「『エデンの東』と貴種流転の英雄譚」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
『エデンの東』と貴種流転の英雄譚
帝国ファーストオーダーの最高指導者の地位を得たカイロ・レン(アダム・ドライバー)。
しかし、彼は死んだはずの皇帝パルパティーンの声を聞く。
一方、最後のジェダイ・マスター、ルークの遺志を引き継ぎ、一層のフォースが強力になっていくレイ(デイジー・リドリー)は、レンとの精神感応の度合いを高め、異空間で互いのライトセーバーで切り結ぶまでに至るようになる・・・
というところから始まる物語で、エピソードIVで死んだと思われていた皇帝が復活し、ファーストオーダーはより強大になっていく中での、スター・ウォーズ・サーガの完結編。
どこへ行きつくのか、というのが大きな関心で、シリーズの骨幹はアナキン、ルーク、ベンと続く、スカイウォーカー家三代に渡る物語。
この「三代に渡る物語」といえば、すぐに脳裏に浮かぶのが『エデンの東』。
スタインベックが描いた三代の物語で、映画化されたのは三代目・キャルの物語なので、そんな大河ドラマだったことを知らないひとは多いかもしれない。
両親の愛情を受けられなかったと背を向け、かつ、戦争という状況下を利用して両親の(特に母親の)愛を乞うのがキャルだった。
そんなナイーブさは、ダークサイドとライトサイドの間で揺れ動くカイロ・レン(本名ベン・ソロ)にイメージが被る。
スカイウォーカー家の血脈でありながら、スカイウォーカーでなく、ソロ(孤独、さらにソロウ=悲しみ)の名前を持つ青年。
サブタイトルの「スカイウォーカーの夜明け」は、そんなベン・ソロがスカイウォーカーの名を継ぐのかと思いきや・・・
ええええええ!
スカイウォーカーの名前を継ぐのは彼ではない。
たしかに、祖父アナキンが、ダークサイドのダース・ベイダーから再びジェダイのライトサイドに戻ったように、彼もまた、フォースを善きことに用い、かつ母親レイアに認められるのであるが、名は継がない。
名を継ぐのは・・・
レイである。
彼女の出自が明らかになり、ダークサイドに深い血脈でありながら、ライトサイドの人間としてスカイウォーカーを名乗る。
なるほど! と唸らされると同時に、驚きも隠せない。
レイの物語は、多くの英雄譚にあるような「貴種流転」の物語の変型であるから、源流は悪にある「貴種」ということになる。
まぁ、「実は王様の子ども」というような、旧来の貴種流転の物語が現代に通用するはずもなく、出自にかかわらず誰もが善きひとになれる・・・というメッセージなのかもしれないが。
(穿った観方をすると、ルーカスの名を継いだディズニーの源流は悪、って吐露しているのかもしれないが)
何はともあれ、大団円と言っていいでしょう。
最後に気になったのだけれど、あれほどレンとレイがフォースで交感していたのは、やはり血脈上の繋がりがあったのではなかろうかしらん。
つまり、アナキンの父親は、実は、パルパティーン・・・って、そんなことはないか。