しさや小さな願い、女たちの不安と母の思いなど、いいシーンが鏤められている。人間味に溢れた佳作である。
コメントする