「本当の敵」バトル・オブ・ザ・セクシーズ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の敵
クリックして本文を読む
池袋・新文芸坐
「アイ、トーニャ」との2本立て
タイトルを知った時は単純明解すぎて逆に食指が動かなかった世紀の男女対決試合、その実現までに初めは乗り気でなかったビリーがなぜそれをするのか、そして彼女が得たものと、得られなかったものについてのストーリー。
作り手はその単純さこそを逆手に取ってくる。
試合を持ちかけた自称「男性至上主義者のブタ」ボビーにとっても、それは単なるヘイトの結果なんかではなかったという。
注目されればなんでもいい、求められるためならどんなことでも言う、というのはむしろ現代のヘイトスピーカーの本質にも通じるものがあり、その点でボビーが罪作りなのは間違いないんだけど。
ストーリーテリングそのものはけして単純ではなく考え抜かれたもので、不明を恥じる。
結局のところ、ヒロインにとってはファム・ファタル的な美容師のことも、献身的に尽くす夫のことも、取るに足らない相手であるというあたりが残酷。
結局コートの上の「世紀の男女対決」は行われるのだが、ヒロイン言うところの「本当の敵」はそこにはいない。
スティーブ・カレル演じるボビーもビリーも2人とも道化のように祭り上げられるだけ。
スティーブ・カレルは面白くてその場を盛り上げるお調子者だが、どこか物悲しい役みたいなのをうまく演じてた。
そしてわかりやすい「男女対決」の影でビリー・ジーンの「本当の敵」は明かされることもなく隠されてしまう…という終わり方も心に残り、その後の彼女の幸せを祈りたくなる。
コメントする