「ヒューマンティックな007」007 ノー・タイム・トゥ・ダイ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒューマンティックな007
待ちに待ち、待ちくたびれた007シリーズの25作目!
他の大作は、これほど延期されることなく公開されてきたが、本作に限っては、本当に待たされた。しかし、鑑賞してみると、感染兵器に関わる内容であっただけに、このコロナ禍で、全世界に向けて公開するのは、躊躇ってきたのも分かる内容であった。
007をダニエル・クレイグが演じるようになってから、それまでのどこまでもカッコよく、クールで、女たらしの007のイメージから、随分、人間臭くなってきたと感じていた。本作は、もちろんアクション映画の面白さも随所に見られたが、それ以上に、007によるヒューマン・ドラマ的な、ラブ・ストリーがテーマとなって描かれている。
そして、ネタバレになるから詳しくは書けないが、これまでの007シリーズの中で、あのような悲しいエンディングは無かったように思うし、斬新であったのは確かだ。007と言えども、どんな困難も乗り切れるスーパーマンではなく、唯のひとりの人間として描き切っていた。
但し、ストーリーとしては、これまでの最大の敵であったスペクターがあまりにもあっさりと壊滅し、新たな敵となったラミ・マレックが演じたサフィンも、それほどの脅威となって襲い掛かることはなく、意外と淡泊な内容であった。私自身、007作品に求めるものは、やはり勧善懲悪な痛快アクションに、ハラハラ、ドキドキする緊迫感であっただけに、やや物足りなさも感じた。
また、ボンドガールの鉄板だったグラマラスな絶世の美女が、子供を持つママとなり、ボンド自身もパパに…そして極めつけは、007に黒人女性を抜擢するというのも、人種や多様性な文化の融合ということなのであろうか…⁈
何はともあれ、5シリーズを演じてきたダニエル・クレイグの007は、これで見納め。ご苦労様でした。次作は、アクション映画に原点回帰した、痛快な007を期待したし、誰が演ずるのかも、楽しみにして待ちたいと思う。