デトロイトのレビュー・感想・評価
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終わりなき差別との闘い
アメリカの経済史において、デトロイトは重要な場所。フォードが世界に先駆け工場をオートメーション化し、乗用車を一般人でも買える価格に押し下げた。そして新しい仕事を求めて南部から黒人の大移動が起きた歴史の説明から、この映画は始まる。
中心となる警官はステレオタイプの人種差別主義者で(ITやメイズランナーでいじめっ子が板に付いたウィル・ポールターが適役)、発砲の証拠探や、ホテル客の身分証明書を確認するという当たり前の初動捜査をせず、はなから「黒人は敵」と決めつける。
ジョン・ボイエガが演じるディスミュークスは日々を安穏とすごすための戦術として、軍人や警察と良好な関係にあろうとするが、ホテルでの惨状よりも裁判での権力の構造に絶望したように思える。
このような歴史が色濃く残っている限り、銃社会というアメリカの構造は変わることはないのだろう。
権力を持つ人間の暴走を止めるために、誰しもが銃を持つ自由な権利があると言われれば、そこに属していない人間としては何も言うことができない。
今コビット19で新たな人種差別が起きようとしている。終息してからも、いや、もしかしたら感染が終息してから、一部欧米人たちが日本人と中国人もいっしょくたに、アジア人差別を繰り広げるかもしれない。
コビット19では政府の自粛要請に従わなかった飲食店や興行は「ずるい」と批判される。
デトロイトでも、同胞の黒人の店だろうと構わずに破壊行動は行われた。怒りのはけ口に任せて行動すると、結局、仲間同士の足の引っ張り合いになる。
しかし暴走した権力に対抗するにはどうしたら?
一時的な暴動なら、鎮圧されて終わりだ。それ相応の武力をもって暴力に訴えたとしたら、長い内乱になるかもしれない。自分たちが勝利者になったとしても、次は立場が反転した相手から、反乱が起きるかもしれない。いわゆる泥沼だ。
結局、私たち観客がこの映画を目にしたように、勇気を持っていつか誰かの心に届くまで、起きたことを世に訴え続けなければならないのだろう。
またはディスミュークスのように権力側とうまくつきあい、権力構造の中に自分たちが入り込んでいくしかないのかもしれない。
しかしそれには長い時間がかかるし、屈辱に耐え続けなければいけない。権力に取り込まれたと、同胞から非難を浴びるかもしれない。自分の世代では成し得ないかもしれない。未来ではその努力がおじゃんになるかもしれない。でもそれを信じて進まないと変化は訪れない。
「デトロイト」で起きたことは持つもの、持たざる者の闘争という人類史の縮図といえる。しかし結局、それは人間の根に他人への恐怖というものがあるからだ。自分がその恐怖で目がくらむ側になってはいけないと、思う。
実話だからこその明けない夜
胃が痛くなるくらい緊迫した空気が続く。
ホント嫌な映画。これが実話ベースだというのだから、閉口せざるを得ない。軟禁が終わっても、時代が変わるわけではなので、関わる者たちの夜が続くのは明白で、最後までそれを見続けるのに精神削られる。
自分が今の日本に日本人として生きていることを感謝したくなる。
作品としては実話であるからこその、ストレートな描き方。個人的な趣味としては、そこをコメディとして昇華したスパイクリーのブラッククラウンズマンの方が好きかな。
と言いつつも、嫌な感じで(いい意味で)心に残る作品でした。
モーテルでの拷問シーンは酷すぎます。
黒人暴動が荒れ狂うデトロイト。そのデトロイトのモーテル行われた、警官の残虐な行為を冷徹に描いた物語。
とてもリアルで、重たい作品です。警官の拷問シーンは緊迫感と恐怖で疲れ果てました。
このシーンは恐らく実際にあった話で、60年代とはいえ、ここまで酷い人種差別があったことは恐怖としか言いようがありません。
また、これも史実なので仕方ないのでしょうが、法廷での結果も最悪で後味がとても悪い映画となってしまいました。
「臭いものに蓋」はとても良くないことですが、出来れば映画としての鑑賞は避けたかった、そんなことまで考えた作品でした。
ラリーの決断に救われた
デトロイトの暴動の中、発生した事件を題材にした作品。
中盤まで警察の横暴による恐怖がクローズアップされ、緊張感のあるシーンが続きます。
終盤は、どうしてもやるせない結果にもやもやした感じになりますが、ラリーのとった決断に救われたほっとした感じになりました。
今から50年ほど前にこのような事件が起こっていたことに驚きと憤りを感じた作品でした。
とても緊張感のあるいい映画だったと思います。
【1967年の”デトロイト騒動”の中で行われた苛烈な人種差別をキャサリン・ビグロー監督が容赦なく描き出す。】
白人警察官クラウス(ウィル・ポールター:彼も演じていて辛かっただろう)のエスカレートしていく”死のゲーム”の40分に亘る尋問シーンの異様な緊張感漂う場面は未だに忘れ難い。
自らの危険を顧みず、奮闘する食料品店の警備員ディスミーキュス(ジョン・ボイエガ)の懸命な姿も同様。
<今作は公開前、この年のアカデミー賞最有力と言われていたが、ノミネートすらされなかった。当時、様々な憶測が流れたが、真相は闇の中である。>
<キャスリン・ビグロー監督が渾身の想いを込めて「ゼロ・ダーク・サーティ」に続き、世に問うた作品。>
<2018年1月26日 劇場にて鑑賞>
悪役がハマりすぎ。
この作品はそもそも制作すること自体に問題があるように思えるが。日本人の感覚からしますと。事実が明らかになってない事件を、こうだったに違いないと勝手に書いてしまう。それも当事者がまだ生きてるようなキスそーゆー新しい事件を。
まぁテーマ的にはしっかりしてるのでそれでいいんでしょうかねぇ。
ただキャスリン・ビグローという監督はちょっと変態チックなところがあるので…
白人警官が黒人のいじめする処を延々と撮りたかっただけ…それをもっともらしいストーリーに放り込んでうまくまとめた。…という気もしなくはない。まあ腹が立つほどひどい映画じゃなかったですが、長すぎてこともあるし。後味は良くないです。
ただひたすら胸糞。本当に現実にあったとしたら悪夢
【字幕版】デトロイト
鑑賞日 2018 3/16
前々からアメリカの黒人差別の歴史についての映画を見てみたいと思っていたので、そこそこ期待していた。この映画を一言で表すと、「胸糞が悪い」だと思う。あまりにも理不尽な黒人への差別や、腐敗した警官達。さらにその警察官の遊びによって意味のない殺人まで起き、しかもそれは裁判で無実になるという結末…。本当にこんな恐ろしいことがアメリカで起こっていたと考えるととても怖かった。本当にこの映画こそが2017年度のアカデミー賞にふさわしいと思った。また、主人公役の「スターウォーズ エピソード7、8」や「パシフィック・リム アップライジング」でのジョン・ボイエガや、差別主義者の警官のクラウス役のウィル・ポールターの演技が本当に素晴らしかった。
今更ながら観ました。さすがキャスリン・ビグローって感じ。 黒人の暴...
今更ながら観ました。さすがキャスリン・ビグローって感じ。
黒人の暴動シーン、長時間の尋問シーンの緊迫感、息の詰まる感じの描き方は凄いね。
K-19、ハートロッカーの時の感じが戻ってきた!と思いました。
テーマ的には、社会派映画だけど、表現ではきちんとエンターテインメントに徹する。
映画である限り、このエンターテインメントの部分が重要なんだよね。
テーマではなくて、表現で魅せる。だからこそ、観客の印象に残る。
本当に嫌な警官を見せてくれました。
硬派で重く,最後まで目が離せない
ビグロー監督ならではの作風。黒人差別の極みとも言える過酷なストーリーは,正直観ていて吐き気がするレベル。事実に基づいたフィクションならではの重厚感とピグロー監督らしい冷徹な眼差しが強烈だ。並の作品ならば,無実の黒人たちを拷問した末に3人を殺した事実に良心を苛まれた警官が自白した時点で,差別主義者の白人警官たちは裁判にかけられて罰せられ,黒人に対する理不尽極まりない権力による差別が全世界から糾弾されるという展開になるはずだ。結末はもちろんハッピーエンド。ストレスに晒され続けた観客は,最後の最後で胸をなでおろし,ほっと一息――。しかし,ピグロー監督がそんな凡庸な結末を用意するはずがない。結局,白人警察官たちによる暴行と殺害は無罪とされ,黒人たちは一方的に虐げられたまま本作は終わる。
現実の世界で権力者たちが分断と対立をあおりまくる姿を目の当たりにすると,「歴史は繰り返すのか」と慄然とせざるを得ない。
嘘がない映像力
個人評価:4.2
まさにキャスリン・ビグローらしい骨太な実話映画。他作もそうであるように、画面からは嘘が全く感じられず、実際にそこに居合わせているかのような緊迫感を、見る側に与えてくる。映像力が半端ない。
悪徳警官のウィル・ポルターの狂気染みた演技も見もの。
凄まじいまでの差別が残るこの年代のこの事件を通して、今尚続く世界の差別の実状を知らせてくれる。
よその国だけの出来事、じゃない。
自分を正義だと思ってる人間が、いちばん残酷になれる。
どこかで聞いたそんな言葉を思い出す作品だった。
まるで自分がその場にいるような気分になるカメラワークが印象的で、
40分超にもおよぶ拷問シーンはちょっと言葉で言えないくらい凄惨。
『セッション』でも思ったけど、観てるこっちもメンタル削られる感じ。
ひとつ疑問なのは拷問中、なぜ本当の事を誰も言わなかったのかってこと。
「死んだカールがおもちゃの銃を撃ったんだ」って。
まぁね、どうせ信じてもらえないのは分かる。
でも事実としては主張したらしいから、
映画にする際の改変で、どんな意図があったんだろうと気になった。
最後に、警官役のウィル・ポールターがマジですさまじい。
黒人コミュニティから襲われたりしないだろうかって心配になるくらいの怪演。
救いがない
「アメリカって、ひどい」「日本人の私たちにはわからないけど」
人種差別を語るときに、そんな風な言葉を聞くことがあるけれど、ん?そうだろうか。あるよ、私たちにも、個人差はあれど、差別意識。
自分と異質な人に対する警戒心は無意識にあるし、リスクを避けたい思いが差別に発展することは、ある。だけど、差別しない心の持ち方を追求していくモラルは大事で、そのための秩序を作るのが、教育とか法律なんだと思う。
秩序を期待されるはずの警察に犯され、司法にも見放されたら、どうしたらよい?そんな救いのなさが痛い映画でした。無罪を言い渡された瞬間 ( 結末は知っていても ) は?なんで?と声をあげてしまったわ。
1967年のデトロイトが特別だから?90年代のLAでも類似の悲劇があったよね。
しかし、そもそも、街全体が暴動でカオスになってるあの状況で、オモチャとは言え、しょうもない発砲する? コレをやったらどうなるか?状況読まない稚拙な行動は、糞警官も、「狙撃」犯も、同レベルかと。
この内容で2時間超はない
これ、大方の評価とは逆になりそうな感じ。個人的にはマイナスのところのほうが気になる作品だった。
題材に誠実に向き合っているし、当時の時代をこまかく再現した映像もすばらしいと思う。そして、痛しましい過去の記憶を提示する意思も感じられる。。
でも、構成が雑。あえてそうしているのかもしれないが、雑に感じてしまう。
発端を見せて、そこから一つの事件にフォーカスする流れだが、視点の誘導がどヘタ。完全に一回緊張感が途切れている。
それにその後の事件現場、なげーよ。一人目の射殺、横暴な尋問、誤った射殺、ポイントはあるわけだから要約しろよ!と思わせてしまうところ。(狙いもわかるが、あきらかに冗長)追い打ちを掛けるかのように、女の金切り声でイラっ。
その後、裁判はほぼアフターフォローのような内容。
ハートロッカーゼロダーク、ある一点にぐっとピントを合わせる手法ですか、それはそれでいいけど全部でそれやるなよ、ていう。
この内容で2時間超はない。
まだこういう事件があるんだよ。
Algee Smith & Larry Reed - Grow (from DETROIT) これを検索するとアルジーのグローという曲が聴ける。人間は平等。いつになったら成長するの。
1967年の7月、デトロイト警察が、無許可のバーの摘発から始まるが、『アルジェ モーテル事件』を題材に、被害者の証人、メルビン、ジュリー、ラリー、などの見解から描かれている。
黒人の少年ラリーが心身外傷後ストレス障害で自分の希望だった歌手の道を進むことができなく、それに、生活ができないので田舎の小さな教会で歌い始めて、自分なりの生きかたをし始める。
オハイオ州からの白人ジュリーは心身外傷後ストレス障害だったろうが、作品では彼女のことはほとんど描かれていない。
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