ラッキー(2017)のレビュー・感想・評価
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ハリー・ディーン・スタントン最後の笑顔
ハリー・ディーン・スタントンの遺作になってしまった「ラッキー」を見てきました。
本作品、監督を務めたのは俳優のジョン・キャロル・リンチで、本作品が監督デビューなるのかな・・・
ハリー・ディーン・スタントンで主演という事で、劇中、「パリ・テキサス」のオマージュ的要素を十分にも感じとれた作品でした。
別の見方をすれば、ハリー・ディーン・スタントン自身の生涯をまとめた映画にも感じましたし、トラヴィスのその後としても感じた作品でした。
ハリー・ディーン・スタントン自身の生涯を描いた作品の方が強かったように思いますので決して派手な作品ではありませんが、自分自身、人間として生き方、自身の終わりに関して生き方など様々に考えさせられる作品でありました。
頑固で融通の利かない老いぼれ、しかし本音は人に愛され愛したい、また、死に対して本音など、しかし、91歳になるまで精力的に映画の主演をこなし、台詞を覚えカメラの前に立つ彼の姿には見ていて感心させられました。
私も、これから一所懸命に頑張って生きて行こうと思わせられました。
最後に、本当にラストに、ハリー・ディーン・スタントンがカメラの前で微笑んで終わるのですが、それが何とも「俺はいい人生を過ごしてきたよ」と言わんばかりに、映画に自身の遺言を残されたような感じを受けました。
ハリー・ディーン・スタントンこそ、良い人生を全うされたのかなと思わせる映画であり、私も負けないように生きていきたいと思わせる映画でした。
美しくユーモアに溢れ、ほっこりする映画
とても面白い映画だった。色々な意味で『ツインピークス』オリジナルTVシリーズを彷彿とさせるところがあった。老人はもちろんのこと、黒人、メキシコ人、白人、若者、みんなが全くステレオタイプに描かれてなくて、自然に共存していて、安心して観られた。ダイアローグがめちゃくちゃ面白く、静かにフラットに進む割には爆笑につぐ爆笑だった。キャラクターたちの何気ない会話の中に、「生死」や「老い」や「人生」に対する教訓のようなものが示唆されていて思考を刺激されるのだが、なんだかわからなくてもなぜか退屈せず観れてしまうし、しかも何だかほっこりしてしまう。アリゾナと思われる田舎町の風景も、砂漠でありながら美しく、癒される。
片田舎の小さな町で暮らす90歳の独居老人ラッキーは極端な現実主義者...
片田舎の小さな町で暮らす90歳の独居老人ラッキーは極端な現実主義者でありながらお茶目な海軍の退役軍人。寝起きで煙草に火をつけ、体操後にカフェオレを飲み、近所のダイナーでクロスワードパズルに興じ、帰宅してバラエティ番組を観ながら一服、夜は近所のバーでブラッディ・マリーを傾けるという単調な1日を毎日繰り返しているが、ある朝自宅で昏倒したことをきっかけに自分の生き様を見つめ直す。
大したことは何にも起こらずラッキーと近所の人々とのふれあいを淡々と見つめるだけの90分弱ですが、これが凄まじくチャーミング。長年飼っていた亀に逃げられて途方にくれるデイヴィッド・リンチ演じるハロルドを筆頭に善人しかいない町で人々が語る何気ない言葉のどれもが暖かく人間味に溢れていて胸がジンとします。とんでもなく長いキャリアとデタラメにも程があるフィルモグラフィだけでもその温厚な人柄が偲ばれる名バイプレイヤー、ハリー・ディーン・スタントンの佇まい、表情、セリフ、何もかもがかっこいい堂々たる最後の主演作、さめざめと泣きました。合掌。
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