劇場公開日 2018年9月7日

「広告に騙されずとにかく見て」累 かさね nさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5広告に騙されずとにかく見て

mさん
2018年9月11日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

累役が美人じゃ話が違う、ただの女の嫉妬バトルか…という前提を覆す深い内容になっています。結論から言ってめちゃくちゃ面白い!!
 開始10分ぐらいはクソ映画臭がすごくて、見に来たのを軽く後悔したのですが後半物凄い勢いで引き込まれました。物語のラストシーンを見て、ああこれを見せるために物語の前半は必要だったんだ……と腑に落ちる感じでした。伏線というより対比というか…。

 私は、美人が累を演じること+尺の都合上過去のエピソードが削られること=劣等感を描ききれないのでは? と懸念していたのですが、「別の人間に成る、奪うことへの異常な執着」に絞り、それを演技で表現することで乗り越えたように感じます。そこに実写化の意味を感じました。光を描いて影を魅せるような方法を取ったわけです。

 土屋太鳳さんと芳根京子さんによる演技の見どころは、ふたりが顔を入れ替えながらどう変化していくか。累とニナを行き来しながら演じる怪演でした。ふたりの演技は後半に一気に加速していきます。
 私は、見て終わってしばらくしてから一気に面白さがやって来た、みたいな感じでした。終盤はゾクゾクが止まらなかったです。一旦落ち着いて物語を思い返して、後味を増幅させていく最中にふたりの演技のレベルの高さを思い知りました。二回目の方がより楽しめる映画かも?

 繰り返しますが「男を巡るドロドロバトル」「とにかく相手の容姿を罵る、醜い女の争い」みたいな内容ではありません。広告の打ち方が本当に気に入らないです。映画自体はちゃんと原作の本筋を理解して作り上げているのに、宣伝が何もわかってない。
 もし、原作や内容は興味があるのに宣伝がなんかなー…と思っている方がいれば、お願いだから宣伝に惑わされず見に行ってください!!と言いたいです。私は原作が好きなのに宣伝で行くか悩んだ(友人に誘われてなかったら行かなかったかも)人間なので、こんなに面白いなら見合った宣伝をしてくれよ!という気持ちでの-0.5。折角の見どころシーンも広告に邪魔された感があります。

追記
 原作とイメージが違う、これを求めてたわけではない。というレビューを見かけます。これは原作テーマの「美醜」に迫れなかったこと、劣等感の重みを主軸に置いていないことが理由だと思います。美人が演じるから仕方ないよな…とは思うけれどそこが残念に感じた方もいらっしゃるようです。まあちょっとわかる。
 私は累のテーマ、「美しいものへの羨望」がねじ曲がっていく様子に累らしさを感じました。こんなにも美しいものに執着する→劣等感が蓄積されていたんだな、と感じるかどうかみたいなところだと思いました。ご参考までに。

m