劇場公開日 2019年12月20日

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「褒めることもたやすく、貶すこともたやすい」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 猫シャチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0褒めることもたやすく、貶すこともたやすい

2019年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

一応オリジナル・トリロジーから見ているファンです。スターウォーズは、「映画としては微妙だけど、スターウォーズとしてはあり」という批評がされうるメディアに既になってしまっていると感じます。賛否両論もそれゆえではないでしょうか。

“描きたいシーンありきで作っていて、その間をご都合主義的な話でつないでいく”という作風は、ライアン・ジョンソンが手掛けた前作(「最後のジェダイ」)から何も変わっていません。登場人物に感情移入させるタメもなければ、後で生かされる伏線もないため、ストーリーが楽しいとは1度も感じませんでした。アクションやVFXは、「大作ならこのくらいやって当然かな」というレベルにとどまっています。映画として見た時にこの作品を肯定するのはなかなかに難しい。ですが、お話の帰結として提示されたテーマには、それなりに共感できるし、グッとくる部分もありました。こんな雑な作りなのに満足感を多少なりとも得られるのは、自分が脳内で勝手に補完しているのでしょうね。「はいはい、つまり言いたい(やりたい)のはこういう事なんだろ?」ってね。前作とのつながりは全然なく、連作という意味では体を成していない本作ですが、オリジナル・トリロジーからのサーガとしてみれば、受け継がれたものが無いでもない。親と子、師匠と弟子、受け継がれた思い、カイロ・レンの末路・・これらに心が動かないわけもない。本作は、エピソード6「ジェダイの帰還」の直接の後日談として見た方が楽しめる作りになっています。エピソード7と8のくだりなんて、飾りです。あんなものは例の「冒頭のあらすじ」で済ませてしまえばいいんです。エピソード6の直後にいきなり9を見れば、結構、楽しめるんじゃないでしょうか。

結果的に「新しい」スターウォーズは見られず、過去作の再生産だった「スカイウォーカーの夜明け」ですが、この感覚は同じくJ・J・エイブラムスが手掛けたエピソード7「フォースの覚醒」でも感じたもの。つまりこれがJ・J・エイブラムスの限界なんでしょうけれど、前作の「最後のジェダイ」が明後日の方向に行き過ぎただけに、その反動として“まあこれでいいんじゃないの?”と肯定的に見れてしまうのが皮肉かな。そういう見方をする人にはそこそこ評価されて、映画としての完成度や、前作(「最後のジェダイ」)との繋がりを見る、至ってまっとうな批評眼を持つ方には(当たり前ですが)難色を示される、そんな映画だと思いました。私はどちらの気持ちもよくわかるので、間をとって星3つです。

猫シャチ
猫シャチさんのコメント
2019年12月27日

拙い感想にコメントありがとうございます。

>よんしんさん
そうですね、今作のシナリオの詰め込み方(場面転換の多さ)はまるで、3部作ではなく、2部作ものの後編を見ているかのような慌ただしさでした(なんとなくJ・Jの苛立ちを感じてしまったのは考えすぎでしょうか)。3部作全てをJ・J・エイブラムス(あるいはライアン・ジョンソン)が手掛けていれば、もう少しドラマを詰めていく事ができたかと思います。どう作ってもファンからは賛否が出るのが後継シリーズの宿命かとは思いますが、シークエル・トリロジーとしてのひとつの統一した「色」が出せていれば、単に消費される娯楽作という以上の本シリーズを作った意義が残せたかと思いますし、後年になってからの再評価なんて流れもありえたと思うのですが。そこは惜しいですね。

>こまさん
スターウォーズは結果的に大作になりましたが、元は内気なSF好きの少年が、溜め込んできた好きなものをぶちこんで、やや偏屈とも言えるポリシーを貫いて作った作品ですよね。今の後継シリーズは予算こそ大きいものの、内容的にはプログラムピクチャー化していて、アンソロジーや外伝が次々と送り出される大量生産品になっています。今の造り手に熱意がないとは全く思いませんが、1本1本の作品に付随するバックボーンの薄さが、特に登場人物たちのキャラの弱さに出ていると思いました。アダム・ドライバーが好演していたカイロ・レンなどは、掘り下げかた次第ではシリーズ屈指の好キャラクターになったと感じています。とても残念です。

猫シャチ
よんしんさんのコメント
2019年12月27日

スターウォーズのドおたくのJJと、観客の期待を裏切ってこそなんぼと思ってるライアンジョンソンの方向性の違いから迷走したんでしょうね。

個人的には、一貫した一人の監督が結末までをしっかり考えたうえで作るべきだったと思います。
そうであれば、スターウォーズのファン目線で作られた3部作でも、衝撃の展開が続く3部作でも、ミディクロリアンが描かれる3部作でもよかったと思います。
一貫した物語で、ちゃんと伏線と回収と結末があれば。

よんしん
こまさんのコメント
2019年12月26日

レビュー拝見し、共感しました。
>ストーリーが楽しいとは1度も感じませんでした。
>エピソード6の直後にいきなり9を見れば、結構、楽しめるんじゃないでしょうか。

大作を受け継ぐのは大変でしょうが、今の映画監督は本を読まない方が多いんでしょうか。絶対評価をして他の映画と比べてしまうと、悲しい最終話ですよね。

こま