セブン・シスターズ : 特集
最高! 第一印象で持ってかれた! 映画.com認定「“この設定”今年No.1」
「7つ子が“1人”に扮し、国家を欺く!」映画ファン必見のSF野心作!
一卵性の7つ子姉妹が1人の人物を演じて、近未来独裁国家の監視の目をかいくぐる!? その設定を聞いただけで「この映画見てみたい!」という意欲が沸き立つSFアクション・スリラー「セブン・シスターズ」が、10月21日より全国順次公開。「プロメテウス」のノオミ・ラパスが1人7役でヒロインを演じ、グレン・クローズ、ウィレム・デフォーも共演した要注目作だ。
強硬な1人っ子政策下──生まれたのは月曜から日曜の名を持つ7つ子姉妹
さあ、あなたならどうやって彼女たちを無事に成長させる?
地球の資源が枯渇する一方で、遺伝子組み換え作物の影響によって、子どもが多く生まれる状況となってしまった近未来。人口の増加を抑制された2073年という、絶望に満ちた未来=ディストピアを舞台に、これまでにない斬新な設定を持ち込んだのが、本作「セブン・シスターズ」だ。タイトルが示す通り、主人公は性格も能力も異なる一卵性の「7つ子姉妹」。「プロメテウス」の実力派女優ノオミ・ラパスが1人7役の驚がくの演技に挑戦し、グレン・クローズ、ウィレム・デフォーらベテラン陣が脇を固める、このSFアクション・スリラーで描かれる物語の「設定」を聞くだけで、「これは見てみたい!」と確実に好奇心を刺激される!
増えすぎた人口に対して少なすぎる食料、エネルギーの問題を解決するために強行されているのが、「児童分配法」と呼ばれる1人っ子政策。計画外に誕生した2人目以降の子どもは、地球の資源が回復するまで家族と引き離され、「クライオスリープ」と呼ばれる装置で冷凍保存されてしまうのだ。
人々の生活や行動にまで厳しい監視の目が向けられ、至るところに検問所が設けられている管理社会。その中で、母親の命と引き替えに一卵性の7つ子姉妹が誕生する。法に従えば6人は冷凍保存送りだが、唯一の身寄りである祖父は彼女らをあわれに思い、秘密裏に全員を育てることを決意する。
「月曜」から「日曜」まで、7つの曜日を名前に持つ7姉妹は、社会との接点を保ちながら、どうやって政府の目を欺いて生き延びるのか──その方法とは、7人それぞれが週に1日だけ、自分の名前と同じ曜日に外出し、1人の人物“カレン・セットマン”という人格を演じて生活するということだった。
野心家やヒッピー、戦士や調整役、天才的なエンジニアなど、まったく異なる性格と能力を持つ7姉妹を、ノオミ・ラパスが、異なるメイクや髪型、ファッションで演じ分けているのがすさまじい。役ごとに香水を使い分けてキャラクター作りを行ったラパスの技量に加え、代役やCGが駆使された“共演”シーンに要注目だ。
ハリウッド映画界でまだ映像化されていない注目脚本がリストアップされる「ブラックリスト」の10年版にランクインした有力作が、ついに映画化。“バンド・デシネ”と呼ばれるビジュアル・コミックや「フィフス・エレメント」を生み、ハイセンスなSFが好まれるフランスでは、動員50万人を超える特大のオープニング記録を達成した。
先の読めないサスペンス×スピード感あふれるアクション
「月曜日」が突然消えた? 裏切り者がいる? 彼女たちにいったい何が起きた?
本作で注目なのは、先に述べた設定だけではない。7人そろって初めて安定していた「1人の人生」が、ある日姉妹の1人が消えてしまったことで破たんし、その事件の裏にある真相に、残された姉妹たちが迫っていく姿がスリリングに描かれている点だ。なぜ姉妹は消えた? なぜ自分たちの存在が政府にバレた? 先の読めないサスペンスと、たたみ掛けるようなスピード感で迫るアクションが、見る者の緊張感を持続させるのだ。果たして、結末にはいったい何が待ち受けているのか?
7姉妹で作り出していた「1人の人格」の生活は完璧で、30年間政府を欺き続けてきた。エリート銀行員カレンとしての毎日だが、ある夜「月曜」が帰宅しなかったことで、その生活はほころび始める。何か事故に遭ったのか? 事件に巻き込まれたのか? 疑念は晴れないまま翌日を迎え、「火曜」はひとまずいつもの通りに出勤するが……。
「火曜」は「月曜」の前日の足取りを追うが、政府の強力な監視の目をかいくぐることはできず、「児童分配局」の局員に逮捕され、同局を取り仕切る女性博士ケイマンのもとへと連行される。そして同じ頃、7姉妹のアパートには武装した男たち──明らかに政府の手の者が奇襲を敢行する。力を合わせて応戦する姉妹たちだが……。
いくつもの犠牲を払いながらも逃げ延び、なぜ自分たちの命が狙われるのか? 秘密は発覚したのか?を探ろうとする姉妹たち。カレンとケイマン博士の間に大口の契約が結ばれようとしていたことも判明するが、それは“どの曜日が演じていたカレン”が進めていたことなのか? “カレンの恋人”と名乗る男も現れ、事態はさらに混迷を迎える。果たして“裏切り者”はいたのか?
映画ファンの関心を引いてやまない、絶望の近未来を描く「ディストピア映画」
本作もまた、見る者の記憶に“トラウマ”を残す新たなる1作──
薄汚れた大気に包まれ、まるでスラムや工場のような建造物が建ち並ぶ光景が広がる、まったく“輝かしくない”未来社会──フィリップ・K・ディック原作の「ブレードランナー」が切りひらいた「ディストピアSF」という映画ジャンルは、長年に渡って映画ファンの知的好奇心を刺激し続けてきた。
政府の方針によって、個人の意志とは関係なく未来が決定される世界を描いてカルト的な人気を集める「未来世紀ブラジル」や「ガタカ」をはじめ、近年でもスラム化した近未来社会を描写した「第9地区」や、人類を凌駕(りょうが)する新たな存在の誕生と不安を描いた「エクス・マキナ」「ディストピア パンドラの少女」に引き込まれた映画ファンも多いはずだ。
本作「セブン・シスターズ」もまた、そうしたディストピアSFの傑作群に連なる新たな1本。政府が厳しい人口統制を行うという超管理社会の不安を描くとともに、そこからさらに一歩踏み込んだ「同じ顔を持つ7つ子が1人の人間を演じて、監視の目を欺く」という設定が斬新だ。そしてその完璧だったはずのルーティンが、姉妹の1人が行方不明になったことで崩れはじめる、ミステリアスな展開にも引き込まれる。
ノオミ・ラパスが1人で7役を演じ分けているのにも驚かされるが、近未来SFアクションにおいて、女性が主人公であるという点も近年のトレンド。命懸けで謎の真相に踏み込んでいくラパスのき然とした姿は、「ハンガー・ゲーム」シリーズのジェニファー・ローレンスや「LUCY ルーシー」のスカーレット・ヨハンソンもほうふつ。「月曜」から「日曜」の7人を演じたラパス“たち”の運命から目が離せない。