「一神教の世界観」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア Kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5一神教の世界観

Kさん
2024年2月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ランティモス監督の一連の作品の中で、現代社会を舞台としているのが印象的であった。最初のうちは少年の精神疾患やサイコパスを疑っていたのだが、物語の後半で登場人物たちが神の存在を受け入れているように見えるようになって、これは私にはわからない一神教の世界観であり、つまり少年は神であり、彼らにとってこのような神への畏怖は寓話的なものではなく本物なのだろうと思い直した。その視座から眺めると、死を突きつけられる登場人物たちの悩みがとてもリアルなものに感じられた。
一方神の怒り鎮める役である、父であり家長である主人公は、物語を通じて解決に導くようなことを何もできていない。自己中心的な償いで少年を家庭に迎え入れて事態を複雑にし、ついに生贄が避けられないことを認識しても、自ら贄を選ぶことをしない。このような姿を通じて、この作品はキリスト教的な父権や男性中心の社会に対する疑問を表現しようとしているのではないかと思った。

K