「久留生検事が新田刑事になり、女性相棒が長澤まさみになったテッパン作品」マスカレード・ホテル Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
久留生検事が新田刑事になり、女性相棒が長澤まさみになったテッパン作品
間違いなく大ヒットする。みんなが大好きな展開の作品だ。製作のフジテレビが「HERO」(2007/2015)を意識している通り、木村拓哉演じる久留生検事が新田刑事になり、女性の相棒役が長澤まさみ(松たか子→北川景子→長澤まさみ)に置き換わっただけのテッパン設定である。
もちろん東野圭吾が原作なので、作品としては趣きが異なるわけだが、細かなウンチク(本作の場合、ホテルマンあるある)を絡めた伏線の引きかたが、まさに東野ミステリーである。そういう意味では同種というわけではない。
さらに演出が「HERO」の鈴木雅之監督なので、木村拓哉の扱い方に手馴れていることは確かだが、そのぶん新しさはない。もちろん鈴木監督は、綾瀬はるかの「本能寺ホテル」(2017)、「プリンセス トヨトミ」(2011)なども手掛けており、娯楽大作に抜かりはない。
劇中、舞台となる"ホテル・コルテシア東京"の正面玄関を、昼夜の変化をつけながら捉えるカットが何度も出てくる。これは「HERO」で、"東京検察庁城西支部"の正面玄関を撮った左右対称の構図と同じである。2015年の「HERO(2)」では、"ネウストリア大使館"の正面カットもこれだ。
またホテルという室内セットを使いながら、上下パンが駆使され、ダイナミックなカメラワーク(ドローンも使用)も、鈴木監督らしさが出ている。映画のスクリーンサイズには効果的だ。
2016年SMAP解散後のソロ木村拓哉が本格的に挑む"俳優業"は、その作品性、共演キャスティング、監督に至るまで完璧にマネジメントされている。
ソロ1作目の「無限の住人」(2017)では、時代劇で意外性を出し、三池崇史監督の起用による市川海老蔵、福士蒼汰と共演した。2作目は原田眞人監督による二宮和也との共演を目玉にした「検察側の罪人」(2018)だ。いずれもソコソコである。そして3作目にして見馴れた"木村拓哉"が見られる"本命"タイプでの勝負となった。
ただ"本命"の裏返しは、"マンネリ"である。なので、小日向文世と松たか子が出てくると、結局、「HERO」となんら印象は変わらなくなったりする。
とはいえ、"木村拓哉"然としたスーパースターが、共演者を従えて活躍する。これは実績のある手法で、多くの観客が求めているもの。さらに原作は東野圭吾のベストセラー小説で、新田刑事を主役にしたシリーズ化が可能である(すでに原作は3巻発売中)。
フジテレビにとっては昨年、特大ヒットした「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」に続く、看板シリーズが誕生したともいえる。
(2019/1/18/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)