「悪くないけどモヤッとします。」マスカレード・ホテル ふさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くないけどモヤッとします。
木村拓哉さんが主人公のとあるゲームをプレイしたばかりだったのと、東野圭吾さんの作品が好きだったのを理由に、映画を観に行きました。
原作は7割方読んでいた状態です。
キャスティングは決して悪くないと思います。サイトではネガティブキャンペーンか、木村拓哉さんについて批判的なコメントが多く見受けられますが、「検察側の罪人」の時のような緊迫感のある演技はできる方だと認識していますし、下手だと揶揄されるのは少し不自然な印象を受けました。
どちらかと言えば、「コンフィデンスマン」のイメージが最近では(私の中で)強調されている長澤まさみさんへの違和感の方が強かったです(髪型も同じですしね)。
しかし本人はとても素晴らしいホテルマンを演じていらっしゃったと思います。
ただキャスティングに関して強いて言うならば、豪華なキャストを無駄に使い過ぎた…と感じています。濱田岳さん、ムカつくお客様を見事に演じておられましたが、最初に出たきりその後姿を現しません。他のキャストさんに関しても同様です。入れ替わり「HERO」などを彷彿とさせる役者陣が現れては特に多くはその後重要視されることはありません。
キャスティングと書きましたが、これは原作の軽さが影響している気もします。
近頃の東野圭吾さんはワンパターンになって来ているなとボンヤリ感じており、他の方の仰るように「新参者」などに比べ本作品は軽く描かれた印象です(私も軽くしか読んでません)。新田という主人公についても同様、主人公の深みがないと言われる原因はおそらくそこにもあります。
「誰が犯人か分からない」
そんな緊迫感を味わってもらいたい作品だったかと思うのですが、クレーム対応に重きを置かれていて、また豪華な役者陣が風のように現れては一瞬で消えてゆくので笑
初めて作品に触れる方は誰が犯人なんだろう…と考えるような場面も余裕も無かったのではないかな?と思っています。
(所々再登場していたら観客も疑いの目をもって観ることが出来たかも?)
脚本があまり好きでは無かったので、コンフィデンスマンとコラボでもなにかして、「実は私も潜入してましたー」くらいのどんでん返しがあれば面白みもあったのかもしれません。…勿論全く別の作品としてです。
そして「泣かせに来てる…のかな?」というどっち付かずな場面も多いです。これはBGMの使い方にも違和感でした。
そんな中で本当に絶賛したいのは松たか子さんです。声色も最初に現れた時には松たか子さんだと気付きませんでした。
演技が素晴らしいことは知っていますが改めて好きな女優さんだと認識することが出来ました。そこが一番観に行って良かったと思える点です。
特に好きでなかった点は、冒頭のカメラワークが鼻につくところです。そこが唯一本当に受け付けなかったところ。ドローンで撮ったような上空からの映像は単純に酔います。
夜から昼への移り変わりもワンパターンだなと感じました。ホテルより外(殺害現場など)に視点が移っていかないので、工夫…ではなくネタ切れなのか?と思いました。そこは退屈です。
加えて、ホテルマンと刑事が打ち解けて行くと言うシーンですが…新田の改心が映像の中であまりにも早いです。
展開があまりに早いので、この作品はどうせならドラマにし、じっくり時間をかけて打ち解けて行くシーンを表現して欲しかったなと思います。
「いやいやこんな簡単に…w」とツッコミたくなる。
ただ微笑ましいシーンがあったことは確かなので、そこを無視すれば新田とホテルマンの二人は本当にいいコンビでした。
「襲われたのにこんな直後に普通にピンピンしてるんかい!」とか、「こんなあっさり撤収するんかい!」とか、「なんで最後戻ってきたのか説明しないんかい!」とかつっこむ部分が多いので、ちょっとこの作品には不完全燃焼な面があります。微妙にモヤッとして終わります。
もっと登場人物を掘り下げるべきでしたね。
花嫁はその後どうしたかとか、ストーカーはどうなったかとか、足りない面がそれぞれの人物にあって塵も積もった結果…モヤモヤします。とにかく、ほんの少しモヤモヤします。
「こんなとこ泊まりてえー」と思えるような豪勢なホテル、役者陣の演技は褒められていいものだと思います。
さんまさんを探すのも楽しかったです。
ただ時間とBGMやカメラワークのパターン、脚本が少し足りなかった…それだけです。
もっと良くつくれた作品だった筈なので今後があれば期待しています。
素人が長々と失礼いたしました。