「人身御供」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
人身御供
心臓外科医のスティーブンと謎の少年マーティンがどういう関係なのかが最初なかなか見えてこない。そのうちマーティンがストーカーのようにスティーブンにつきまとうようになり、どんな展開になるのかと思っていたら、どんどん雰囲気があやしくなり、狂気じみた不条理なストーリーでした。ブラックなコメディとまではいかないけれど、ラスト、スティーブンが目隠しをしてロシアンルーレット銃発射する姿には不謹慎ながら、ちょっと笑ってしまいました。
不協和音のような音響は圧迫感がありそれでもって芸術的。後半は不穏な空気がただよい、ボブ以外の家族はみんな狂っていきます。ボブの異変は最初は、呪いなのか?薬物なのか?と考えていましたが、そもそも、これはマーティンの恨み(妄想)がスティーブンに乗り移り、スティーブン自身の悪夢だったのかもと思ったり。
スティーブンはボブ(息子)とキム(娘)、どちらが将来性があるかと教師にたずねて、どちらを生かすかと考える。妻はまだ自分は子供を作ることができるわと言い出し、すでにどちらかを殺すことを考えている、キムは「死んだら音楽プレーヤーをちょうだい」とボブに普通に話しかける、ボブは突然、父のような心臓外科医になりたかったんだといい子になる。人間の業の炙り出しです。
マーティンが監禁されていた時、アナが彼の足下にキスをするのは何の意味があったんでしょうか。命乞いにしては単純過ぎるし。
マーティンの怪演が光ってました。コリン・ファレルを食っていたかもしれません。
スパゲティ食べるシーンの汚らしさと不気味さがなぜか印象に残っています。
独特のカメラワークと映像美、音響もクラシカル。なかなかやりますなといった感じです。