「闇と光と共にあるレイ 〜Rise=再生〜」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け osim1995さんの映画レビュー(感想・評価)
闇と光と共にあるレイ 〜Rise=再生〜
フォースはエネルギーだ。この世界の全てに満ちている。あらゆるものの間に存在していてバランス=調和を保ち、全てを一つに結びつける。…君の中には? 感じるか?…そうだ。それを教えたかった。フォースはジェダイに帰属するものではない。ジェダイが滅びれば光が死ぬなどただの自惚れ。たとえジェダイが消え去ってもフォースは決してなくなりはしない。バランスだ、強い光には深い闇。… … … 君は闇を拒まなかった……
第八作「最後のジェダイ」でルークがレイに語った言葉だ。
スカイウォーカーの夜明け」を見ている前半は「もういいよ…だからただの感傷とお決まり路線だけなら作る意味あるのか?… 見ていられないって…」という気持ちが抑えられなかった。(私はルーカスと同様に「最後のジェダイ」でのフォースに心を閉ざすルークの姿を評価していたが)脚本の雑さと、第八作に対する猛烈な批判を乗り越えるためのJJエイブラムスたちの超人的な力技&SWへの愛着&敬意&情熱を感じれば感じるほど、どうしようもないほどの諦めと虚無感に包まれていった…。
荒海をバックにしたレイとカイロ・レンのライトセーバーの戦いの際において、レイアの「ベン…」という呼びかけによりカイロの動きが止まり、セーバーで腹を貫いた直後にレイがフォースの力で治癒する場面を見ても、心は動かなかった。ルークの肉体が消えた惑星オクトーにレイが戻り、乗って来た宇宙船を焼き、その炎にライトセーバーを投げ入れた瞬間、ルークのフォース霊体が受け止め、「ジェダイの聖なる武器はもっと敬意を払うに値する」と、前作の自分自身への皮肉をこめたセリフと共に現れても、まだ心は冷めていた。
パルパティーンの孫である自分、ダークサイドを顕現した自分のビジョンに恐怖し、ルークと同じくこの星に引きこもろうと考えているレイに対してフォース霊体のルークが語る。
「…私が間違っていた。私は恐怖から目を背け、ここに引きこもった。しかし、レイ、君は違う。恐怖を受け入れるのだ。」そしてルークの霊体が海に沈めたXウイングを浮上させる。
「学んだことを伝えよ。強さと練達の技、そして弱さと愚かさ。失敗の経験を伝えよ。失敗こそ最高の師となる」ジェダイの最古の書物が納められている木の前でヨーダがルークに語った言葉が蘇る。
けれどもレイがルークのヘルメットをかぶり、ルークのXウイングを駆って最古のシスの惑星エクセゴルに向かっても、まだ心に響くものは少なかった。
……パルパティーンとの対決で、SW世界の影の主役と言えるシディアスがレイに自分を殺させ、レイを暗黒面に導いて闇の女帝として成立させることを狙うシーンが訪れた時、ふいに自分の中に、シリーズを受け継ぎながら、この最終作で新たに提示するテーマが浮かび上がって来た。
それは、レイは最後まで、9作にわたる最長・最強の暗黒存在、パルパティーン=シディアスに対しては、ライトセーバーで切りつけないと気づいたことから始まった。2つのセーバーをXの形にして掲げ、あくまでもフォースライトニングをはね返しているだけなのだ。
歴代のジェダイの声が響きわたる。
1. オビワンケノービ(ユアンマクレガーの声で)
These are your fainal steps Rey,
Rise and take them !・これが君の最後のステップだ。立ち上がって(それらを)つかむんだ
2. アナキン・スカイウォーカー Rey !
3. アソーカ・タノ Rey !
4. ケイナン・ジャラス Rey !
5. アナキン・スカイウォーカー
Bring back the balance, Rey, as I did.
・バランスを取り戻すんだ。私がしたように
6. ルミナーラ・アンドリー
Light ! Find the light.
・光。光を見つける(探し出す)のよ。
7. ヨーダ Alone, never have you been.
・ひとりぼっちじゃと?お前は決して一人ではなかったのじゃ。
8. クワイガン・ジン
Every jedi who ever lived , lives in you.
・かつて生きてきたジェダイはすべて、あなたの中で生きているんだよ。
9. アナキン・スカイウォーカー
The forse surrouds you , Rey,
・フォースは君を包み込んでいるんだ。
10. アイラ・スキュラ Let guide you,
・フォースに導かれるのよ(ゆだねなさい)
11. メイス・ウインドウ
Feel the forse flowing through you, Rey !
・お前の中に(絶え間なく)流れ巡っているフォースを感じるのだ。
12. アナキン・スカイウォーカー
Let it lift you .
・フォースに持ち上げてもらうんだ。
13. アディ・ガリア
Rise , Rey ! 立ち上がって、レイ!
14. クワイガン・ジン
We stand behind you , Rey
・我々は君の後ろに立っているんだよ。
15.オビワン・ケノービ(アレックギネスの声)
Rey
16.ヨーダ Rise in the forse , Rey !
・フォースの中で立ち上がるのじゃ、レイ。
17.ケイナン・ジャラス
In the heart of a jedi lies there strength.
・(たった1人の)ジェダイでも、そのハートの中にはそれら(すべてのジェダイ)の力(強さ)が宿っているんだ。
19.オビワン・ケノービ Rise !
20.クワイガン・ジン Rise !
21.そして第一作のラストで、アレック・ギネスから最後に託された言葉を、42年の想いを込めて、歴代ジェダイの最後の言葉として、ルーク・スカイウォーカーがレイに伝える…
Rey…The forse will be with you, Always .
・レイ…フォースは君と共に“ある"んだよ、
いつだって。
これらの言葉を聞きながら、フォースライトニングをはね返すレイの姿を見ているうちに「ジェダイの帰還」で、ダースベイダーがルークを救うために皇帝パルパティーンの体を持ち上げて巨大な穴に投げ落とすシーンが脳裏に浮かんできた。
そう、暗黒面の力を行使するシスに対して、ベイダーもレイもライトセーバーで切り倒そうとしないのである。これは何を意味するのか。
フォースにバランスをもたらすもの。強い光には深い闇。2つの存在は表裏一体なのだ。光だけを良として闇を絶滅するという考え方では、いつまでたっても対立と歪みはなくなりはしない。自分の中にある闇、恐怖に抵抗するのではなく、受け入れ、世界と自分に調和させる、それがフォースの真のあり方なのではないか。闇を恐怖している自分を受け入れ、闇を受け入れつつ、己の中に光を探し出す、それこそが、ジェダイが滅んだ後、ルークとレイ、そしてベンソロが新しく打ち立てた調和の在り方なのではないか。
しかし、パルパティーンに対して、憎しみや恐怖を抱いて切り倒すということはしないレイであっても、フォースライトニングのはね返しと対消滅をすることが(それだけでもSWの歴史上、互角にできたのは彼女1人だけなのだが)精一杯であり、パルパティーンと共にレイも、死んでしまう。
ベン・ソロとして再生したカイロレンが奈落の底から戻り、抱き抱えた時のレイは明らかに死んでいた。あのままであれば、ジェダイとシスのエネルギー、その対立はまたもや人の姿・形を変えて続いていく所だったが、ベン・ソロが闇と光を調和させるフォースの真の力でレイの肉体に生命を再生させることでジェダイとシスのエネルギーの対立はなくなり、世界にバランスがもたらされた。
違和感のあるキスシーンは、あれでいいのである。あくまでも肉体を持つ2人であり、あれはシスとジェダイの調和の象徴なのだから。
何人もの人が書いてあるように、カイロ・レンはアナキン・スカイウォーカーでさえできなかった、最愛の人、しかも歴代最強のシスを超える存在を死から再生させたのだ。自らの肉体の生命を賭して。
一歩間違えれば、いやすでに酷評されていることも考えれば、陳腐な駄作だと断定されることも全て受け入れる覚悟でこの脚本にしたJJエイブラムスに敬意を表したい(自分と1才しか違わないのでなおのこと)
もはや絶望的になったポー・ダメロンたち最後のレジスタンスの前に、ランドとチューイが連れてきた銀河中から集まった人民の船の大船団も(ご都合主義と罵られようが)あれでいいのである。あのファルコンに乗っているのがレイアでもなくハンソロでもなく、伝説の脇役ランドとチューバッカであることに意味があるのだ。彼らと大船団はSWを受け入れてきた世界中の名もなき人々の象徴だと、私は考える。
最後に生き残ったレジスタンスの人々の固く熱い抱擁シーンと、マズカナタがチューイに渡す、30年前にハンソロが受け取ったメダル。レイとフィンとポーの3人が抱き合う場面。もはやここに言葉は必要とされていない。
そしてラスト。タトゥイーンの二重太陽が照らす砂漠の住居跡にルークとレイアのライトセーバーを埋葬するレイ。
レイ・スカイウォーカー
今回、興味を引かれて名前の語源を調べてみた。
Luke 天窓を表すドイツ語、光を照らすもの
英語で天窓はskylight、
Lucas ルーカス.は英語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語で光をもたらす人の意。
聖書ではルカ=光を与える者
skywalker
ジョージルーカスの造語。しかしルーカスが言うには、古い言葉で「農民・農夫、地を歩く者」という意味があり、地を歩く者が転じて「空を歩き、光を与える者」となったそうな。
なお、ヤフー知恵袋で検索するとスカイウォーカーには「2つの建物を空中でつなぐ連絡通路」という意味があるので「架け橋」という意味にもなるのでは? と書いてある。これを読んだ時、私はジェダイとシスの、光と闇の「架け橋」、世界中で対立している存在の「架け橋」という意味が込められているのではないか、と思った。
ちなみにRiseには、夜明け,下から上に上がる、立ち上がる、隆盛、の他に、よみがえる、死からの復活、などの意味もあり、ポーランドでは今回の副題を「スカイウォーカーの“再生”」と訳しているらしい。
私的には「(矛盾しているがともに分かちがたく支え合う2つの存在の)架け橋を再生する」という意味が秘められていると解釈している。
Ray 光線、一筋の光、ほんのわずかなもの、放射線、輻射線、ひらめき、
a ray of hope 一縷の望み、
a ray of sunlight ひとすじの陽光、
a ray of reflected light 照り返す光
There is still some a ray of hope.
まだ一筋の希望・脈がある。
レイのスペルはReyかもしれないが、名前にこめられた願いとしてはこちらの方が合っているのではないか。
このタイトル&主人公の名前に秘められたメッセージと、ランドとチューイが連れてきた(銀河中から集めてきた)人民の船の大船団、そして42年にわたる世界中のファンに、この世界の現実を照らし合わせると、制作スタッフ全ての人の思い・願いが汲み取れるのではないだろうか。
カオスのように全てをぶち込んだ、
スターウォーズの完結作は、
だから、これでいいのである。
制作に関わったすべての人々よ。ありがとう。