「クレイグボンド作品の集大成」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ vegaさんの映画レビュー(感想・評価)
クレイグボンド作品の集大成
個人的にはクレイグボンドの集大成として、とても良かったように思いました。
途中作でボンドがヴェスパーのことを思い出すシーンは何度かありましたが、本作のボンドは、はっきりとした形で初めてヴェスパーの心情を理解できたとも言えるのではないでしょうか。
そういった意味で、本作はカジノ・ロワイヤル、スペクター両方の後作として相応しく、フクナガ監督の、クレイグボンドの007過去作に対するリスペクトを垣間見たような気がします。
また、007シリーズに感情的な側面を吹き込んだのが、クレイグボンドの醍醐味の1つでもあると思うのですが、初めてカジノ・ロワイヤルを観終わったときの、あの重厚感にも似た感覚を久しぶりに味わいました。
その重厚感は、迫力あるアクションに加え、ボンドの内面に近づいたからこそ、 生まれたものなのではないかと思っています。
それはカジノロワイヤルで、ボンドが放心したヴェスパーに寄り添った場面、 スカイフォールで、ボンドが母へ抱く感情に近いものを、Mに対して見せた場面を観た時に、感じたものと同じでした。
ネタバレするので多くは書きませんが、本作でも、やはりボンドの人間的な側面が重厚感を生じさせ、シリーズで一貫したテーマとなっていたように思いました。
10年間もボンドを演じてきたダニエル・クレイグのアクションや演技も、もちろん素晴らしく、感動しました。
【追記】
日本の要素 (作務衣、畳、 能面等)が所々出てくること、純日本ではないことへの抵抗は、個人的にはあまりありませんでした。
外国で日本のことを細部まで理解するのは 、とても難しいし、逆に西洋的な文化・ 価値観に根付いたクレイグ007の細かい精神を理解するのも難しいと思います。
監督が自分のルーツに興味・関心を持ち、創作に活かしたことに大きい意味があって、 そこには日本文化を大事にしたい気持ちと、日本への敬意もあるのではないかと感じました。