「豊かな世界の見え方」モリのいる場所 kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
豊かな世界の見え方
結構ケラケラ笑える楽しい作品でした。
本作は山崎努アイドル映画ですね。主人公のモリおじいちゃんがとにかくキュート!ジッと虫とかメダカとかを眺める姿とか、杖を2本つきながらも意外とスピーディな身のこなしとか、なぜか小学生と目があって逃げるとか、絵描き部屋に行くのを嫌がるとか、いちいちカワユイです。
勲章を固辞した理由が「人がいっぱい来ちゃう」でしたが、モリの家にはすでにいっぱい来てますよ!それがまた賑やかで楽しそう。だからモリも本気で嫌がってはいないような印象。
勲章を受けたら、きっと卑しい心根の人たちがいっぱい来ちゃうので、それが嫌なんでしょうね。
言うまでもないですが、樹木希林がスゲーですね。本作で気付いたことは、顔がスゲー。片目が義眼だからか、結構激しい斜視で、それが特別なトボけた凄みを生み出しているように感じました。
(追記・義眼ではないとのことでした。間違いスマンカッタ)
宇宙人とかやってくる荒唐無稽さはやや微妙に感じましたが、モリが宇宙に興味を示さない理由はよくわかります。モリの庭は立派な宇宙で、モリにとっては永遠のワンダーランドですから。
また、そのことを樹木希林が理解しているのも素敵です。本当にあたたかで良いです。
個人的に一番ハッとした場面は、モリが現場監督の息子の絵を下手と評し、「それがいい、上手いと先が見える」的なことを述べたシーンです。これは妙に腑に落ちました。我々は下手だからこそ先が見えず、だからこそ新たなる出会いに胸を躍らせるのでしょう。
モリはまだ生きたいと言っています。まだまだ新しい出会いが待っているからウキウキするのでしょう。アリは二番目の足から歩き出すことに気付いたモリですが、また新たなる発見があるかもしれません。
モリの豊かな世界の見え方を体験できる、贅沢な逸品でした。