「映像と物語のアンバランス」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ Angelicaさんの映画レビュー(感想・評価)
映像と物語のアンバランス
映像は文句なしにカッコ良かったと思う。
手前の車が上手にはけて、その奥の美しい海辺の遠景に視点をいざない、先程はけた車がその景色の中に再度インするのは、お決まりだがバッチリ決まってやはりカッコいい。
そんなシーンが随所にあるのだが、物語の方はというとどうにも痒いところに手が届かない。
何度かボンドが危機に晒されるのだが、どうも緊張感が感じられない。
おそらく、原因はラスボスと人類を危機にさらす(らしい)生物兵器の掘り下げと描写の曖昧さ。特にラミ・マレック演じるラスボスのキャラクターの浅さは余りに気になる。演技ではなく設定的にだ。そもそも登場自体がスケジュールの関係か知らないがとにかく少ない。
その為、色々話したり起こったりするのだが全て疑問符を視界の隅に感じながら見る事になる。
007でなければここまで求める事もないのかも知れないが、この大御所的な大作のハイクオリティな映像と腑のぬけた物語のアンバランスさを見ると、まあまあかなと奥歯に物の詰まったような感想を持たざるを得ない。
そして最後に、悲劇性をあれだけ煽って終えておきながら、最後の最後に「あの」一文を出すのは蛇足としか言いようがない。
作り手というよりも、その他の要素に踊らされてしまった映画というのが正解なのかも知れない。であれば、まあ「よくある映画」の一本なのだろう。