「トリアージ」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア レントさんの映画レビュー(感想・評価)
トリアージ
独創的で不思議な作品であり、最初から最後まで目が離せない。なかなか味わえない映画体験だった。
優秀な外科医のスティーブンは愛する家族と共に豪邸で何不自由なく暮らしていた。しかし、飲酒した上で手術を執刀した際、患者を死なせてしまう。その患者の息子であるマーティンとかかわったことから次々と彼の家族に異変が訪れる。
マーティンは自分の父を死なせた報いとして家族の一人の命を奪う、だから誰にするか決断しろと迫る。
愛する家族の誰かを選ぶなどできるはずもない。自分が犯した罪が原因ならば自分の命を奪えばいいものをそうはさせてくれない。だれか家族のうちの一人だという。
そんなことがあるわけないと思いながらも子供たちの原因不明の病状は一向に回復の兆しを見せない。このまま、本当に彼の言う通り誰か一人を選ばなければならないのか。
スティーブンはマーティンを監禁してこの事態をなんとか止めようとするがそれも何ら解決にはならない。圧倒的無力感と絶望感。追い詰められたスティーブンが最終的にとった行動とは。
コロナ禍で話題になったトリアージ、命の選別を強いられる父親の苦悩を描いた異色作。実際に学校で子供たちの成績を聞いてどちらを選ぶべきか聞いてるスティーブンの姿はかなりブラックが効いてる。
人間が時として不条理な状況下に置かれた時の徐々に追い詰められてゆく心理状態がていねいに描かれており、最後まで興味深く見られた。
引きで撮影された画も効果的で想像もできない不穏な事態が起きていることがその画からも伝わってきた。えもいわれぬ不安と困惑で心が搔き立てられた不思議な作品。
今晩は。
私はこの作品を映画館で観て、ヨルゴス・ランティモスの不穏過ぎる不条理極まりない世界観に嵌りました。
こういう作風って、カンヌとかで指示されるんですよね。では。