デトロイトのレビュー・感想・評価
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相変わらずアツイが、それ以上に古臭い。アカデミーノミニー全滅の本作をおっさんはこう観た。
キャサリン・ビグロー。
男顔負け娯楽アクションの名手で、ついにはオスカー監督にまで上り詰め、その後の「ゼロ・ダーク・サーティ」という「女性映画としての、娯楽アクション社会派映画」を作り上げた。
それから数年。ビグローはいよいよ帰ってきた。
待っていました。
だが、アカデミーノミニー発表時にその作品名はない。
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「デトロイト」
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アカデミー賞最有力!!
のチラシが悲しく舞う。
だが本作を観ればそれも納得する。
とにかく出遅れ感、古さ感満載。
黒人映画としては、「それでも夜が明ける」、「ムーンライト」といったアカデミー作品賞をとった2作品と比べると、明らかに「映画」として古い。
それを悪いことに、今更な「手振れの至近距離で実録風のカメラ」が古臭くってたまらない。
もっと言うと、題材も、差別心理の「本当の部分」をついた「ゲット・アウト」が出た時点で、もはや古いと言わざるを得ない。
黒人映画を撮れば、オスカー獲れんじゃね、とまではさすがに思わないだろうが。製作陣の「いやらしさ」が露骨に見えている。それにしたって、出遅れ感はあるが。
これまでプロパガンダ映画と言われ続けてきたビグローだが、本作はついに明らかにそういう意図が見えている「舞台裏」には、そろそろ疲れる。
今年のアカデミーは、セクハラ問題もあり、「正直」を前面に出してくると思われる。
このへんが今年のアカデミーノミニー全滅の要因ではなかろうか。
黒人映画の好きなオレも、この題材を、こんなに実直にまじめに、アツく撮られても、既視感でしかないのだ。
うたい文句の「緊迫の40分間」にしても、そこにいた連中にも問題あるし、そこにいた女子二人も「娼婦」と言われても全くおかしくないため、近っかいカメラと展開だけの演出で迫っているだけで、なんらドキドキすることはない。なかには、殺してください、って言っているような輩まで出てくる始末。
暴動、尋問、裁判、と3幕構成もあまりうまくいっておらず、特に裁判はもうそういう結果だろうな、と分かるような話なので、字幕で終えてよかったろうに。アツイのはいいが、直球すぎて、映画として面白くないんだよ。
そんな作品だが、わずかな笑いもある。
やるだろうな、と思った一番いかれてる警官が、やっぱり撃っちゃうし、やるだろうな、と思った2番手のスケベ面の警官が、女子の「お約束」のワンピースを上から下まで引っぺがしたり、やるだろうな、と思った下っ端の警官がお約束通り「やってしまった」り。また他のシーンでも、署に呼ばれたボイエガに対し、いきなり取り調室の机を捜査官がたたきつけ、劇場が凍る、など。
追記
今年のアカデミーの黒人枠は確かに「ゲット・アウト」。だが、それも話題のみで終わることだろう。
「ゲット・アウト」が出てきて、黒人枠の特別枠はきっと終息すると思われる。
追記2
ジョン・ボイエガ。
背が高くないのがいい。
黒人差別を扱った映画、そんな短絡的な言葉で論じるにはあまりに重い。...
黒人差別を扱った映画、そんな短絡的な言葉で論じるにはあまりに重い。なぜならこれは遠い昔の(といっても1960年代だから極めて最近の話ではあるけれど)話ではなく、2020年現在も続く、現代の黒人が直面している現実なのだから。
おもちゃの鉄砲で警官を威嚇したのも、元はと言えば、警察の差別的な行動に対する抗議によるもの。その軽薄な行動による代償は、日本人には到底想像できないものだろう。
警官による殺人で殺される黒人は年に千人にものぼると言われるアメリカ。黒人は走っただけで撃たれ、新札を使っただけで偽札を疑われ窒息させられる。殺人を行った警官は逮捕されても全員無罪。そういう現実に生きている。
毎日、銃により100人が死亡し、年間4万人が死んでも、簡単な銃規制すら出来ない後進国アメリカ。自分のことしか考えていない大統領が、自分のテレビ映りだけに腐心する。そんな大統領を熱狂的に支持する人が半数近くいることは笑い話にならない。
差別が悪いなんていうお行儀のいいことは誰でも知っている。知っていてもなお、被害者意識は政治的対立を生み、世界を分断させている。日本でも同様。問題が深刻なのは被害者と加害者がいることではない。被害者と被害者意識をもった加害者がいて、ともに被害を訴え正義が暴走することが問題なのだ。
この映画でも印象深い場面がある。暴徒化した黒人に対し、ある黒人は「暴力はいけない」と諭す。しかし黒人はこう返す。「我々は今まで非暴力的過ぎたのだ」と。被害者の訴えはいつだって切実だ。だからこそ、本当の被害者を見極める必要があるのではないか。
ただひたすら胸糞。本当に現実にあったとしたら悪夢
【字幕版】デトロイト
鑑賞日 2018 3/16
前々からアメリカの黒人差別の歴史についての映画を見てみたいと思っていたので、そこそこ期待していた。この映画を一言で表すと、「胸糞が悪い」だと思う。あまりにも理不尽な黒人への差別や、腐敗した警官達。さらにその警察官の遊びによって意味のない殺人まで起き、しかもそれは裁判で無実になるという結末…。本当にこんな恐ろしいことがアメリカで起こっていたと考えるととても怖かった。本当にこの映画こそが2017年度のアカデミー賞にふさわしいと思った。また、主人公役の「スターウォーズ エピソード7、8」や「パシフィック・リム アップライジング」でのジョン・ボイエガや、差別主義者の警官のクラウス役のウィル・ポールターの演技が本当に素晴らしかった。
硬派で重く,最後まで目が離せない
ビグロー監督ならではの作風。黒人差別の極みとも言える過酷なストーリーは,正直観ていて吐き気がするレベル。事実に基づいたフィクションならではの重厚感とピグロー監督らしい冷徹な眼差しが強烈だ。並の作品ならば,無実の黒人たちを拷問した末に3人を殺した事実に良心を苛まれた警官が自白した時点で,差別主義者の白人警官たちは裁判にかけられて罰せられ,黒人に対する理不尽極まりない権力による差別が全世界から糾弾されるという展開になるはずだ。結末はもちろんハッピーエンド。ストレスに晒され続けた観客は,最後の最後で胸をなでおろし,ほっと一息――。しかし,ピグロー監督がそんな凡庸な結末を用意するはずがない。結局,白人警察官たちによる暴行と殺害は無罪とされ,黒人たちは一方的に虐げられたまま本作は終わる。
現実の世界で権力者たちが分断と対立をあおりまくる姿を目の当たりにすると,「歴史は繰り返すのか」と慄然とせざるを得ない。
救いがない
「アメリカって、ひどい」「日本人の私たちにはわからないけど」
人種差別を語るときに、そんな風な言葉を聞くことがあるけれど、ん?そうだろうか。あるよ、私たちにも、個人差はあれど、差別意識。
自分と異質な人に対する警戒心は無意識にあるし、リスクを避けたい思いが差別に発展することは、ある。だけど、差別しない心の持ち方を追求していくモラルは大事で、そのための秩序を作るのが、教育とか法律なんだと思う。
秩序を期待されるはずの警察に犯され、司法にも見放されたら、どうしたらよい?そんな救いのなさが痛い映画でした。無罪を言い渡された瞬間 ( 結末は知っていても ) は?なんで?と声をあげてしまったわ。
1967年のデトロイトが特別だから?90年代のLAでも類似の悲劇があったよね。
しかし、そもそも、街全体が暴動でカオスになってるあの状況で、オモチャとは言え、しょうもない発砲する? コレをやったらどうなるか?状況読まない稚拙な行動は、糞警官も、「狙撃」犯も、同レベルかと。
壮絶できつく辛い。そして、いまだ続く…この現状。。
50年前のデトロイトで黒人差別から起きた暴動を実話化。
ドキュメンタリーを観ているかのような緊迫感。
心に衝撃を与える恐怖かつ壮絶さ。
確かにすぐカッとなるのは問題。挑発も死を引き寄せる行為でしかない。
でも、“死のゲーム”をする白人警官(特にラリー)は差別意識がもろに出ていて、遊びで楽しんでいるようにしか見えない行動が腹立たしくて仕方なかった。
裁判所でもラリーは態度がひどくて不快だった。重い罪になって欲しいと思った。
演じているそれぞれの役者さんは相当辛く引きずっただろうな…と感じました。特にラリー役の人は。
それくらい迫真できつい映画でした。
遠く離れた訪れたことのない国だけど、こういう事件がなくなって欲しいと切に願いますが・・現状はなかなか解決の糸口が見つからないんだろうな。。長いテーマですね…。
“デトロイト”を忘れるな
1967年の“デトロイト暴動”と、その最中に起きた衝撃の事件を映画化。
キャスリン・ビグローの男勝りの演出がこれまた遺憾なく発揮された、力作実録劇!
この暴動や事件について全く知らなかったので、発端や経緯を整理してみると…
まず、“デトロイト暴動”。
警察が無許可営業の酒場を摘発、これが引き金となって社会に対する黒人たちの不満や怒りが爆発し、あちこちで暴動が発生。
それはどんどん拡大、市警だけの手には負えず、別の州警察や軍隊も投入。
警察や兵士たちは銃を構え、戦車が行き交い、暴徒による略奪や放火は収まらず、町は戦場のような光景に。
死者43名、負傷者1189名、逮捕者7000名以上に至った。
この緊迫の中、事件は起きた…。
少し離れた“アルジェ・モーテル”。
暴動を逃れ、宿泊していた黒人客たち。
その中の一人が、悪ふざけでおもちゃの銃を発砲。
これを警察や兵士たちは“本物の狙撃”と誤認。
白人警官3名がモーテルに突入し、黒人客たちの地獄の一夜が始まった…。
狙撃したのは誰だ? 銃は何処だ?
一見職務を全うしてる事実確認のように思えるが、そのやり方というのが…
暴行、脅し…不当で容赦ない尋問。
黒人客たちは怯えきっている。
白人警官たちはこれを“ゲーム”と明らかに楽しんでいる。
法の番人という権力を武器に、これはもう一方的な暴力。警察の一般人へのれっきとした犯罪行為だ。
こんな事があっていいのか。許されるのか。
実際にあったのだ。
警察である事、白人である事がそんなに偉いのか。
黒人はずっと鎖に繋がれ、苦しめ続けなければならないのか。
人種差別云々以前に、人が人として扱われない仕打ち、権力の横暴に怒りしか沸いてこない。
人種問題を扱った作品は大抵、白人に否があり、黒人が被害者と描かれる事が多いが、本作は単純にそうではない。
白人に差別主義者の警官が居る一方、良識や善意ある者も居る。
黒人の多くが被害者である一方、愚かな者も居る。
モーテルでおもちゃの銃を発砲した黒人客。
テメェの悪ふざけのせいででこんな事になったんじゃねーか!
いや、そもそも、何が原因となって起きたのか。
一個人、差別/偏見、社会全体…全てが悪い方向に複雑に絡み合い、問題を考えさせられる。
遂に最悪の事態が。
白人警官たちは黒人客を一人ずつ隣室に連れ込み、銃で殺した事にして他の黒人客たちを脅していたが、一人の白人警官が本当に一人の黒人客を射殺。
さすがにマズいと、白人警官たちは黒人客たちに、モーテルでは何も起きなかった事にして、解放。
やっと地獄の一夜が終わった。黒人各々の心に深く痛々しい傷とトラウマを残して。
結果的に殺された黒人は、3人。
…が! こんな事が一生隠し通せるものか。
戦慄の事件が明るみになり、裁判が開かれる。
ああ、やっと黒人客たちの苦しみ、殺された者の無念が晴らされる。
しかし…
この判決は、ほんの一部の白人たちにとっては最高のものだった。
例えばこれが逆、黒人警官が白人に狂気の尋問をしていたら、即死刑判決だったろう。
あの当時のデトロイトでは、クソ白人警官や白人至上主義者たちにとってはパラダイス。
黒人たちへどんな罪を犯しても、絶対的に守られる。
法は白人たちの味方。
一体誰が、何が、黒人たちを守ってくれるのか。
地獄の尋問の先に、更なる不条理/理不尽が待ち受けていた…。
当時のニュース映像も挿入しながら、徹底したリアリズムとドキュメンタリータッチ。
正直序盤こそはちと退屈だったが、いざ地獄の尋問が始まった中盤からは恐怖と緊迫感が盛り上がり、気付けばラストまで引き込まれていた。
個人的ビグロー作品BESTは『ゼロ・ダーク・サーティ』で、それは凌げなかったものの、さすがとも言えるKO級の手腕は140分超えの長丁場を飽きさせない。
話は黒人民間警備員と尋問された黒人歌手の視点を軸に展開されるが、やはり一際印象を残すのが、差別主義者の白人警官役で狂気を体現したウィル・ポールター。
彼を認識したのはおバカコメディ『なんちゃって家族』であったが、『レヴェナント』や本作などで熱演を見せ、若手実力派として着実にキャリアアップ。
“デトロイト暴動”と“アルジェ・モーテル事件”から50年の節目に製作された本作。
そう、ほんの50年前なのだ。
差別や偏見への意識が高くなった今、同じような事件が起きたらアメリカ社会を揺るがす大問題になるだろう。
が、まだまだ根強く残っているのだ。差別や偏見は。
アメリカの闇、差別や偏見に対する彼らの心の叫びは、果たして本当に届いているのだろうか。
凄かった。
バイオレンスか、サスペンスか、そういう細かなところではなく、人間の醜さそのものを見せられた気がします。
あの一連の事件は、誰かが凶悪な思想を持って行った様な行為ではない様に思えます。
ちょっとした悪意がヒートアップし、各人の面子や責任が絡み合って最終的にあのような結末を迎えたのだと思います。
この映画の最も邪悪な点は、「警察」が起こした事件だということです。
平穏な日常を過ごす市民のモラルは、詰まるところ、警察の存在によって担保されています。
警察が全く信用できない世界では、モラルは崩壊するでしょう。
人々の良心は、それを監督する存在に寄って、呼び覚まされ機能する物の様な気がします。
通常、狂気を孕んだバイオレンスムービーでは警察は最後に出てきて救いを与える存在です。
それがこの映画では、ハナから加害者側です。そこが本当に怖かったです。
裁判の結果を判事が告げられて、取り乱す遺族を見て「今は1967年よ」というあの娘の言葉が頭をよぎります。
人々の意識に、まだついていけていない司法はその時代の矛盾と、歪みを象徴している気がしました。
評価はとても難しいが、観てよかったことは間違いない
音楽や車好き、あるいは映画好きのエンタメな気持ちと、シリアスな気持ちが、自分の中でコンクリフトし、うまく消化できません。
作品との距離が近く、傍観することは許されない。
”イエロー”の一言にもナーバスに反応してしまう。
当事者だったら?自分の街だったら?と思うととても恐ろしい。
往年のR&Bを聴いていると、ときどき話題になるデトロイト暴動。
本作品をみたらザックリ理解できるかな??
などと考えていたのは大甘でした。
理不尽を普遍化して、こちらへ出前してくるようなところがあります。
それでもやっぱり面白く観れちゃうところが、とてもよかった。
音楽もモータウン一辺倒じゃなく、ちょっとSTAXが入っているあたり、こちらでもドッキリさせられた。
油断も隙もないです。
事実
絶妙に生々しかった。
差別とか黒人への迫害をテーマにした作品は数々あれど、映像技術の進歩や風潮などにより臨場感が半端ない。
終始、眉間に皺をよせて観てた。
前半後半みたいな事になってて、前半は漠然とした暴動の経緯や状況などが群像劇かと思う感じで展開されていくんだけど、後半…モーテルの中に焦点を絞ったシーンの緊迫感に愕然とする。
白人警官役の人がこれまたベストなキャスティングで…風貌といい、目付きといい、黒人を迫害する事に躊躇も疑問もない。
当時の白人の有様を見事に落とし込んでらした。いや、素晴らしい演技でした。
「演技?」と疑問を抱く程に。
まあ、なんせ最初から最後まで、アメリカの闇というか人種差別の実態を事細かに描いた作品であった。
これは事実だったんだよなあ…脚色はあるものの。差別する側の残忍さと、される側の恐怖が生々しかった。
とてつもなく理不尽な理屈が、神の鉄槌かの如く降りかかってくる。
白人とそれ以外…。
バカげた思想だが、当時はそれが常識だったのだ。
大国の闇を垣間見た作品だった。
そして、その闇は今だに仄かに燻ってもいる。
暴力シーンが怖すぎ
人種差別の映画かー、ぐらいの基礎知識で観に行ってしまったのですが、ちょっと暴力シーンが多過ぎてお腹が痛くなりました。
さっさと「陸上用のおもちゃのピストルでふざけてただけ」と正直に早く誰か言ってよ!それで済む話じゃん!とイライラしました。
本当にあんな風に差別的な警官がいるなんて信じられない。
「キャスリン・ビグロー監督、すごい」
19本目。
監督は「ハート・ロッカー」で、2010年のアカデミー賞で、作品賞、そして女性初の監督賞などに輝いたが、その時の手法を、さらに発展させた作品になっている。
なんと言っても、40分間にわたる尋問場面が最大の見せ場となっている。
この作品を見て、今のトランプ政権下での「差別主義の広がり」が収まり、少しでもいい方向に向かってくれれば、と願うばかりである。
警官が悪魔に見える
1960年代に実際にあった黒人の暴動事件をテーマに描いた作品
初めは黒人の暴動の様子をドキュメンタリータッチで描いていくのかな?なんて観ていたのが、とんでもない方向に
黒人がおもちゃのピストルを発砲したのをきっかけに
警察官の恐ろしい尋問が始まる
この尋問シーン。とにかく怖かった。観ていてこちらが席をはずして逃げ出したい衝動にかられた
こんなこといつまで続くのか どうしてこう人間は残酷になれるのか、怖くて怖くてたまらなかった
警察官を演じるウィル・ポールターとにかく怖い
白人至上主義の若くて恐ろしい警官
あんなやつにつかまった黒人は逃げられない
逃げたり反抗するものなら殺される
彼の怪演ぶりが今も蘇り夜うなされそうだ
怖くて恐ろしく爽快感もなく喪失感が残る作品だ
アメリカに連れてこられ今でも差別に苦しむ黒人たち
子どもの頃「リンカーン」を読んで
南北戦争で黒人にも自由が与えられたと思い幼きながらも
良かったと思ってものだが とんでもない
今でもかわらない
アメリカだけでなく人種 宗教の違いで争いはどこにでもある
人はいつまで この愚かなことを繰り返すのか
観た後今も心がずしりと重くて苦しいが
すごく 見応えがあり よく出来た作品だと思う
ウィル・ポールター
突き付けられる『闇』
これはもう『感想』ってレベルじゃない気がする。
理不尽で執拗な暴行の場に放り込まれて、自分はただ立ち尽くしているしか出来なかった…そんな気分だよ。
それはドキュメント映像を見た時の感覚とは違う。
『世界の何処かで起きている目を背けちゃいけないこと』ではなく『いま目の前』の恐怖に震えたんだ。
そのくせ『自分はその現場にはいない・自分がその被害に遭うことはない』ってどこかで解っている、ムズ痒いような矛盾。
現実と映像との境界を乱された。
ビグロー監督の技量にやられた…感服するのみだよ。
50年前、1000人を超える死傷者を出した史上最悪ともいわれる暴動の最中、混乱の中心部からは少し離れた場所にあるモーテルでの一夜を切り取ったこの作品。
何が怖いって、暴力そのものもさることながら、それを起こしたクラウス達白人警官の意識なんだよね。
他人の生命を弄びながら卑劣な暴力を繰り返す彼等は、それを享楽とする、いわゆる異常者やサイコパスじゃなくて、
『当然のことでしょ?』『何が悪い?』とでも言いたげにフッツーに己の正義を振りかざしてるんだ。
あと保身ね。
『拳銃出てこねぇじゃん!』
『マジで撃っちゃったわけ?』
『取り敢えずまたドヤされんのかよ〜』
『うっぜ〜!やっべぇ〜!』
『お前らが喋らなきゃバレねぇんだから黙ってろよ!』
ってなもんで。
そんな人間を形成する社会・環境があるんだと思うと、その闇の深さが恐ろしくて堪らなかった。
見かねて黒人青年を逃がしてあげた白人兵士がいたのが救いではあったけど、
それだってコソッと逃がしたのであって、不当な尋問を止めようと立ち上がった人は1人もいないんだよね。
決してその兵士を気弱だと責めるつもりはないんだ…ただ『そこにも闇がある』と感じざるを得ず、これがまた苦しかった。
『この夜を生き抜け』と警備員ディスミュークスが言ったように、尋問を受け続けた彼らは自力で堪えて生き抜いた。
…ただ堪えるしかなかった。最後まで助けは来なかったんだよ。
中立に近い立場にあった唯一の黒人ディスミュークスの冷静さと機転は、彼らの生命を繋ぐ要素に確かになっていたかもしれないけど、
あの戦慄の中でも解放された後も、彼にはもう少し闘って欲しかった。闘えたはずなんじゃないかと思ってしまう。
守ることは出来ても挑むことはできない…これも『闇』か。
暴動勃発直後のシーンで
『自分たちの故郷を荒らすな』との政治家の呼びかけに対して、間髪おかず一人の男性が『焼き払え!』と叫んだのを聞いた時、涙が溢れた。
その一言で、黒人達の鬱積した苦悩と怒り・遣る瀬なさがどれほどのものか、突き付けられた気がした。
そして拡大化していく暴動…アルジェモーテルのような事件。負の連鎖だ。
人気歌手への道が開きかけていたのに、尋問のトラウマから人前で歌えなくなってしまったラリー。
あんな体験をした彼が歌うからこそ訴えられることがあるはず…と言う人もいるかもしれない。
でも、それはあまりにも酷だよ…苦しいよ。
染み付いた差別意識によって絶たれた生命・奪われた人生があった事実を、より多くが知らなければならないと思った。
とてもよかった
空気の読めない警官が本当に黒人を殺してしまうのが痛ましかった。殺した方も殺された方もたまらない。警官の横暴ぶりがひどすぎて、それに比べると今は、他の問題があるもののとても丁寧になっていい世の中になったものだ。
意地悪顔の黒人を殺してばっかりいる白人警官にもっとバチが当たって欲しかった。
デビューをふいにしてしまったロマンチックスのボーカルが気の毒だった。
暴動が起こると、それに乗じて商店からの略奪が行われるが、それは暴動とは別問題で単なる窃盗や強盗だと思う。でも実際にそんな場面に遭遇したらオレも興奮してついやってしまうかもしれない。その場の雰囲気でそんな気分になるものなのかもしれないが、居合わせたことがないから分からない。
職人芸とも思える硬派な作品に仕上がった
これもまた『ダンケルク』と同様の体験型と言えるが、当時のデトロイトの空気感と白人と黒人の関係性、そして白人同士、黒人同士の思想の違いなど多様性も感じられて、すでに職人芸とも思える硬派な作品に仕上がった。
冒頭にアニメーションで前提を説明する手法はよくある形すぎたし、そのクオリティもあまり良くないのはまず残念だったが、そのあとの2時間強は圧巻で、ときおり挿入される当時の映像が編集の確かさと相まって違和感なく繋がっていたのは、本編の迫力ある映像とサウンドのなせる技。
そうして徐々に醸成される没入感の先にあるアルジェ・モーテルでの描写は本当につらいものだった。アフリカ系のベトナム帰還兵があのモーテルで理不尽な迫害を受けるが極めて理性的だった。それは彼の地での経験がそうさせたのだろう。 偶然ながら今作を鑑賞後に録り溜めていた『プラトーン』を観た。こちらも馬鹿をやるのは差別主義者の白人だという描かれ方だが、その背景を観た後では全く頷ける描写だと思った。北軍と無関係の村人に対して出来るはずのない供述を強制する、という構図もまたまったく重なる。
今作は当事者たちへのリサーチをもとに一部は脚色されているが事実に近いものになっているという。 『否定と肯定』でも触れられていたが、被害者側に当時のことを語らせるのは望ましいことではない。しかし語り継ぐべきこともある。記憶のすり替え、曖昧さは常につきまとうことではあれ、そこにいた人たちの証言はより多くの人の耳に届くべきだろう。
アルジー・スミスは特筆されるべき存在感だったと思う。またラリーが聖歌隊にやんわり拒否されてたのは、彼らの世代と背景にあるモータウンが、コアな層からは嫌われていたってことだよね。同じ人種であれ。でもラリーはオールドスクールも敬愛していたし、そういう彼がまた同年代からは浮いていたことがあのモーテルの一室で描かれるのも良い。 Youtubeでは「Algee Smith & Larry Reed - Grow (from DETROIT) 」で今のラリーと演じたアルジーのデュエットが聴ける。素晴らしい。
Jimmy Mack
小学生の頃、『スネークマンショー』に収録されていた曲が実はモータウンのガールグループ、マーサとヴァンデラス(Martha Reeves & the Vandellas)が67年に出した曲ということを今作品で初めて知って何だか懐かしい想いに馳せてしまったものである。とはいえ、そんな郷愁も吹っ飛ぶような実話を元にしたサスペンス作品である。上記のように、1967年という自分が産まれる前に起こった暴動での出来事を描いた今作は、今の時代に警報を鳴らす意味合いも多分に含まれているメッセージ性の強いスパイスに散りばめられている。前半の暴動をドキュメンタリータッチで紹介しつつ、その説明を踏まえての今作のメインストーリーである『アルジェモーテル事件』での警官による理不尽な黒人拷問殺戮シーンに展開し、ラストへの法廷劇へと場面を変えていく3シークエンスとなっている構造である。演出として、警備員、又はドラマティックスメンバーのカットが同時並行的に描かれるところが観てて散漫になってしまうきらいがあって、どちらかをバッサリ切って、逆に敵役である警官のレイシズム振りをもっと膨らませる過去エピソードがあればと良かったのではと思うのだが、やはり実際の出来事故、いくら無罪であっても相手方への取材は難しいのだろう、若しくは『否定と肯定』でもそうだったが、明らかに理不尽で不条理な判決結果である被告の言い分を聴くこと自体、相手が利する手助けになるとの判断なのだろうか・・・この不条理、理不尽は人類が生存している間はずっと付きまとうものなのだろうか。。。陰々滅々とさせられる結末である。
殺されるかも知れない恐怖を追体験するような緊迫した演出及び編集は流石、過去作に引き続き、十八番の監督なのだろう。
それにしても、ジュリー役のハンナ・マリーのベッキー激似がなかなか脳裏に焼き付いて離れないオチでもある。
結局はどう生きるかが大事なのです
よくあると言えばよくある差別から起きた実際の事件が元になっている。黒人達はあんな差別の中で生きてきたのかと思うとそれだけですごい人達だと思う。
事件の被害者の中にデトロイトの黒人歌手グループのメンバーがいた。その中の1人が殺される。本当に不当な死だ。
このメンバーのメインボーカルは結局売れているこのグループに戻らなかった。歌を聴くのが、お金を出すのが白人だからだ。そして協会の聖歌隊に入る。彼の賛美歌が最後に心に響く。思わず涙が流れた。
差別はなくならないかもしれないけれど、その中で自分がどう生きるか、それは自分で決められる。かれは彼の信念に従って、賛美歌を歌い続けるのだろう。
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