「アクションに徹した作りが清々しい」ミッション:インポッシブル フォールアウト アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
アクションに徹した作りが清々しい
2D 字幕版を鑑賞。トム・クルーズが主演するミッション・インポッシブルの映画化作品の第6作である。第1作は 1996 年の作で,今から 22 年前のことである。当時 34 歳だったクルーズも今や 56 歳となり,肉体的には辛い年代になってきているのだが,今作でもスタントマンを使わず,全てのアクションシーンを自分で演じているそうである。そのこだわりの強さは,まるで,ジャッキー・チェンの映画のようになってきた感じがある。
第1作から4〜6年おきに続編が作られてきたが,監督が毎回変わり,その印象も毎回違っていた。しかし,今作は第5作の「ローグ・ネイション」と同じ監督で,前作から3年しか経っておらず,初めて物語上の繋がりが生まれている。このため,前作を見てから見に行った方がはるかにお勧めであるが,前作で非常に重要な役割を演じたウィリアム・ブラント役のジェレミー・レナーが出演していないのが非常に惜しまれた。別な映画に出演するため,スケジュール上の都合だったらしい。
かつてのテレビシリーズでは,ターゲットに大掛かりな仕掛けをかけて騙すという頭脳戦が見どころで,今作でも核爆弾の製造者をハメるシーンでその片鱗を見ることができたが,あとはただひたすら肉体的なアクションで無理矢理解決しようという話なので,あまり頭は使わなくなってしまっているのが残念である。プルトニウムの塊を素手で触ったり,核弾頭の構造がスカスカで爆縮レンズもないなど,もうちょっと勉強してほしいというデザインだったのには失笑した。
登場人物でいきなり見慣れない奴が CIA のお目付役で出てくるのだが,それが「マン・オブ・スティール」でスーパーマンを演じたヘンリー・カヴィルだったので,最初から怪しさ全開だった。クルーズがヘリコプターのライセンスまで取得したヘリのシーンも見応えがあったが,もしヘリの前後関係が逆だったらバレバレじゃないかとか,一人で面白がってほくそ笑んでいた。ハントを巡る女性の話など,台詞だけで語られるのも手抜きではないかと思った。
音楽担当のローン・バルフは,「ターミネーター:新起動/ジェニシス」や「ゴースト・イン・ザ・シェル」さらに「パシフィック・リム:アップライジング」などを手がけた若手の作曲家で,ハンス・ジマーを彷彿とさせる迫力ある音楽が非常に聴き応えがあった。特に,ハントが絶望感に打ちひしがれる場面での音楽には非常に痺れた。
主な舞台がパリとロンドンで,どちらも 14〜15 年ほど前に訪れたことがあるので興味深く見たが,パリの印象がほとんど変わってなかったのに対し,ロンドンは随分変わったという印象を受けた。字幕はクルーズと個人的に親しいらしい戸田奈津子であったが,相変わらずおかしな日本語全開で,本当にイライラさせられた。
(映像5+脚本3+役者5+音楽5+演出5)×4= 92 点