劇場公開日 2018年3月1日

「アカデミー賞発表直前!おっさんはこの同人誌映画をこうブッタ斬る!」シェイプ・オブ・ウォーター しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5アカデミー賞発表直前!おっさんはこの同人誌映画をこうブッタ斬る!

2018年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ギレルモ・デル・トロ

言うまでもなく「パシフィック・リム」の監督であり、「ヘルボーイ」シリーズの監督であり、傑作「パンズ・ラビリンス」の監督であり、意外と知られていない、「ホビット」シリーズの脚本家。

キャリアは「ある意味」十分だが、一貫して「『異形』への偏屈な愛」にみちた映画作家。故にキャリアは「ある意味」全然積み重ねられていない。

そんな彼の最新作がオスカー最多ノミニーだという。どうしたことか。

「シェイプ・オブ・ウォーター」





前作「クリムゾン・ピーク」でゴシック・ロマンスという、無謀にも、身の程知らずといってもよかろうな、ジャンルに手を出し、結果、撃沈した。

前作「クリムゾン・ピーク」の決定的な欠点は、美男美女を取り揃えているにも関わらず、全然キレイに美しく撮れていない、という点だった。

本作は、その反省だろう。あっさり、美女と美男を捨てた。

その反省プラス、今までに描かなかったオタクの伝家の宝刀、「エロ」を振るってきた。

だから、キモイわけだ。




一方、これまでデル・トロ作品を何本か見ているものにとって、本作で繰り広げられる世界は、なんら変わりがない。なんら予想を外すこともない。

主人公はそのルックスから言って、間違いなく「パンズ・ラビリンス」の主人公オフィリアの生まれ変わり、のような存在。実際序盤から、あっちの世界とこっちの世界を行き来している。声を失っているのは、あたかも、「あの」王国から再びこの世へ送り込まれたかのよう。

登場する半魚人もこれまた、「ヘルボーイ」でも活躍させるように、ギレルモ自身が大好き半魚人。

これまで同様、ロボットに愛をこめようが、ストーリーがスッカスカの、薄っぺらな「異形」への愛、マイノリティーへの愛(と勝手に高尚なことを言う映画オタクども)。

とにかく全編、詰め込み過ぎの、無駄なエピソードばかりの、語らなすぎと、語り過ぎ。

マイケル・シャノンのトイレ、腐敗する指、かっさばかれる主人公とおなじような、喉元。これ見よがしに見せて、効果は全く薄い。

ほんと相変わらず、デル・トロはストーリー・テリングがひどい。

オクタビア・スペンサーがここまで演技がひどいのは観たことがない。

次に、今回のノミニーについてだが、本作のノミニーは、アカデミー会員の多様化と若返りの極端な反動でしかないと思っている。「多様化」の側面が、思いっきり「マイナス」に働いたのが、この「同人誌」映画の最多ノミニーという結果。

確かに、そろそろジャンルな作品がオスカーを、という世代交代は始まっていると思う。

だが、本作は「クラシック」「モノクロ」「映画館」という「映画愛」という、アカデミー大好き要因と、今年のトレンド「女性」プラス得意の「異形」を「マイノリティー」とだまし込んでの、全くの同人誌精神で生み出されている。

このデル・トロ版「ブスと(ホントの)野獣」、成人向け「E.T.」に対して、マジで「マイノリティー」映画と評し、オスカーを与えるようなら、アカデミー賞は末期である。

また、この気持ち悪い同人誌ポルノを、映画愛に満ちた、「オマージュ」作品と評する映画オタクも末期である。

しんざん