「物語不在の世界に、進化した(はずの)ビジュアルが浮いている。」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け こまさんの映画レビュー(感想・評価)
物語不在の世界に、進化した(はずの)ビジュアルが浮いている。
シリーズ最終話として、最低限の構成にはなっています。
レイ&レンの演技と、動的な戦闘シーンは力が入っていました。
前作から不安だったストーリーも、予想より丁寧に作られていました。
それでも、氷の惑星から始まるエピ5のような過去作と比べて、観る者を没入させる「空気感」が欠如しています。
私たちにとって未知の宇宙、銀河、惑星、種族、風土。その混沌と明暗渦巻く世界に、ジェダイは輝いてきました。それが今作だけを観てしまうと、そんな混沌と明暗が、何も肌身に感じられません。一つ一つの星に起こる「物語」がなく、ただそれぞれの場面に必要な戦闘や破壊が描かれるのみ。物語の枠を形成する静的なシーンは後半に偏り、それも個人的な回想に終始します。細部の物語不在のまま予定調和をなぞる展開に、各所の美麗映像さえ見栄えしません。「魅力的な異世界の光と闇の物語」をシリーズに期待して来た視聴者にとっては、力不足な最終話です。氷の惑星の凍てつく孤独な戦いや、灼熱の工場で最愛の人を護る戦いにあった臨場感は、前作同様ありません。
ただ、主演デイジー・リドリーの女性としての力強さがより魅力を増しているために、彼女の感情がクローズアップされるシーンや、最終盤には救われました。
経費や手間をもう少し構想と脚本に回していれば……と残念な印象ですが。
専任の脚本家でさえ才ある業界人が減っているなら、大人気ない感想かもしれません。
ラストに続編かスピンオフの可能性が残っているように感じたので、期待したいです。