「観客も共犯者」コンプリシティ 優しい共犯 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
観客も共犯者
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「技能実習生や不法滞在者がテーマの社会派映画」とは言えないだろう。社会問題として、何かを告発しようとする作品ではない。
もちろん、“そば屋 青春物語”でもない。
「共犯」という題名も、リャンとそば屋の主人との「共犯」という意味なら、内容を的確に表していない。
にもかかわらず、自分は時間を忘れて、このかなり単純な映画に見入ってしまった。
そして終わった後、「なぜだろう?」と自問した。
まず当然ながら、“なりすまし”ゆえに、常に緊張感が解けず、危うい“均衡”の上で進行するストーリーには目が離せない。
しかしそれだけでなく、話の流れや俳優の演技がとても自然に感じられるとともに、一つ一つの情景が妙に心に“しっくりと”くるのだ。
リャンが、少しずつ“そば職人”として進化し、そば屋の主人と“親子”になっていく過程は、繊細に描かれる。
リャンに積極的にアプローチする画家の女は、いかにも現実にいそうだ。
フラッシュバックされる、リャンの郷里のお婆さんや母親の様子にも、とてもリアリティがある。
そして何よりも、心ならずもそば屋になったとはいえ、真面目に取り組むリャンに対して、こちらが“肩入れ”してしまう。
別に珍しいことではなく、例えば「ルパン三世」は泥棒なのに、ほとんどの人は、なぜか拍手喝采し、熱烈に“肩入れ”するだろう。
しかし、この作品には、「ルパン三世」のような善悪を超えた過激な感情とはまた違った、「優しい」感覚を自分は感じた。
“観客”こそが、リャンと“適度な距離感”をもった「優しい共犯」関係になる。演出の妙だろうか?
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