「作家性に溢れた"愛すべき映画"。」シェイプ・オブ・ウォーター ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
作家性に溢れた"愛すべき映画"。
レイトでシェイプ・オブ・ウォーターを見てきました。
デルトロの愛が詰まった一本。
早くも上半期ベスト確定な予感。
「大アマゾンの半魚人」を幼少期に見たデルトロ。
そこで登場した半魚人・ギルマンと美女との報われない結末を自分の手でハッピーエンドにしたいと考えていた。そんなデルトロによる"精神的な続編"。
ギルズのデザインもこだわり抜いており、アクターの演技も相まって実在感が凄かったです。
ギルマンを踏襲したデザインながら、ホラーモンスターとしての貫禄と人間らしい喜怒哀楽を兼ね備えた素晴らしいデザイン。
彼の初登場シーンではそれだけでドキッとします。
オマージュだけではなく、しっかりとデルトロ自身の作家性に溢れていたのも良かったです。
モンスターへの愛、黒人・ゲイ・オタクを含め社会的マイノリティに対する暖かな眼差し。
写真ポスターの登場で社会的な価値を失っていく手書きポスターへの悲哀。
これらの描写があるからこそ、社会的弱者として虐げられるイザベラと、亜人という理由で実験を繰り返されていたギルズとの心の交流が説得力を増していたように思えました。
それでいて「マイノリティにもスポットを当てて欲しい!」とかいう話ではなく、「マイノリティの事をそっとしておいてほしい」といったスタンスなのも良かった。
決してサブカルチャーがメインカルチャーに取って代わるのを望んでるわけじゃない。
公平さを望むデルトロの姿勢が見て取れました。
クライマックスは涙なしには語れません。
ぜひ、劇場でご覧ください。
そして最後に。
ハリウッド大作が続く中、自費で作家性あふれる作品を作ったデルトロ監督に感謝を。
この作品のアカデミー受賞で映画業界が良い意味で刺激を受けてくれればと思っています。