「人間関係を問う群像劇が、個人と大衆心理のあり方を問う」友罪 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
人間関係を問う群像劇が、個人と大衆心理のあり方を問う
"神戸連続児童殺傷事件の少年A(酒鬼薔薇聖斗)"をモチーフにしたのではないかといわれる同名小説を実写化。
原作者の薬丸岳はミステリー作家であるが、本作は真相解明がテーマではない。もし仲良くなった友人が、数十年前の少年殺人事件の犯人だったとしたら…という人間関係に斬り込んでいく。
瀬々敬久監督は、前作の「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017)では超感動作で大ヒットを記録したが、今回は一転して事件映画「64 ロクヨン」(2016)路線のような緊迫感を持っていて、最後まで目が離せない。
なんといっても、生田斗真と瑛太が、迫真の演技合戦を繰り広げるところが見どころ!!
それだけではない。本作は、単なる少年Aの"その後"ではなく、共演する佐藤浩市、山本美月、夏帆、富田靖子がそれぞれ演じる登場人物たちが抱える、家族・友人・同僚との過去エピソードが4つも同時進行する群像劇になっている。
ハッピーエンドを求める映画ではない。過去の罪ではなく、現在の人間性に価値を見出せるかという問いかけ。マスコミや口コミ、SNSをはじめとした発信者の愚かさと、それを鵜吞みにする大衆心理の愚かさも指摘している。
ちなみに瀬々監督は、昨年「最低。」(2017)でもAV女優を主役にしたヒューマンドラマを演出していたが、もともとピンク映画出身ということもあり、今回も夏帆が体当たりのシーンに挑戦している。
(2018/5/26/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)
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