劇場公開日 2019年12月20日

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「スターウォーズの偉業は消えることはないが…私がエンドロールで拍手できなかった理由」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け ロレーンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5スターウォーズの偉業は消えることはないが…私がエンドロールで拍手できなかった理由

2019年12月24日
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鑑賞方法:映画館

スターウォーズEP9の感想の前に、まずはEP4「新たなる希望から」42年間、私達に大きな影響を与え続けた正史の終幕に拍手を贈りたい。本当にありがとう。

さて、今回のE9「スカイウォーカーの夜明け」だが先述したとおり、終幕にあたる作品として私はある意味満足をしているし、それなりにいい部分もたくさんあると思っている。

というのを前提として、いい部分は他の方がたくさん書いてくれているし、以下、ファンとしては全力で目をつむってあげたい、言いたくはない部分も含めて感想を残すことにした。

■レイの成し遂げた偉業
結論から言うとこのEP9で、レイやベンにとってはそれぞれの出自から起因する葛藤や障壁を乗り越え、銀河にバランスをもたらすという偉業を成し遂げたことになる。しかし…それはEP6でルークが既に成し遂げたはずだった。

そのルークの成し遂げたはずの偉業が打ち消されてしまったのは、シスの皇帝パルパティーンの復活にほかならない。

■消えたルークの偉業
前作EP8でファーストオーダーの親玉だったスノークをあっさり死なせてしまったので、しかたないのかもしれない。しかし、ルークの偉業は?フォースのダークサイドに落ちた父、アナキン(ベイダー)をライトサイドに引き寄せたルーク、ルークへの愛情からパルパティーンを打倒したアナキンの自己犠牲はいったいなんだったのか?

■スカイウォーカーの物語への迎合
さらに私にとってスターウォーズはスカイウォーカーの物語だった。もっと言えばルークの物語だった。しかし、それは単に思い入れだとも言えるし、EP7「フォースの覚醒」で登場したレイに、新たなる希望を抱いたのも事実だ。フィンやポーも魅力的に感じた。

EP8「最後のジェダイ」のことはもう言うまい。プロデュースとして思い切ったことをしたかったのは理解できる。しかし思い切ったことをしてるつもりが、まるで見えない何かに喧嘩をしかけるような、見当違いの思い切りを見せる作家を当てて、結果ファンの反感を受け、その意見(というか願望)にEP9でまた迎合したのは明白だ。

EP9の「スカイウォーカーの夜明け」というタイトルで、レイ達の物語であるはずのシリーズはスカイウォーカー家の物語に引き戻された。しかし…レイ・パルパティーンという出自が判明したとき、これはもはやパルパティーン家の物語になってしまったとさえ言える。

■パルパティーン家の物語への変貌
名も無きレイにフォースが覚醒し、何かを成し遂げるというならまだしも…。辛い経験をして貧しさのなかでも必死で生き、人を思いやることができ、勇敢で、正義の心を持つレイに、フォースが宿るのは何らおかしな話ではなかった。
しかしレイがパルパティーンの血筋であれば結局は選ばれし者の物語だ。ルークがベイダーの血筋という葛藤を乗り越え自らの手で運命を切り拓くという物語に、レイの物語を重ね合わせたのだろうというのは想像に難くはないが…。

ベンはダークサイドから帰還し、ルークを守って命を落とすアナキンのごとく、レイに命を与えて果てた。レイはスカイウォーカーの血を引くベンの命を引き継いだんだから、ハン・ソロやルークやレイアに憧れ、意志をついで勇敢に戦ったんだから、ラストでレイ・スカイウォーカーと名乗ったとしても少しもおかしくないし、私も少なからず涙を流した。

一見キレイな結末に思えるのだが…そこにパルパティーンの血筋だという必然性はあっただろうか。血筋を乗り越えて…とい言いたいなら名も無き民の血筋でも話は十分成り立つ。EP8でスノークが消えてしまったから、苦肉の策でパルパティーン登場というのはしかたないにしても…。

やっぱり(EP8でスノークが消え、パルパティーンが登場したことで)ルークの偉業は打ち消されるべきではなかったと思う。ルークとアナキンによってパルパティーンはEP6で打倒され、ジェダイは帰還したはずだった…少なくとも私の中では。
(それはもう終わったこととして)EP9でパルパティーンの血筋の話にしてしまうこともなかったと思ってしまう。「だからレイはフォースが強いのか、遺伝ね。ルークも遺伝だしね。」という安直で非常に残念なお話になってしまった。それよりも、勇敢な若者の魂にフォースが宿る話のほうが希望に溢れているし、ルークに宿ったフォースの話さえも一段上位に昇華することができたのに。

■スターウォーズの偉業
それでも既に劇場で2回観ているがまた観に行くし、ブルーレイも買う。終わってほしくない気持ちでいっぱいという、ルーク達やレイ達に何度でも会いたいというアンビバレントな感情が支配している。
正史EP10とかはもう要らない。でもやったとしたらきっと観に行くのだろう。この時代に生きていることを心から感謝したい。本当にありがとう。そして…さようなら。

ルークの偉業は消えたとしても、EP4「新たなる希望」から42年間に渡るスターウォーズの偉業は消えることはない。

ロレーン