「クレイグ最後のボンドでタブーに切り込む」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
クレイグ最後のボンドでタブーに切り込む
自分は、007シリーズやミッションインポッシブル等のエージェント物は、欧米が善であるというプロパガンダ映画に見えてしまう人間。前もって、断った上でのレビュー。
最後であるということで、ボンドが愛するマドレーヌとの愛を中心にストーリーが進む。
戦う相手は、遺伝子の配合から狙った相手すべてを殺すことができる遺伝子兵器を盗んだスペクターと、そのスペクターに復讐をしたいサフィン。スペクターの一員ミスターホワイトの娘が、実はマドレーヌであり、サフィンの家族は、ミスターホワイトに殺され、その復讐にマドレーヌの家を訪れ、彼女の母を殺害し、彼女をも殺そうとした曰くつき。
序盤、元カノのヴェスパーの墓を訪れた時、ボンドが襲撃をされ、マドレーヌと一緒に逃亡して難を逃れるが、彼女が敵と通じていると疑ってあっさり別れるのは違和感。彼女の弁明に耳を貸そうとしない。
振り返ってわからないのは、サフィンが、この遺伝子兵器を使って、何故人類を殺そうとしてアジトを作っていたのかの理由。復讐するのなら、スペクター一味をやっつけるだけで良かった。スペクター=旧ソ連のイメージ、現代の悪い奴らは、それ以外の組織としたいのか。
ボンドが愛した女性が、スペクター一味の娘であり、その娘との間に生まれた女の子がいて、その二人を守ろうと奮闘するボンドを描くというのが新機軸。それ故に、ただの色男ボンドではなく、一人の人間としての行動するという部分が多かった。涙あり、土下座あり。ただ、人質に取っていた娘を、サフィンがあっさり手放すのは意味不明。
サフィンとの対決で、遺伝子兵器に感染し、彼が触れる人間すべてを感染させてしまうことを知り、自ら死を選ぶボンド。(ミサイルで島ごとアジトを吹っ飛ばしただけで、あの後、感染を防げたのかは疑問。)007シリーズでタブー的であった、ボンドの妻とその子、ボンドの死に切り込んだ、クレイグ最終話であった。ボンドが死ぬために、どういう設定であれば良いかって、逆算して作った物語なのかも。
次回、007が初の女性、ノーミになるのか、話題のアナデアルマスのパロマが登場するのだろうか。
新型コロナウイルス感染症やワクチンは、米軍が絡んで開発させた遺伝子兵器であるという説が、欧米中心に広がっている。実際、ワクチン騒動で、とんでもない儲けを得たのは米英の製薬会社だ。007等のエージェント映画は、知らず知らずのうちに悪は誰かを人々に洗脳する力を持っていると思っている。この映画でも、遺伝子兵器の開発を進めたのは、米英で、テロをする側に渡ったら人類が破滅するような描き方がされている。実際に起こることを、事前に予言的に映画で描き、悪はテロを起こす奴らであると洗脳しようとしていうのなら恐ろしいことだ。現実世界で、本当の悪は誰なのかは、映画に洗脳されずに切り離して考えなければならない。
自分は、そのような世界観を持っているが故に、007シリーズを単純なアクション映画として見られなくなっている。ただ、これまでのシリーズの流れからして、かなり異質な内容。また、物語の連続性を高めることで、他の作品も再度参照するという効果はあるのかな。こんなボンドもありっていうことで、見ておいて損はない。