「時世にマッチした内容 【この映画はシリーズの傑作なのか?はみ出し者なのか?】」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ イルカ🐬【映画考察】さんの映画レビュー(感想・評価)
時世にマッチした内容 【この映画はシリーズの傑作なのか?はみ出し者なのか?】
ホラー映画のようなオープニングから始まり、今までになくボンドの悲しさを映し出した描写、ボンドに娘がいること、そして時世にあった細菌兵器の出る設定。この映画が大勝負に出てきたことはたしかでしょう。
今回の映画での見どころ、独自の考察を記してみようと思います!
【ボンドの内面を映し出す描写】
ダニエルクレイグ版の007は、一貫したストーリーにより描かれるという前例のない試みにより、ジェームズボンドという人間をこれまでになく深掘りすることに成功していました。(パンフレットより。)ダニエルクレイグ版の集大成であるこの作品は、この流れを最大限に利用したようです。
ボンドが必死にヨットを操縦しているシーンは、マドレーヌに裏切られたことや、引退したことによる心身の孤独と戦っているようにも見えます。
【ボンドガールというセックスシンボルからの変化】
今作から、登場する女性キャラクターにはボンドウーマンという言葉が使われ始めました。ボンドを騙す峰不二子のようなイメージから一転し、ボンドの脇を固めるマドレーヌ、ノーミ、パロマなどのキャラクターは、感情がより具体的に描かれることで、観客は彼女たちを理解し、共感しやすくなっています。
ノーミがベットでかつらを脱ぐシーンや、パロマがボンドを着替えさせるシーンでの「そういうのじゃないから!」というセリフなど、今までのボンドのプレイボーイなキャラクターイメージを逆手に取った笑いは、新しい価値観に順応した進化と言えます。
【世界観】
レビューでも見られる通り、全体的にシリアスな展開が続きます。特に後半がそうですね。
観客の緊張がほぐれ、ワクワクするようなシーンは、007あるあるであり、ファンの一つの楽しみでもありました。
『スカイフォール』でいうと、ボンドが香港の賭博場へ小舟で渡る幻想的なシーンなどがいい例です。
本作でいえば、アバンタイトル前の、秘密を紙に書いて燃やすシーンが神秘的でしたが、これは映画のテーマでもある、「過去をかえりみず前へ進む」を象徴するシーンでもありました。
物語の中心から外れた、「ワクワクするが、特段深い意味はないシーン」は、今作で言えばQがせいろで何か蒸そうとしていたカットなどが該当しますが、品があり現実離れした演出とまではいきません。いいも悪いも、息抜きタイムの少ない映画だったと言えるでしょう。
【細菌兵器の登場する設定】
映画で細菌兵器が登場するのは珍しくないですが、今回はコロナを想起させる描写がいくつかありましたよね。
① 海岸でのMのセリフで「昔はじかに敵と対決出来たが 今や敵は空中を漂っている」と言うシーン
② 「人類を淘汰すれば 世界はより良い場所になる」と話すサフィンは言葉を話すコロナウイルスのようにも見えます。
③ スペクターが、感染であっけなく全滅してしまうという容赦ない設定。
2020年から予告が複数公開されていますが、劇場公開まで、細菌兵器が出てくることに関して一切触れていません。ということは、監督が時世に合わせて脚本を変更した可能性も考えられなくはないです。物語のまとまりがなくなるときは、途中で変更が加えられた時の場合が多いです。後半シリアスになるのは、コロナを想起させる内容ゆえ、慎重に扱ったことが理由なのかもしれません。
ただ、細菌でDNAに忍び込み外部からコントロールできるというのは最先端の武器としては使いやすい設定なので、たまたま時世と被ったということも十分に考えられるでしょう。皆さんはどう感じましたか?
【引っかかった、分からなかった点】
① ボンドと収監されているブロフェルドの会話シーンでのボンドのテンションが、いつもの紳士的振る舞いと違い妙にフランクだった点。幼馴染だったにしても、状況的にあのように喋るタイミングではなかった気がします。
② 序盤、Mの電話している背景にあるスポーツカー。マクラーレンっぽい車体で、の白と赤のカラーだったがします。インテリアというよりは、武器のような感じで置かれていた気がします。後半登場する予定がカットされたんでしょうか?考えすぎですかね?
③ Qが電子眼球の記録映像を掘り起こすシーンがあります。Qが観ていたのは誰の電子眼球だったのでしょう?サフィンの手下の傭兵が付けていたことしか記憶にないです。
どなたか何か分かったら教えて頂けると嬉しいです!
【個人的な感想】
シリーズ映画でありがちな、全て「違うけど同じ作品」という常識を勇気を持って破って来てくれた作品でした。
ボンドがタキシードを着たときは流石に痺れました!アクションシーンは中毒性がありますね! コロナ生物兵器都市伝説は大袈裟にしろ、なぜか他人事ごとでは観ていられない映画でした。あとサフィンの手下の刈り上げの傭兵がカッコ良かった!あの俳優さん今後注目されるのではないでしょうか笑
ダニエルクレイグ版はかなり好きだったので、あと数回は劇場に足を運ぶことになりそうです。その都度追加の考察も投稿したいと思います。特にボンドの娘、そしてラストについてきちんと見て考察したい。次はトイレを直前に。ドリンクはSサイズ。
【まとめ】
シリーズ作品にしては斬新であり、賛否両論あることでしょう。観客は、何を期待して見に行くかで感じ方が変わる気がします。
しかし、歴史的映画シリーズの最新作としての期待、コロナ禍の緊張感、モヤモヤの中で、「予想外」をかましてきたこの作品は、映画業界、エンタメ業界の起爆剤となることは間違えなさそうです。
最後まで読んで頂きありがとうございました😊