劇場公開日 2018年2月10日

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犬猿 : インタビュー

2018年2月8日更新
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窪田正孝VS新井浩文×江上敬子VS筧美和子 吉田恵輔監督が描く兄弟姉妹の愛憎

ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督が4年ぶりにオリジナル脚本で撮り上げた新作「犬猿」が、2月10日から公開される。見た目も性格も正反対な兄弟と姉妹に扮し、劇中で火花を散らしたのは窪田正孝新井浩文江上敬子(ニッチェ)、筧美和子。4人は監督への称賛の言葉を惜しまず、窪田は「監督のフィールドのなかで生かされていた」と噛み締め、新井は「すべて監督ですよ。うちらは台本通りやっただけ」と言い放ち、江上と筧は「見抜かれているようだった」と舌を巻く。異色の取り合わせの4人を導いた俊英監督の手腕とは――。(取材・文・写真/編集部)

ばしゃ馬さんとビッグマウス」「麦子さんと」などを手がけ、ヒューマンコメディの名手として定評のある吉田監督が、「兄弟」「姉妹」をテーマに、羨望、嫉妬、近親憎悪といった身近な存在に抱いた感情を、笑いとペーソスを織り交ぜながら描く。窪田がまじめな弟・金山和成、新井が刑務所から出所したばかりの傍若無人な兄・金山卓司に扮し、江上が仕事はできるがブスな姉・幾野由利亜、筧が容姿だけが取り柄の妹・幾野真子を演じている。

吉田流のキャスティングは「芝居の巧い人と飛び道具になってくれそうな人を組み合わせる」。本作においては、「女子2人が飛び道具で、それを引っ張ってくれる男子2人」というバランスを期待していたという。

実力派俳優・窪田と新井による“兄弟ゲンカ”は、ヒリヒリするような緊張感が漂う。新井は、窪田との共演を「キャッチボールができる俳優さんなので、とても楽しかったです」と話し、窪田も「場数を踏まれてきた方なので、何をやっても返してくださる」と信頼を寄せる。またプライベートは「共通点がない」という2人だが、役者としては通じる点があった。

窪田「役に対しても、仕事に対してもフラット。そういった部分が共通していたので、熱を帯びて役を語り合うみたいなことも……」

新井「一個もないね」

窪田「なかったですね(笑)。そこが楽というか。スタンスが似ていると思いました」

一方、江上と筧は、体当たりの“姉妹ゲンカ”を見せてくれた。役に対する思い入れが強く、筧は「共感した部分がめちゃくちゃあって、勉強ができないとか、器用じゃないとか。似たような思いをしたこともたくさんある。自分と重なる点がたくさんありました」と力説する。

江上は、「キャスティングしていただいた時はいじられていると思いました。『こういう方(筧)とこういう人間(江上)が姉妹なわけねえだろ!』という気持ち」と最初は面食らったが、「でも脚本を読んだら、死ぬほど共感する部分があった」。それもそのはず、由利亜は江上を当て書きした役で、吉田監督は「若い頃の藤山直美さんをイメージしたキャラクターだったので、最初から江上さんありきで脚本を書いていた」と説明している。

そうしたキャラクター描写のみならず、全てにおいて、演者には明確なビジョンが提示されていた。新井は「本が仕上がっていると(演者は)何もしなくていい」と台本の完成度の高さを称え、江上は「そのまんま演じた感じです。書いてある感じをそのまんま」と述懐。窪田は現場で「監督のなかでカット割りも全部できている」と感じていた。

兄弟姉妹の間に渦巻く愛憎を、笑いとシリアスを交えて映し出した本作。何気ないセリフのなかに、狡猾で醜い人間の本性が隠されている。窪田は「個人的には、(台本を)読んでいて『悪意があるな』と思ったんです。でも悪意があることがエンタテインメントとして面白かったりもする。そのなかに愛情を注いでくるから、『ずるい人だな』と思っていました(笑)」と告白。「吉田ワールドのなかで動かしてもらった感じ。画にはめ込んでもらったというか」と撮影を振り返る。

鋭い人間描写のなかでも、江上の心に刺さったのは、美しい妹が醜い姉を攻撃する言葉。「『そのカバン、その服に合ってないよ。もうちょっと小さい方がいいよ』というセリフ。女じゃないのに、よくそんなセリフが出てくるなと思ったんですよね。女じゃないと分からない感情だし、言われて一番嫌なことじゃないですか」。小さな指摘のようにも思えるが、女にとっては致命傷。筧も「ぎょっとしますよね」と深く頷く。

映画のハイライトとなるのは、兄弟姉妹の鬱憤(うっぷん)が爆発し、取っ組み合いの大ゲンカに発展する場面。撮影現場は、男性陣と女性陣で異なる雰囲気だったという。経験豊富な窪田と新井は、撮影前に動きを確認するなど、細心の注意を払った。

新井「うちらは2人とも場数を踏んでるから、ケガをしないように。『ここの角、危ない』とか(笑)」

窪田「『それも危ないので、わらって(どかして)ください』みたいな(笑)」

新井「お互いに対応能力が高いから。で、吉田さん(の指示)も明確。監督が迷っていると、こっちも迷いが出てくるので、やりやすかったです」

対する女性陣は、「我々は、何も考えていなかったよね」。江上が「『ケンカしてくれ』と言われたから『ケンカするしかない』と思って。ビジョンも何もない。筧ちゃんが髪を引っ張るから、『すげえ引っ張るな!』と思った(笑)」と話せば、筧も「フリーな感じで始まりましたね」と、あっけらかんと笑う。

それすら吉田監督の狙いだったのかもしれない。窪田は、「監督は『女性ならではの罵倒のし合いが面白かった』と言っていました。『あの服似合わないんだよ』『あの服着てるからだめなんだよ』みたいな。『攻めるポイントが男女で違う』と笑っていました」と明かす。

多くの現場を経験してきた新井から見た、吉田組の印象はずばり「明確」。「ビジョンがはっきりしているから、無駄なカットもない。『映画で何を伝えたいか』という大前提があって、各シーンをどうやって撮るという明確なビジョンもあるから、一切ぶれない。だから早い。カット割りも早いし、OKも早い。多分、吉田さんのなかではキャスティングの時点で終わっているんですよね」。

窪田「求めているものが本当にわかりやすかったです。描きたいこと、やりたいことを明確にやられていた。大きな作品ではない分、やらなきゃいけないことがまとまっているので、それをより強く感じました。監督のフィールドのなかで生かされていた気がします」

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