「黒人差別の構造問題」私はあなたのニグロではない　ローチさんの映画レビュー（感想・評価）

公民権運動時代に活躍した黒人作家、ジェームズ・ボールドウィンの原稿を通してアメリカ黒人差別の歴史を紐解く作品だ。ただのニュース映像をつないだドキュメンタリーではない、ボールドウィンの文章を再構成し、彼の精神性に現代まで続く差別の構造問題に焦点を当てるような作品だ。

この映画には、黒人の出演するアメリカ映画の断片がいくつも挿入されている。白人の観客のための黒人のキャラクターはどんなものか、そこからアメリカのリベラルの潜在的な欺瞞を暴き出すために映画の引用は実に有効に作用している。

招かれざる客のような人種間の融和を訴えたとされる映画にさえ、そうした欺瞞が隠れていることをボールドウィンは示唆している。ニガーという役割を必要としていたのは白人だった、それはなぜなのか。この映画はそれを問う。

差別をテーマにした映画で最も考察の深い作品の一つと言っていいと思う。映画と合わせてボールドウィンの「悪魔が映画を作った」を読むとさらに理解が深まるだろう。