「「あの人終わってるよ」というのは悪口なのにタイトルに持ってきたのは...」終わった人 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)
「あの人終わってるよ」というのは悪口なのにタイトルに持ってきたのは...
「あの人終わってるよ」というのは悪口なのにタイトルに持ってきたのは脚本家の内館牧子さん。
内館さんが原作。内館さんは盛岡出身で多摩美時代はラグビー部のマネージャーだったそうです。
当作品の監督はリングの中田秀夫さん(東大卒)。主役の舘ひろしさん、これでモントリオール国際映画最優秀男優賞受賞されてるんですね。
定年退職した東大卒のエリートサラリーマンとその妻、家族の物語で、あぶない刑事の舘ひろしさんが初老の男性を演じられています。
なんだかショック。あのハンサムな舘さんが、なにもすることがなくてくすぶってるおじいちゃんになってる……からの、生きがいが見つかって、みるみる若返ってカッコよくなっていく。
奥さん(黒木瞳)や娘に「恋でもすれば?」とバカにされて、実際に外で恋をして、東大卒の元銀行員のキャリアでヘッドハンティングは来るし、IT企業の社長になってしまって、がぜん!イケてるおじさまに変身してしまいました。きゃあ☆
さすが舘ひろし、かっこいい~♪
LEONの表紙から抜け出てきたかのようなファッション番長!かっこいい社長。足ながーい!!知的で枯れてて、大人の色気もムンムンです。
かっこいい!かっこいい!かっこいい!
とおもいきや、まぬけでミジメな展開も。
やっぱりおじいちゃんなんだ! おじいちゃんだ…、おじいさん、おちこむともう、すっかりおじいさん。
そんな夫に常にイライラしながら、怒ったり、ほめたり、皮肉ったりと、心がいそがしい奥様に黒木瞳さん。ヒリヒリしてる感じがよく伝わってきました。
昔イケてた人が「老い」に直面するストーリーを描く映画作品が最近増えてますね。洋画だとアーノルド・シュワルッツネッガーさんが(爺さんでも大活躍!)する映画『ラストスタンド』、邦画だと『龍三と7人の子分』、ドラマだと『緊急取調室シーズン4』(2021)学生運動の元リーダーを演じた桃井かおりさんもすごかったですけれども、この『終わった人』は、昔イケてた人が「老い」に直面するストーリーとしては、邦画ではピカ1だと思います。
盛岡が故郷で帰郷するシーンがありますが、さんさを踊る人達、南部のなまり。冷麺、温かい人々。岩手富士と東北の桜並木、本当に美しいところですよね。映画を観ながら、また岩手に行きたくなりました。「東北に行きたくなる映画」としても成功してると思います。
前半画面の作りがところどころテレビっぽいのが気になりました。ちょっと気になっていたのですが、舘ひろしさん演じる壮介さんの視野が広がっていくにつれて、映画館で観るにふさわしい、壮大な景色がどんどん出てくるようになったので、そういう設計だったのかな? 映画の絵の作り方についても、今後勉強してみたいと思います。