「「掟に従属する人々」という、ランティモス作品に共通した主題を明確に理解できる一作」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
「掟に従属する人々」という、ランティモス作品に共通した主題を明確に理解できる一作
カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した本作、脚本はヨルゴス・ランティモス監督とエフティミス・フィリップの共同執筆です。フィリップは『ロブスター』(2016)でも共同脚本を務めるなど、ランティモス作品の世界観に大きな影響を与えた人物の一人と見て間違いありません。
ランティモス作品は、時として理不尽に思えるような掟に従属する人々を繰り返し描いているんだけど、本作は主題理解という点では非常に明確な作品であるといえます。確かに主人公の医師・スティーブン(コリン・ファレル)には罰を受けて然るべき過失があったとはいえ、マーティン(バリー・キオガン)が課した掟は非現実的かつ不条理です。だがその掟は実際に発動し、マーティンの家族は徐々に追い詰められていきます。
追い詰められているとはいえ、どことなく掟を従順に受け入れているかのような家族の振る舞いが、まさに儀礼に供される犠牲であるかのような印象を強めています。
フィリップは数作の空白期間ののち、『憐みの3章』(2024)で再びランティモス監督と組んで本作の世界観を蘇らせています。そのため、『憐みの3章』の予習としては、『女王陛下のお気に入り』(2019)や『哀れなるものたち』(2024)などの有名どころの近作以上に、本作が最適かも!
コメントする