「美しく深い映画。唐田には不思議な魅力がある。」寝ても覚めても yesyesmasaさんの映画レビュー(感想・評価)
美しく深い映画。唐田には不思議な魅力がある。
久しぶりに、映画を見て感動した。同じように感動した人が多いのだろうと思って、レビューを読んだら愕然。同じ映画を見て、ここまで受け止め方が違うとは・・・。
朝子を、「ホラー」だとか「怖い」、「性悪女」と評価する人は、この映画を誤解していると思う。朝子ほど、純粋な子はいない。麦と出会って、いきなり唇を奪われる。おそらく、朝子のファーストキスだったはず。一瞬にして恋に落ちて、そして麦は去っていく。「必ず帰ってくるよ」という無責任な言葉を残して・・・。朝子は純粋だからこそ、その後、何年も麦を待ち続けることになる。
亮平との関係がぎこちないのも、朝子が麦の言葉に縛られていたからだ。亮平が麦とは別人であることを意識する度に、亮平を避けようとする。「夢の世界の麦」と「現実の世界の亮平」は、見た目はそっくりでも、朝子にとっては別人なのである。それでも、被災地支援をする過程で、朝子は徐々に亮平の内面に惹かれていく。しかし、亮平の内面の美しさは、皮肉にも、「夢の世界の麦」を美化することにもつながる。
朝子が、亮平ではなく、麦を選んだのは、朝子が「性悪女」だからではない。「純粋」だからこその必然であった。しかし、東北の海岸で、ようやく夢から覚めることになる。防波堤の向こう側の海の存在を知らなかった麦に「軽薄さ」を感じる。同時に、亮平というかけがえのない人を失ったことに気付いた瞬間でもあった。
川辺沿いに、亮平を追いかける朝子に、日が差していく場面が美しい。二人の将来を暗示している。「一生、お前を信じることができない」という亮平の言葉は、「それでもよいのなら、もう一度、やり直そう」という朝子へのメッセージでもあった。亮平の怒っている姿は、目の前の濁流とシンクロする。そして、朝子は、濁流を見て「美しい」とつぶやく。川の流れが途絶えることがないように、二人の愛は続いていく。