「映画の力。」祈りの幕が下りる時 mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
映画の力。
東野圭吾にとっても加賀恭一郎シリーズの集大成だったが、映画シリーズもその感が強い。
東野圭吾の小説はそれぞれ複雑なプロットなのだが、本作はそこも集大成的である。
加賀(阿部寛)の母親が事件に絡んでいて、そのことが情緒過多といってもいいくらいのミステリーになっている。
アリバイ崩しや密室などの趣向はないが、人がたどってきた道程がそのままミステリーになっている。相当の表現力を要する。
原作を読んだときに、東野版「砂の器」と評したものがあるといったが、映画はもっと「砂の器」寄りである。
冒頭の事件経過をテロップで紹介するあたりはそのままである。
道行きをしなければならなかった理由が、本作は少し弱い気もするが、福澤克雄はてらいもなく道行きをみせていく。映画の力である。
小日向文世と桜田ひよりのパートは、涙なしに見ることはできなかった。
「砂の器」のクラシックの演奏と捜査会議のカットバックに匹敵するシークエンスがあればいうことはないのだが、それは高望みというものであろう。
ドラマ「新参者」からずっと観てきてよかった。
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