鈴木家の嘘のレビュー・感想・評価
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家族の死の乗り越え方(コメディタッチ映画に非ず)
いやいや、至って真面目な映画でした。しかも結構深い。
兄の自殺は自分の言葉が引き金だと思い込んでいる妹。理由を突き止めることに、なりふり構わず必死になっている父親。生きていると嘘をつき続けられた母親。ばれました。あーそですか。ここからが家族の本当のドラマです。
結局答えは出ずじまいですが、胡散臭い霊媒師まで呼んじゃうワラニモスガル状態かと思いきや、家族は冷静でした。霊媒師のウソツキ振りに目が覚める夫婦と妹。何をやってるんだ鈴木家は?
ラストは、自殺のカギを握っているかも知れないイヴちゃん探しの旅に一家が出かけるシーンで終わります。家族の死の哀しみは家族で乗り越える。誰も責めないで良いから。って言う映画。松竹にしては話が易くない。役者さんも、各々の立場で好演。旦那自殺の寡婦である小林さんとかGJとしか言いようが無い。
木竜麻生を見るのは今年二本目。おんな相撲の演技は、暑苦しさを通り越して見苦しかった。「魂の雄叫びの突き」1本のみ、と言う映画が悪かっただけみたいですね。どっちを先に撮ったか知らないけど。鈴木家では、物語を引っ張り、長回しを完璧に演じ切り、観客をストーリーに引っ張り込む存在感。素晴らしかったです。
それぞれの向かい合い方
ずっと心の底に押し殺してきた想いや感情。
率直に悲しみを表現できない自分。
どうして…?、自分のせいなの…?と投げかけても、決して答えの見つからない問い。
ただ、一人一人がそれぞれ、向き合ってみないことには、前に進むことは出来ない。
僕は、物語の境遇と似た家族を知っています。お父さんが、娘の死について、噛みしめるように僕に説明してくれたことを忘れられません。まるで、自分を罰するかのように、そして、娘のことを決して忘れないで欲しいと願いを込めるように。
残された家族や周りの人々の気持ちは、それぞれ異なるのかもしれない。でも、映画のイヴちゃんのように、家族が知り得なかった一面を見つけられれば、鈴木家のように案外一歩踏み出すことが出来るかもしれない。
そして、答えはきっと、残された人は生きて行くということ。
余談ですが、僕の田舎にも、降霊術を生業とする人がいました。僕の親友の父親は、降霊の途中で吹き出してしまって、霊媒師に笑わないよう注意されてたそうです。
時には嘘をついても良い
家族が自殺したという重いテーマを描ながらも、それをユーモラスに、時にクスッと笑わせながら力強く描いた作品
グイグイと引き込まれながら、彼ら家族の問題を我がことのように感じ、見入ってしまった
父(岸部一徳)と母(原日出子)と長男(加瀬亮)、長女(木竜麻生)の4人家族の鈴木家
ある時、引きこもりの長男が自殺する
それを見た母は気を失い、目覚めた時には長男が自殺したという記憶をなくしていた
そこで、長女は「お兄ちゃんは
アルゼンチンにいる」と母に嘘をついてしまう…
日本は、自殺が多い国として知られている
朝、会社に行きたくない人が電車に飛び込み、通勤電車に遅延が発生するのは日常茶飯事だ
しかし、そうやって、毎日のようにどこかで誰かが自殺している割に、正面から自殺と向き合っている映画はとても少ないように思う
この映画は、そんな自殺を真正面から描いている作品だ
そこにはちゃんと理由があって、これがデビュー作となる野尻監督は、家族が自殺した経験があるという
だからこそ、残された家族の描写には、監督の思いが反映されているんだろうぁ
と感じるところが、随所にあった
その中で思ったのは、もちろん、自殺した本人も、生きていくのに相当辛いことがあったんだろうと思う
けれど、残された家族も、その現実を受け入れるのに辛くて長い時間を費やさなければいけないということ
長女はお母さんのことを思って、とっさに嘘が出てしまったけれど
長女自身も、その時は現実を受け入れきれてなかったのでは
ということ
そして、みんなが息子の自殺に責任を感じつつ、少しずつ現実を受け入れていくようになるのだが、その時間がとても辛いということ
その「辛い現実との向き合い方、受け入れ方」にリアリティがあって
なるほど、「経験者は語る」なんだなぁと思ったし、だからこそ、共感できる作品になっているんだなと思った
それも、ただ辛いだけなく、時に笑ってしまうような場面もあったからこそ、観ているこちらが救われた
そして、そんな笑いと同じぐらい大切なのが会話だった
時には相手を罵ることになってしまっても、会話は大事だと思った
会話は、人を癒す効果があるのだ
だからこそ、部屋に閉じこもって会話をしなかった長男は自殺してしまったのかもしれない
辛いことがあった時、無理にその現実と向き合って受け入れなくて良い
時には、嘘も方便だ
と思えた作品
日本で暮らす私たちにとって、それがある日突然、自分の身に降りかかってくることかもしれない
だからこそ、多くの人に観て欲しいと思う
今年の必見作
パイプ椅子に、なんだか古くて黒が出てないプロジェクターでの上映と、試写会にしては最悪の環境だったが、見事な作品だった。
これがデビュー作とは思えない手慣れた感じの演出、相当に練られた脚本、そして素晴らしい演技陣。
とても深刻なテーマなのに、笑いを散りばめて、語り切った。
大森南朋、昔は相当へたくそな役者と思っていたが、アウトレイジ最終章で吹っ切れたのか、この作品では出色だった。
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