永遠のジャンゴのレビュー・感想・評価
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天才ギタリストと第二次世界大戦
ジャズのみならず、ギタリストだったりギターに興味がある人には伝説の存在であるジャンゴ・ラインハルト。ジプシージャズの第一人者として知られているのだから、よく考えたらわかるはずだった。ナチスドイツがユダヤ人だけでなく、ロマの人々や同性愛者も迫害の対象にしており、同時代を生きていたジャンゴにとってもホロコーストは他人ごとではなかったのだと。
ジャンゴ・ラインハルトの伝記映画、ではあるのだが、この映画はジャンゴが様々な形でナチスと関わった二年間にのみ焦点を絞っていて、銃後の戦争映画のバリエーションでもある。定住しないロマの出身であるジャンゴは政治や戦争に興味を持たず、ただプロの音楽家として生きているつもりだったのに、否応なしに民族の一員であるアイデンティティに気づかされる。
ジャンゴがナチスに演奏を強要されるというドラマチックな挿話をメインにしつつ、静かな葛藤と成長のドラマに仕上がっていた。
犠牲的精神
ナチスがジプジーを殺し始めているという情報を聞きつけると、ルイーズはLouise de Klerk(Cecile de France )ナチスの迫害からジャンゴ ラインハルトDjango Reinhardt(Reda Kateb)を助けるため、ナチスの将校にもつき、ジャンゴのために力を貸す。
婚約者であったロシア人画家の自殺による愛の破局で、心の癒しをジャンゴの音楽でみつけ、ダンスを踊ることで自分が変わっていったと、ドイツの将校に話すルイーズ。一旦心が死んでしまった彼女だが、彼のギターが再び活力をあたえる。そのため自分がナチスからの暴力にあっても、ジャンゴの才能を守るためにも愛を貫くためにも、オーストリアに逃亡させる段取りをつける。
ドイツ将校やその家族がパーティーをしている間、ジプシーの若者が見張りの目を盗んでオーストリアに逃げるシーン。ここでジャンゴの楽団の演奏は力強い。皆を音楽と酒で酔わせ、逃亡手伝う。
彼の才能のためというが愛している人を逃がすため、ルイーズの犠牲精神に心を打たれてた。ジャンゴが『あなたは怖い』というシーンがあるが、それは
ジャンゴ『怖い』
ルイーズ「大丈夫よ。スイスとの国境でナイチンゲール(国境越えを助けてくれる人)が待っているから」
ジャンゴ「あなたが怖いんだよ』
ルイーズも革命の分子のようだ。自分が殺されるのをわかっていて、ナチスの手からジプシーやジャンゴを救う。あっぱれ!
ジャンゴはベルギー生まれのロマ人で作曲家でギタリスト。この映画はナチスの迫害から逃れオーストリアに行き、フランスに戻りコンサートを開くまでを描いている。彼のジャズのスManouche Jazz,というらしい。これはスイングと伝統的なジプシーの音楽が混ざったものらしい。当時ナチスはこのようなアメリカのジャズ(黒人の文化を劣勢と捉えていた)を受け入れていなかった。コンサートではスイング、ブルース、ダンス、そして立ってもいけないと。これらの一部はいまだ、クラッシック音楽界の鑑賞の仕方である。
これは歴史を踏まえた作り話なのでジャンゴの本当の生活とは違うらしい。それに、ナチというとユダヤ人が犠牲者のトップに浮かぶが、黒人、ジプシー、身障者、ゲイなども組織的に淘汰していたわけで、この映画で初めてジプシーの迫害の歴史が垣間見られたこと、感謝する。ジャンゴが作曲した『ジプシーの仲間に捧げる鎮魂歌』(Requiem for Gypsy Brothers) の譜面は全部残っていないらしいが、心にしみる鎮魂歌だ。
指2本による速弾き!
知らなかった。こんな荒んだ時代にこんなに熱くプレイする男だったとは。ナチスによる迫害は知ってはいたけど、幼い頃の火傷によって左手薬指と小指が動かない状態だったことを初めて知った。こりゃ野口英世以上だ。
ロマ(ジプシー)音楽とスウィングジャズとの融合。メロディもどことなく異国情緒たっぷりの情熱的。CDも持っていて、真似できないとコピーも挫折した経験があるのですが、二本指でここまで弾くにはかなりのテクニックが必要です。ジャンゴ演ずるレダ・カティブの運指も相当練習したと思われるくらい。
ミュージシャンの伝記映画はドラマであれ、ドキュメンタリーであれ、ほとんどが麻薬に溺れて消え去ってしまう。しかし、ジャンゴは煙草吸いすぎだけどヤクはやらない珍しさ。ナチスもフランス憲兵隊も彼らを迫害するけど、自由という信念を貫き、国に従属する気は全くない姿勢。音楽を聴いて楽しんでもらえばそれでいいんだ!
ステファン・グラッペリやルイ・アームストロングの名前も出てくるし、彼の音楽のルーツもある程度わかる。ナチス将校の前で演奏する際には、テンポの速い曲はダメ、シンコペーションは5%まで、ブルースはダメ、ソロは5秒以内で・・・無茶苦茶じゃないですか!(笑)。
教会を借りてパイプオルガンで作曲する姿もいいし、これがラストのレクイエムに繋がる。字も書けないんだから、写し取るのも大変なのだろう。それがこんなに悲しく響いてくるとは。
トリビュート映画
ジャンゴの名を知ったのはMJQ(モダンジャズカルテット)のトリビュートアルバムだった。ジプシーというのは蔑称のようなのでロマ民族と呼ぶが哀愁に満ちた彼らの旋律は血を越えて胸に響く不思議な力を秘めている。然しながらジャズと結びつくと一転してアップテンポな明るいものになり、正直どれを聞いても同じに思えてしまう。彼は18歳の頃に負ったやけどで左手の薬指と小指が使えず独特の奏法を編み出した。映画では30才代のパリでの円熟期からスイスへの逃避行の数年間が描かれている。ナチスのユダヤ人迫害の陰でロマ人狩りはあまり知られていないがおよそ22万人が殺害されているそうだ。そんな中でも彼は音楽の才能に助けられ生き残ることができたといってよいのかも知れない。劇中の演奏はストーケロ・ローゼンバーグによるものだが当人の時代より洗練されているようだ。ミュージシャンの伝記映画は数あるが本作は残念ながら作り手の思い入れ程は響いて来なかった。
戦争と音楽
冒頭の五重奏がまずびっくりする美しさ。そしてギターの情熱的な音色に。
どこかで聞いたことあるような気もするけど、斬新で心が揺さぶられました。
ミュージシャンといえども、戦争から逃れることはできない。
強制労働でメンバーが抜けてしまうことも。
「兵士の士気高揚のため」として演奏するかと思えば。
「民衆が音楽を楽しむため」には、スイングは2割まで云々制約を課せらられる。
そんなの音楽なんじゃなよー。そう思えるのは、今の時代に生きているからでしょう。
家を焼かれ、追われ、それでも演奏し続ける。
ジプシーの意地ってとこか。
個人的には母親(お婆さん?)の老婆が、途中演奏する際のギャラ交渉などでいい味出していたのが気に入りました。
ラストの演奏の譜面が残っていないのが、まさに迫害された々ジプシーたちへのレクイエムでした。
正直な話音楽が良すぎて、話の内容がちょっとぼんやりした印象。
ジプシーのギタリスト
ナチスドイツに占領されたパリ、ベルギー出身のジプシーで名ギタリストのジャンゴはそれなりに演奏活動をしていた。
しかし自分を崇拝するフランス人が、ナチスのジプシー弾圧を恐れ、スイスへの亡命を勧める。
こんな時代はもう来ないでほしい。
Requiem
ジャンゴの活動時期の時代背景がメインを占めて、基本的に音楽を二の次としている。
音楽好きだから見ようって方には非常におススメしかねる内容です。
だからこそジャンゴの戦争などには他人行儀な感じや音楽の持つ可能性みたいなのがよりリアリティを持って伝わるのかなと。
音楽をモチーフにありがちなサクセスストーリーなんかよりよっぽどリアリティのある作品。
まぁそもそも実話を元に制作されてますから当たり前ですが。
名作です。
「Minor Swing」がすきだったな
彼のギター曲がすきだった。
Django Reinhardt 「Minor Swing」(1937)
何度も何度も繰り返し聴いた曲「」がなつかしい。当時古いジャズがすきだった。
当時は、まだ音楽にみんなが情熱を持っていた時代で、流浪の芸人扱いだったと記憶しているがお金は信じられないくらいに稼いでいた。70年代のサックスの渡辺さんだって鞄に入らないほどだったと聴いたことがある。そのお金は酒とくすり女と、ギャンブルに消えたと、言われている。その時代に生きていたわけじゃ内から、実際のところ分からないけど。
さて、映画はというといい映画だと思うけど。
彼の曲を聴きたくて借りてきたDVDなので目的を間違えたらしい。
最後に、Djangoは映画よりもっと美男子です(笑)
普通でした
主演のレダさんの作品「パリ、ピガール広場」を2016の東京国際で見ました。
それがキッカケで今回の作品観ようと思いました。
彼はスカした役が本当にカッコいい!
男前を演じられる器の大きさを感じます。
時代に振り回されるジプシーたちと一緒に、結構ストーリーも予想がつかない感じで、楽しめました。
捕まったジプシー達の末路を思うと、より悲壮感が増します。
音楽と生きる魂
まさにこれから『音楽と生きる魂を描く!』…っていうオープニングだったね。
その序章の通り、ライブシーンはもちろん全編流れるジプシー音楽が情緒豊かで、
世界観にがっぷり包まれるだけでなく、彼等の気高さと、同居する野性味を感じたよ。
同朋と共に命をかけた、あの意図をもって演奏する場面では、
言葉や頭脳を使った巧妙な策略ではなく、息遣い・目配せ…唯一の武器は『音楽』っていうのが象徴的で、
興奮すると共に独特な緊張感に息が詰まった。
でも、実在の芸術家モノの映画の割に主人公ジャンゴに魅力をあまり感じられなかったな。
過剰にわかりやすくドラマチックにせず、無駄を削ぎ落として淡々と描かれていたからかな。
きっとそれがジャンゴなんだろう…&オイラの(当時の情勢に関する)知識不足と、感性やイメージ力の衰えなんかな?と。
まぁ、一番の期待である『ジプシーの音楽に触れる』の気持ちは充分に満たされたから、概ね満足しましたとさ。
また、そこで逆にラストシーンだけジプシーギターではなく、教会での鎮魂歌で締めくくっていたのが、
『繰り返してはいけない』『忘れてはならない』というメッセージとして、静かに強い余韻を感じさせたね。
ストライク
演奏が兎に角素敵。
戦争が好きなわけではないけど(もちろん)戦争物の映画は好きだ。
一生懸命に生きる人を見るのが好き
ジャンゴやその家族、ロマの人たちの生に対する真摯な姿が好き
久しぶりに没頭した
レクイエムがしみた
もっと派手なことをしたのかと思ってました。
でも歴史に埋もれさせなくて良かった。
迫害をうけたのはユダヤ人だけかと思っていたけど、ジプシーの人達も受けてたのね。
最後のレクイエムには鳥肌が・・・
すべて楽譜を探し出して欲しいです。
プレーはすごい
でもその演奏の使い方が英兵一人逃すだけってのがなんか使い方もったいなくないか?一番カタルシスがありそうな家族や仲間と別れてからの再会とか何にも出てこないし始めから終わりまでところどころ??が出てくる けどそこを超絶演奏で埋めるって感じ
素材はいいのになんかもったいない!
ロマ迫害の一歴史
たとえ音楽が
自分を知っていたとしても
この命あってこその音楽だ。
雪にまみれたギターが物語る。
そして何度観てもまた涙。
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2018.1.6 新宿武蔵野館にて2回目
世間知らずの音楽馬鹿の演奏が
世間の憂さを忘れたい聴衆を
熱狂へと導く様の享楽よ。
やがてジャンゴの意識に
否応なく滲み入る戦争の本質。
レクイエムに
そして踞り目頭を押さえる母の姿に
またしても涙を誘われた。
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2017.12.17
ヒューマントラストシネマ有楽町にて1回目
泣けた泣けた。
ラストシーンを思い返すと
未だに涙腺が弛む。
レイシズムのなんと愚かなことか。
ロマそのものが刻み込まれたような
気丈なお母さんに笑って泣かされる。
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