「自分の中で葛藤する太極図」蝶の眠り R41さんの映画レビュー(感想・評価)
自分の中で葛藤する太極図
難しさを拭えないのは、生理的な部分への嫌悪感だろうか。
実際にいる歳の差婚やカップル
美人小説家 × アルツハイマー + 若い外国人
この作品の中には様々なモチーフが登場する
この美人小説家が手掛ける恋愛小説はその中でも一番大きな象徴だろう。
また、色という概念 本と本棚は先生の象徴だろう。
その今までは無造作に並べられていた小説の数々を、若い韓国人アルバイトに並べさせる。
すでにアルツが発症していて、彼女の人生を彩る色をグラデーションに配置するのは、人生の流れやその時々のアップダウンを感じる。
やがて二人の着る服の色が真っ白に統一されたのは、そこでひとつになった、つまり光の三原色を表現しているのだろう。
さて、
居なくなった犬 トンボ
ご主人様の病気を理解し、去ったのだろうか?
犬の失踪の象徴は、彼女の記憶を意味しているのかな?
また、自宅に置いてあった大型シュレッダーもまた、記憶の削除を意味しているのだろう。
その最大の問題である記憶の喪失を、大切な万年筆を忘れることでスタートさせたのは、なかなかいいプロットだった。
大学で彼女が生徒に対し「小説は使用説明書ではない」と激しく叱責するシーンがある。
それは、この物語そのものが理屈ではないと言ったように聞こえた。
言葉にならない感覚
言葉にできないから、情景に託す。
それについて説明してはいけない。
説明すれば、それ以上のことを想像することなどできなくなってしまう、のだろう。
先生の情熱の根幹にあるのは恋愛
それが死んだ離婚
年齢
このことは少なからず先生のアルツハイマー発症に関係しているのかもしれない。
そして最後は割とお決まりのドラマ仕立て。
あの描写については難しいとしか言えない。
どうしても取って付けた感が否めず、特に先生が無意識に取り出したボイスレコーダーという設定は難しかった。
物語に何度か登場していたことから、伏線だとはわかっていたが、登場のさせ方は問題ありと言わざるを得ない。
しかし、
表現としてこの作品を否定することはできないように思う。
この作品の大きなテーマにあるのが、恋愛というモチーフを通して人間性を描き続けた作家の根幹にあった「純愛」だったのだろう。
この作品のタイトルは韓国語で「赤ちゃんの眠り」を意味するようだ。
やはり純粋さはこの作品のテーマなのだろう。
この純愛のために動物との愛があり、作品にかける真剣さがあり、歳の差があってこそ表現したかったことだったのだろう。
この否定できない生理的なものがまるで韓国国旗の太極図のように感じられる。
その視点で認めざるを得ない作品だった。