「妄想を支える人々」聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
妄想を支える人々
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酔って執刀し、患者を死に至らしめた外科医。その患者の息子、マーティンが「呪い」で外科医の娘と息子を苦しめる、と見えるが肝心の呪いについては全く描写がない。この作品は寓話だ。マーティンの妄想を外科医一家が支え、集団妄想を現出させたのだ。
石井聰互監督『逆噴射家族』では、家族が病気にかかっているとの妄想を抱いた父親が、家族の病気の悪化を感じ、殺そうとして死闘を繰り広げる。『聖なる―』も『逆噴射―』も、呪いや病気といった見えないものが家長である父の妄想を惹起し、結果、家族に危害を加えさせる。そして、前者は息子の射殺、後者は家族同士のサバイバルバトルという「犠牲」を払い、再帰的に秩序が回復される。
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