「惜しい。無駄な材料を使ったせいで料理に失敗している」さよならの朝に約束の花をかざろう へっくうさんの映画レビュー(感想・評価)
惜しい。無駄な材料を使ったせいで料理に失敗している
おそらくこの作品の主題は、長命と短命との差による出会いと別れ、そして親子関係の2つでしょう。主人公格のキャラクターはマキアとエリアル、この2人だけです。
作品を見て感じたのは、それら以外にレイリアの虜囚の悲嘆、クリムらの復讐劇、非人道的な王に対する軍人イゾルの反発、伝説である長命種レナトの種としての最期、国家間戦争などなどが、脇役・サイドストーリーというよりは準主人公格・サブストーリーとして描こうとされているということです。
約120分、TVアニメでいえば本編約5.5話分しかないにも関わらずそれらの要素も描こうとすれば、必然的に時間が足りず、そうなると自然、主題や主人公格が描かれる時間は短くなります。そうなると、主題の描写は足りずもやもやするし、サブストーリーも不完全でもやもやして、あまり作品に集中出来ません。
具体的には、マキアが感慨を受けて回想するシーン、あれは見る人には新規の情報であり、本来ならば事前に描いておいて視聴者も一緒に思い出す、という方が効果的です。レイリアの孤独についてはなんとなく察せられますが、あれほどまでに狂う様子に納得するには描写が少なく、クリムの狂信的とまで言える復讐の念や別れの民についての思想についても描写が少なく頭で理解できても心がついていきません。イゾルについては王に反感を抱いているようですが結局なにも無かったので、描写するだけ時間のむだだと思います。
切るべき所はバッサリカットして、主題をじっくり描写すべきだったと思います。TVシリーズなら2クールでじっくりやるべきレベルの要素の多さだと思います。
キャラはかわいいし、声もよいし、作画もよいし、音楽も良いし(ただし音量がちょっと大きすぎたのと、戦争の剣戟音は耳障りでした)、扱う内容も良いのですが、内容については料理に失敗したようです。
材料が良かったので泣けましたが、作品にないたわけではないという実感があります。