劇場公開日 2018年6月29日

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「SWファンほど満足できない出来」ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5SWファンほど満足できない出来

2018年7月2日
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鑑賞方法:映画館

2D 字幕版を鑑賞。STAR WARS シリーズのスピンオフ作品である。このシリーズの版権がディズニーに移ってから,2年おきに作られるようになったスピンオフ作品は,「ローグ・ワン」に続いて本作で2作目である。いずれも Ep.4 のスピンオフになっているのは,いかに第1作の影響が大きいかを物語っている。「ローグ・ワン」がそこそこ見応えがある作品になっていたのに対し,本作はかなり見劣りがした。アメリカでは大コケだったらしい。

アメリカ映画は,基本的に西部劇の伝統から抜けられていないものが多いのだが,本作も仕立てを変えた西武劇に他ならない。脚本におかしな点が多く,各人物の行動原理がはっきりしなかったり,重要な人物が再登場するまでに何があったのかほとんど語られず,陰の実力者がとっくに死んだはずの人物だったなど,非常に不満が感じられた。いずれも一切の説明やヒントが用意されていないのである。ジェダイの戦士が出てこないのでライト・セーバーによる戦闘も見られないというのはかなり物足りなかった。

俳優は,まず主役に大きな問題があった。ハリソン・フォードに何一つ似ていないのである。山口百恵の歌のように,「♪顔が違う,声が違う,全部違う,仕草も違う」という状態なのである。まるで,開始から半年も経つのに,未だに主役が西郷に見えない某大河ドラマのようである。特に致命的なところは,ハン・ソロならもっとふてぶてしさがあるはずなのに,それが微塵も感じられなかったところである。選ばれた役者も気の毒にと思う。世界中のハン・ソロのファンからダメ出しを食らうに決まっているからである。いっそ,見た目が変わらないチューバッカを主人公にしたら良かったのにと思った。そもそも,ハン・ソロの過去に深く関わっていたはずのあの大物キャラは一体どこに行ったのかという不満を持ったのは私だけではないだろう。

音楽は,「シュレック」や「アイス・エイジ」などのアニメ作品を多く手がけているジョン・パウエルが担当している。ジョン・ウィリアムスのフレーズをテーマにして変奏曲を書くような仕事であるが,オリジナルの楽曲もいくつか書き加えてある。問題は,それらのオリジナル曲が,全くこのシリーズにふさわしいと思えなかったことである。スピンアウト作品ということで,あの有名なテーマが冒頭で流れないという仕様はもうやめにしたほうがいいと思うのだが,何か縛りでおあるのだろうか?

監督は,名作「バック・ドラフト」や「アポロ 13」「ダ・ヴィンチ・コード」などで個人的に評価しているロン・ハワードになっているが,実は公開1年前に交代した代役である。元は,「21 ジャンプ・ストーリー」などを手がけた若手のフィル・ロードとクリス・ミラーが当たっていたが,脚本にない即興演技を多用したことからルーカス・フィルムと意見の食い違いが修復不能となって解雇され,ハワードが尻拭いをさせられたということのようである。残された時間がわずか1年もなかったことから,どれほどの撮り直しができたのか不明だが,かなり不本意な出来になってしまったことは察するに余りある。つくづく,最初の人選は重要だということであろう。
(映像5+脚本2+役者2+音楽2+演出3)×4= 56 点。

アラカン