ラッキー(2017)のレビュー・感想・評価
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これを観ることができてlucky!!
自分は大好きです。(50代後半)
ただし、何も起こらないよ。亀がいなくなるくらいかな。だから、年配者の方が評価しやすいのかもしれない。
自分にはマンガ「ぼのぼの」の実写版のような気がした。ずいぶん老齢で、ひとり暮らしを愛するところは、
子どもであるぼのぼのよりも、スナドリネコさんに近いけれど。(マンガ「ぼのぼの」を読んだことある人にしか伝わらないね)
なにも起こらないけれど、全編通して主人公を取り巻く環境に「悪意」はひとかけらもない。善意があふれているわけではなく、ただ普通なだけだが、このすばらしい映画を、すべての人が、自分が死ぬ十年前に観たらいいな、と思う。
登場人物全員のせりふが楽しい。中でも、退役海兵隊員の話、亀を、いやリクガメを飼っていたじいさん(デビッドリンチ!)の話、そしてパーティでの主人公の思わずのふるまい … すべてのシーンがココロに残る。
「無になって、その先は?」「微笑むのさ」この会話って、きっと監督は仏教好きなんだろうな。
そしてラストに近いイブのくだりでは年老いてなお成長する、人間讃歌。
観る人の心の不安をかきたてることで盛り上げる映画も多い中、これだけ何も起こさずに心を暖めてくれる映画はなかなかない。はじめて映画を観終わって「よしビール飲もう」と思った。
えー、ほめまくりましたが、本当になにも起きませんので、観て拍子抜けしませんように。昨年の「パターソン」に続く、大好きな何も起こらない映画になりました。万歳。
最後に。年老いた主人公(91歳!)が、部屋で毎日体操したり(現代だからヨガでしたね)、外を歩く際にひざをあげて歩く様子は、もはや高齢期に入った自分には他人事とは思えない。
枯山水庭園を観るような
脚本がエンドロールにも公式サイト、チラシ、パンフレット、各種サイトに言及がないのは何故だろう不思議。
この作品は脚本第1、第2がカメラワークだと感じた。枯れた風景に達観した老人。健康元気なミドル層。メキシコまで近くのラテンコミュニティ。ラッキーの病院診察。全てが多弁ではなくピンポイントで語られてる。
何度かのラッキーの台詞「孤独と一人暮らしは違う」が映画全体を語り尽くしてる、と思う。funeralではなくterminalなこの世との別れ。あぁかくぞありたし。
また朝の行き着けカフェで、土地外部の客の元海兵隊員と退役海軍(ラッキー)の沖縄戦の従軍戦闘経験を語り合うシーン。短いながら、戦争の民間人を含めた生と死の境を巡る淡々としたエピソードにズシリときた。スタントンは実際に沖縄陸戦の経験がある
D・リンチがラッキーが日柄訪れるバーの常連仲間で主演級で出演してるが、余り印象に残らなかったな。
スタントン絡みの映画ではヴェンダースの『パリ、テキサス』が一番に彷彿とさせる。
100年のサボテンと100歳の亀。90才のジジイ。
感銘のラストシーンだった。
哲学的
ものすごい頑固爺が主人公なのかと勝手に思いながら鑑賞したが、
独り身ではあるものの、毎日同じレストランに行ったりしているし、
バーで飲んで、友人もいて、それなりに社会と繋がりながら生きていて、孤独という感じはしなかった。
朝起きて体操、牛乳飲んでタバコ吸って、クロスワードパズルを解き、テレビのクイズ番組を見たりバーで飲んだりしながら過ぎていく毎日。
そこにあからさまに死が忍び寄る、というのでもなく、
漠然とした何か(不安なのか恐れなのか悲しみなのか後悔なのか)が時々しゅっと心を過ぎる感じ。
うまく言えないけれど、20年後ぐらいにこの映画を観たら感想もまた変わって来るのかな。20年後はまだ生きてると当然のように思ってる自分にはまだ分からない、ということか。
ところで沖縄の少女の「死を前にして微笑んでいた」という話は、
恐怖で顔をひきつらせていただけじゃないのかなと思ったり。
老人の孤高の姿は、まさに「月に輝く男」と讃えたい
人は老いに不安を持つものだ。
だけど、この老人ラッキーは、孤独と一人暮らしは違う、と言う。
ああ、その通りだ、俺もそうだ、とその時は思った。でも、どうやら老人はそうではなかったようだ。不安を取り除くには他人と触れることが有効だと聞くが、まさしく不安に襲われた老人は、軽くハグをすることで不安を取り去ったように、自分には思えた。
そして、老人にとっての未来と言えば、死。遅かれやってくるであろうその時を迎えるにあたり、その覚悟を穏やかにさせてくれる退役海兵隊員の沖縄上陸戦のエピソードには、心震えた。
メキシコ人家族のパーティーで歌う姿にも感銘を受けた。老人は、日常のルーティンを守る頑固者であり、意見が合わない相手とは喧嘩も辞さない意地っ張りであるけれど、けして偏見を持った人間ではなかった。老人の歌声に微笑むメキシコ人の笑顔がそれを雄弁に物語っていた。
「nothig」の言葉の意味するものや、リクガメをめぐる一連の騒動を含め、全体に流れるメッセージは、まるで禅の世界のようであった。
映画のなかの台詞をおさらいしたくて、自分としては珍しくパンフレットを買った。そこで、ラッキー演じるハリー・ディーン・スタントン自身が沖縄戦を経験していると知った。つまりこの映画にはスタントンのもつ死生観が反映されているのだろう。おかげで今、この映画が胸にじわじわしみ込んできてたまらない。こんないい映画の上映館が少ないことが惜しまれてならない。
まるで生前葬
ラッキーがあまりに偏屈な頑固ジジイで、病気からの闘病、お涙頂戴系だったら嫌だなぁと思っていたのですが、ユーモラスも持ち合わせたちょっと変わったジジイと、その周りにいる優しい人達の映画でとても良かったです。
会話や音楽や画も好きでした。
海外での公開のタイミングと、彼が亡くなったタイミングがどうだったのかは分かりませんが、ハリー・ディーン・スタントンの遺作となった映画、というより、「遺作」として作られたような映画になっていたのは不思議な感覚でしたし、最後の最後、あの表情に泣かされました。
アメリカの砂漠で語られる仏教的世界観
おかしくて悲しくて あきれさせてくれて でもなぜか希望がある。
偏屈じいさんなんだけど、周囲は彼に優しい眼差しを向ける。
悲しくも優しい眼差しを向けるのは、カメラもそうだ。
だから観ている自分の眼差しも優しくなれる。
アメリカの砂漠で語られる仏教的世界観。砂漠という環境が無情感をうまく醸し出す。
ハリウッドの流行である多様性だのマイノリティだの me tooだの、バイオレンスだの社会正義だの麻薬だの、あるいは色恋だの、親子の相克だの、アメリカンドリームだの、ある意味画一的ステレオタイプの社会的主張のレベルを突き抜けてしまっていてむしろ好感が持てる。
巷間言われるようにジャームッシュの「パターソン」の偏屈お一人様ジイサン版。詩ではなくて思想、夫婦ではなく一人、何かあるのではなく何もない。ナッシング。
時間が太平洋戦争からまるで止まっている。その後の70年の記憶がないように。いったい彼の戦後とはなんだったのだろうか。それを敢えて描かない脚本・監督のセンスは素晴らしい。
描かないという引き算の映画。日本の伝統的絵画や懐石料理のような味わいがある。時間軸と遠近軸が薄い。時間が止まって空間が扁平化している。
この監督の次回作が楽しみだ。この人、アメリカ人には理解されづらいかも。
この作品を配給したアップリンクさん、グッドジョブです。
とても魅力的
同じ背景同じ登場人物を繰り返し写して、そこでのわずかな機微を明確にしている。
全ての人物が魅力的に描かれてる。
普通のじいさんばあさんおじさんおばさんが。別にいい人でもないのに。
凄いなあ。楽しくなる映画でした。
死期を迎える前に考えましょう
あなたは病気だから、あと何日で死にます。そう言われた方がどんなに楽か。医者とのやりとりを見てそう思いました。
死ぬことは不安ではあるけど、決して寂しい、悲しいわけではない。残された人達よ、どうか悲しまないでください…。最後のラッキーの笑顔は、そう訴えていたのかもしれない。
死期を迎え、なお社交場を求めて彷徨うラッキー。生きていた証を誰かに伝えたく、残したく、コミュニケーションを取る。お金や物が全てじゃない…なんて綺麗事は言いたくありませんが、大切なことは人との繋がりなんだよ。この映画から自分は、そんなことを感じました。
無
人間が生きていることに意味はない。死んでただ無になるだけだ。
私が死んでも慣れ親しんだアメリカの大地は、今日も変わらず日が昇り、ブラッディ・マリアが作られる。変わらない日常は、ただ時を刻み続ける。人がひとり居なくなっても変わらずに。
私は、永遠に死なないことの方が恐ろしいです。ある意味安住の地である死が、生物に授けられて良かったと思いました。
終活映画
他の方も言っておられる
ジャームッシュの「パターソン」の鑑賞後感と同じ感覚(それよりも薄味かもしれない)
またヴェンダースの「パリ・テキサス」のトラヴィスの「何故.旅に出るのか?」に対してのアンサー映画のようにも見えるし
その辺を踏まえた自分にはラストシーンは沁みたけど(カメも含めて)
と、その辺が好きな方には見る価値がある
何の思い入れのない方には?
どうだろう、伝わるかなぁ
色即是空
アメリカの田舎で日々のルーティンをこなしながら生きる老人。死が訪れることを恐れながらも、抗う事は出来ないことも悟っている。
偏屈な老人かと思いきや、パーティで歌ったり、戦友と語り合い悟ったり、友人のために喧嘩を売ったり。
最後の笑顔は最高だったし、全ては無であると悟るのは仏教的であった。
☆☆☆★★★ カメラに向かい、最高なまでの崇高な《微笑み》を残して...
☆☆☆★★★
カメラに向かい、最高なまでの崇高な《微笑み》を残して彼は逝った。
ルーズベルトこそは彼の人生そのもの。
これはハリー・ディーン・スタントンの『パターソン』
♫月明かりに輝く男…の魂は今、宇宙の真理となり。我々の記憶の奥にそっと仕舞い込まれた。
2018年3月17日 シネマカリテ/シアター1
人と関わり交わる幸せ
鬼気迫る?死期迫る?形相のラッキーことH・D・スタントンの年老いた姿に孤独な老人の哀愁が。
そんな寂しい独りでの生活を送っているかと思いきやラッキーの周りには親身になってくれる人々が存在していて毎日が似たようなルーティーンだが凄く楽しそうな日々で。
なかなか煙草を吸う場面が多いが屍のような細い体で吸われると物凄く体に悪そうで痛々しいが医者は逆に喫煙を進める和やかさ。
J・キャッシュの曲が流れるハリー・ディーンとの相性の良さが堪らなくシブ過ぎる。
ハリー・ディーンの出演作はホボ主役じゃ無いのに好きな作品も多くて素晴らしい存在感を醸し出し記憶に残る印象が強い!
最後の最後でビシッと主役を張るなんてやはり只者では無い役者だった。
ルーティーン
アメリカ南部の田舎町で暮らす90歳の独身男性の話。
ヨガとミルクとコーヒーとタバコ、クイズ番組とクロスワード。
超現実主義者で見方によっては偏屈な爺さんがある日倒れ、検査結果異常はなかったが老いを実感し人生を見つめるストーリー。
多くを語る訳でもなく、ゆったりとした流れの中で温かくももの悲しくそして激しく、生きるということや人としてのあり方を感じると共に考えさせられるとても良い作品。
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