「双方にほこりのように薄っすら積み重なっていき、取るに足らないきっかけで、ブワッーと巻き散る」デトロイト えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
双方にほこりのように薄っすら積み重なっていき、取るに足らないきっかけで、ブワッーと巻き散る
1967年のアメリカ・デトロイト、黒人差別の暴動から起きた悲劇「アルジェ・モーテル事件」を、「ハート・ロッカー」や「ゼロ・ダーク・サーティ」を手がけた女性監督・キャスリン・ビグローが描いた。
終始、硝煙や火薬の消えない臭いがこびりつくような、汗臭い、ざらついた緊張感がつきまとう。
白人であり暴走した正義の象徴である警官を演じたウィル・ポールターと、黒人であり常に理知的で善意の第三者である警備員を演じたジョン・ボイエガの見事な対照が、酸欠になりそうな現場を再現する。
アメリカの黒人差別問題は非常に複雑で根深く、それ故に単純な勧善懲悪といかない側面がある。ほんの些細な、あそこであんなことしなきゃ、言わなきゃ良かったな、という場面が双方にほこりのように薄っすら積み重なっていき、取るに足らないきっかけで、ブワッーと巻き散る、そんな遣る瀬無さを感じる。
ドラえもんに出てくる「どっちも自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」ということばを、鑑賞後の後味の悪さを感じながら思い出した。
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