「モーツァルトの史実のスキマを突いた、妄想ストーリー」プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
モーツァルトの史実のスキマを突いた、妄想ストーリー
今日はなんの日? 12月5日はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの226回目の命日だそうだ。
ということで、モーツァルトの映画である。真っ先に思い浮かぶのは、アカデミー賞8部門を受賞した「アマデウス」(1984)であるが、それ以来33年ぶりの本格的なモーツァルト映画となる。
当時、モーツァルトの「フィガロの結婚」がプラハでの公演をきっかけに高評価を受け、プラハで名作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」をモーツァルト自身の指揮で初演した…という史実がある。
本作は、そこから妄想したストーリー。プラハでモーツァルトが「ドン・ジョヴァンニ」を完成させるまでの間に起きる、オペラ歌手スザンナと恋愛、そしてそれに嫉妬するサロカ男爵との三角関係を描いている。
モーツァルト役がイケメンのアナイリン・バーナードなので、音楽的な実力のみならず、外観も兼ね備えた女性に優しい色男になっている。カノジョのスザンナも美しく純情で可憐。そこに割って入る金持ち男爵が、まさに「ドン・ジョヴァンニ」である。
またオペラ歌手であるスザンナは「フィガロの結婚」のケルビーノ役でもあり、モーツァルトに恋い焦がれながら舞台で「恋とはどんなものかしら」を歌う。オペラの人物設定と映画がクロスオーバーしていくという趣向になっている。
モーツァルトの代表作品をつなぎ合わせた面白い構成で、楽曲も有名なのでとても観やすい。全面的にプラハロケを敢行していてチェスキー・クルムロフ城劇場も出てくる。さらに映画音楽を担当しているのは、プラハ市立フィルハーモニー管弦楽団に演奏である。
モーツァルトの史実のスキマを妄想しているので、原題である"プラハの幕間"(「Interlude in Prague」)。は自虐的な意味があるのかもしれない。ところが邦題は、まるで"キダ・タロー"(浪花のモーツァルト)。なんともバカバカしい邦題。
(2017/12/5 /ヒューマントラストシネマ有楽町/シネスコ/字幕:チオキ真理)