「究極の2択」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
究極の2択
ラストの衝撃。
終盤の30分は非常に興味深い展開でした。
(人間は保身のためなら我が子も殺す生き物なのでしょうか?)
自分の犯した罪の償い・・・
それが家族の1人(2人いる子供の片方)を殺して償う!!
非常におかしなヘンテコ極まりない2択を、父親(コリン・ファレル)は、
迫られるのです。
ギリシャ悲劇に着想を得たそうです。
ヨルコス・ランティモス監督は
ギリシャ出身なので、ギリシャ悲劇も身近な物語りなのかもしれません。
《ストーリー》
心臓外科医のスティーブン(コリン・ファレル)は数年前に
飲酒した状態で手術を行い患者を死なせた過去がある。
遺児のマーティン(バリー・コーガン)とは、親しく付き合い
時計や金を渡す関係だ。
父親のように慕われてると思っていたスティーブン。
マーティンは徐々にストーカー的になって来る。
彼の要求に従えなくなったスティーブンに
マーティンは恐ろしい予言をする。
自分の家族の1人(父親)が死んだのだから、
スティーブンの家族も1人死ななければバランスが取れない。
スティーブンの家族は、
1、手足が麻痺する
2、食事を摂取しなくなる
3、目から出血する
4、そして死亡する。
予言の通り息子のボブの足が萎えて立てなくなる。
(検査をしても医学的には異常がない)
次いで娘のキムの足が麻痺してしまう。
2人は寝たきりの状態です。
怒り狂ったスティーブンは地下室でマーティンを拘束してリンチをする。
殺してしまおうとするが妻のアナ(ニコール・キッドマン)の反対で
思い留まる。
そして遂にスティーブンはボブかキムのどちらかを殺す決断をする。
この殺害の遣り方が非常に特異なものです。
備忘録の為に書き記します。
(ネタバレのネタバレなので、・・・)
キムとボブのクチをガムテープでぐるぐる巻き
(悲鳴を聴かないためでしょう)
キムとボブは身体もガムテープで巻かれて、
ソファに少し離れて、2人は座っている。
位置を確かめたスティーブンはニット帽を深く被り見えなくしてから、
その場で数回回ってから銃撃します。
1回目は失敗に終わり、再度同じように目隠しで2〜3回、回ってから
猟銃を発射する。
2度目で息子が娘のどちらかが死にます。
そしてラスト。
ダイナーで座る父親スティーブンと母親のアナ。
違う席で生き残った子供の1人が、すっかり健康になって
ハンバーガーにケチャップをなみなみと掛けて食べています。
離れたカウンター席にはマーティンが落ち着いた様子で座っています。
そしてスティーブンとアナと助かった子供の1人が
何事も無かったように歩いて行きます。
本当にユニーク。変わった設定の映画。
以前に見ていますが、今回バリー・コーガンを見たくて
鑑賞しました。
「イニシェリン島の精霊」でとても印象に残ったのです。
この後ヨルゴス・ランティモス監督はメジャー作品
「女王陛下のお気に入り」を撮るのですが、
この映画の前の作品「ロブスター」でもコリン・ファレルが主役。
コリン・ファレルはメジャー作品とインディーズ系の作品を上手く選んで
キャリアを積み重ねています。
出演作の楽しみな俳優の1人ですね。
良し悪しは別にしてインパクトの強い作品でした。