私はあなたのニグロではないのレビュー・感想・評価
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黒人差別の構造問題
公民権運動時代に活躍した黒人作家、ジェームズ・ボールドウィンの原稿を通してアメリカ黒人差別の歴史を紐解く作品だ。ただのニュース映像をつないだドキュメンタリーではない、ボールドウィンの文章を再構成し、彼の精神性に現代まで続く差別の構造問題に焦点を当てるような作品だ。
この映画には、黒人の出演するアメリカ映画の断片がいくつも挿入されている。白人の観客のための黒人のキャラクターはどんなものか、そこからアメリカのリベラルの潜在的な欺瞞を暴き出すために映画の引用は実に有効に作用している。
招かれざる客のような人種間の融和を訴えたとされる映画にさえ、そうした欺瞞が隠れていることをボールドウィンは示唆している。ニガーという役割を必要としていたのは白人だった、それはなぜなのか。この映画はそれを問う。
差別をテーマにした映画で最も考察の深い作品の一つと言っていいと思う。映画と合わせてボールドウィンの「悪魔が映画を作った」を読むとさらに理解が深まるだろう。
ジェームス・ボールドウィン!
BLACK IS BEAUTIFUL !
【”自由と正義の国”で400年もの間、行われてきた差別と暗殺の歴史を、ハリウッド映画シーンを絡ませながら描いたドキュメンタリー作品。】
ー サミュエル・L・ジャクソンの、抑制した語りで、”自由と正義の国”で400年もの間、行われてきた差別と暗殺の歴史が語られていく。
軸は、黒人の人権を手法は違えど、訴え、1960年代に次々に暗殺されてしまった、
・メドガー・エヴァース
・マルコムX
・キング牧師
の生き様を、この映画の原作を記したジェームズ・ボールドウィンの視点から語っている所である。ー
・そして、語りの中で1920-1970年代のハリウッド映画
『キング・コング』
『駅馬車』
『昼下がりの情事』etc.で描かれる、公開当時は普通だった、黒人や原住民の描き方を通して、”自由と正義の国”では、白人の幸せ、勝利がメインとされてきたことが、語られる。
<ラスト近くで流れる、ジェームズ・ボールドウィンが記した
”向き合っても、変わらない事もある。だが、向き合わずに変える事は出来ない”と言う言葉は金言であり、この現代日本でも十分通用するものであると、私は思う。>
心が痛い
差別
世の中にはいろいろな差別が悲しいかな存在するが、
"自由の国アメリカ"ではそれはそれは、長く悲しい差別の歴史がある事をこの映画を通してより詳しくその内容を知ることができた。
私自身、親しい人間の中に黒人がいないので、どこか遠い存在のように感じてしまうのだけれど、アメリカやヨーロッパには当たり前のように黒人も白人もいて、日本よりもずっといろんな肌の色が存在する。
そんな環境の中で、黒人が自分たちに対する差別に対して闘う様がこの映画では幾度となく紹介された。
差別そのものが、何のために存在するのか。
そんなそもそもの、とてもシンプルな質問が本作ではでてくる。
心の弱い人間が自分達に都合の良くなる社会を作るために、わざわざ、作ったものなんだということをこの映画では教えてくれる。
本当にこれが同じ国に住む人間に対して、人間がすることなのかと目を覆いたくなるような暴力。
若くして命を奪われた少年、少女。
自分たちの尊厳と権利を正しい形で訴えて、命をある日突然奪われたリーダー達。
いろんな人の命の犠牲がアメリカの歴史にはある。
にもかかわらず、未だアメリカでは黒人差別が根強く残っている。本当に悲しい事実ですね。
何となーく、人々の気を逸らすように、メディアを使って人間達は問題に目を向けさせぬよう、社会へうまく誘導します。
それはアメリカだけではなく、現在の日本もまさにそれ。結局何も解決することなく、同じ悲しい事件が繰り返される。
この映画には、黒人達の強い意志と、高い誇りと、純粋な想いがたくさん詰まっていると感じた。
同じくらい、悲しみや憤りも感じた。
正直、このような題材の作品を観たのは初めてだったので、内容についていけない部分もあった。
またもう一度鑑賞して、この世の中にある悲しい歴史から、未来を変えていける一員に自分がなれるように、考える時間が欲しいと思った。
人ごとではない、自分のことだと意識せねばならない
人ごとだと思ってはいけない。
これは、黒人の問題ではない。
すべての人類の問題なのだ。
それを対岸の火事だと思うような人とは友人にはなれない。なぜ、そんなことが思えるのか? なぜ、そこまで他人に不寛容になれるのか?
とはいえ、自分自身も黒人差別ができた歴史やシステムを知らなすぎたことを恥じる。もっともっと勉強して知らなければいけないと感じた。
#BLMは黒人だけの問題ではない。黒人の命も白人の命も有色人種の命も、わたしたち人類すべての命を大切にしなければならないと、みんないい加減に気づかなければ。なぜ、いままでずっと黒人だけが虐げられ我慢を強いられてきたのか? もうこれ以上無知ではいられない。わたしたちは『いま』『すぐ』『ただちに』変わらなければいけない。
"怒り"と"恐怖"
アメリカを解き明かす深層心理の証言
蝕まれた他在における自己認識
タイトルに対し最期は「あ〜そうですか、、」
アメリカ南北戦争後、今までの黒人の歴史を第二次世界対戦後を中心に語る映画。
序盤はあまり白人を敵対視する訳でも無く、黒人がメディアに出てくる同じ黒人への見方や考察等があって面白いものだった。
しかし、後半になるに連れてやはり虐待だの差別だの思いっきり黒人の事優先となり、観る気が失せてしまった。
黒人の主張は認めるが、何でも語っていいものでも無い。今までの歴史の中で白人の配慮だってあった筈だ。
それが後半出なくなったので、タイトルにも「あ〜、そうですか」しか言えなくなった。
一方的な片方の理論話は嫌いだ。今の日本と韓国に通じるものがある。
南北戦争後、何故アメリカは黒人をアフリカに返したり、イスラエルの様に一部の場所に国を持たせ、支援するから自分らで頑張れとは言えなかったのか?
こんな永久に解決出来そうも無い人種問題なのに。
国としては労働力はなんとしても確保したかったのだろう。日本も移民の話が出ているし、どうなる事やら。
そんな事を思わせてくれる作品でした。
面白かった
知らないことが多かった
マルコムXとマーチン・ルーサー・キングは、正反対のタイプで当初敵視し合っていたとは、全く知らなかった。
有能、辣腕な反人種差別主義者が出てくると殺しちゃう、というアメリカ銃社会。それは乱暴者の単純な犯行ではない。
現在もまだまだ差別が根強く、我々には信じられないが、それは間違いと外から言っているだけでは根本的差別解消は難しそう。
I AM NOT YOUR WOMAN
映画やインタビュー、スピーチなどが引用され詩的な映画だった。ボールドウィンの言葉は力強く、ときに難解で一度観ただけでは深くは理解できなかった。ブラックアメリカンの歴史や事件に比較的関心を持ってきたつもりだったが、これは何を表象しているんだろう?と思う場面がしばしばあった。
映画の中の黒人表象については手厳しい。「手錠のままの脱獄」が黒人たちにはそんな風に解釈されていたのかと、リベラル白人の視点を内面化して観ていた自分自身に気づく。
黒人の子供が映画の中の白人ヒーローと自分が同じではないとある日気づく、と指摘する場面があるが、わたしも映画の中のヒーローに自分を重ねるとき、一度男性になり、それからヒーローになる。いつしか自分の人種、性が劣っているかのように思い込んでしまう。黒人のヒーローが活躍する「ブラックパンサー」の持つ革命的な意味と希望を改めて実感した。わたしにとってはフォースの覚醒。
「女性」バージョンも作れそうだ。
I AM NOT YOUR WOMAN.
ドロシーカウンツのことは初めて知った。立派な当時15歳。後ろであざ笑う男達もまだたくさん生きているんだ。
映画には女性も出てはくるが、その不在感からは黒人女性がさらに周縁化されていることにも気づかされる。
言葉を変えても差別はなくならない
アメリカで黒人が差別をなくすために戦ってきた軌跡をたどるドキュメンタリー
いきなり冒頭で映された昔のテレビの討論番組で
白人の司会者が「ニガーは」って言い出したところから始まったことにびっくりした
最近、あまり聞かなくなっていた言葉だったからだ
しかし、この映画を観ると
「ニガー」という言葉が使われなくなったのは、
白人が「差別していないこと」をアピールするために言葉を変えているだけで、
本質は何も変わっていないことがわかる
それをよく表しているのは、
この映画の中で「黒人の地位が向上した」
と宣言しているのは、いつも白人の政治家や学者たちであり
その宣言だって上から目線の
「してやった感」が溢れたもので
自分たちが心の広さをアピールするために言っているに過ぎない
では、本当に差別をなくすためにはどうしたらいいのか
白人が黒人をアフリカから奴隷としてアメリカに連れてきて、彼らをまるで物のように売買していた時から今までの歴史を白人が認めて受け入れ
「黒人初の」大統領というような「黒人の」という冠がなくなったとき
差別がなくなったと言えるのではと思った
それは例えば、黒人の学者に話しかける時
「あなたは、アメリカ人の学者です」
ではなく
「あなたアフリカ系アメリカ人の学者です」
と言ったら、それは言葉を変えているだけで「あなたはニガーです」と言っているのと同じ意味なのだ
彼らはその度に
「私はニガーではない」
と心の中で反発しているのだ
潜在意識がそこまで変わったとき、
恐らく白人が黒人に暴力をふるうことはなくなるだろうし
「黒人貧困層が暮らす地域」も無くなるだろう
しかし、全ての人々が、そのことに気づくまで
相当な時間がかかるだろうと思いながら、この映画を見終えた
そしてマーベル映画「ブラックパンサー」やホラー映画の「ゲット・アウト」が、どれだけ革新的で、そこにどれだけ彼らの思いが詰め込まれているのかが、よくわかった作品だった
これは「ブラックパンサー」の前に観たかったなぁーと、何度も思った作品だった
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