「贅沢な悩みでしょう・・」終わった人 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
贅沢な悩みでしょう・・
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年功序列、終身雇用が当たり前の時代では、良い学校を出て一流企業のサラリーマンになって出世することがほとんどの人々の人生目標だったわけである。そういう軌道に乗れた人でも終点は訪れる、定年と言うのは大きな人生の節目、気力、体力は残っているだけに老人と言うには中途半端、だからあれこれもがくのだろう。
本作は主人公が郷土の誉れ、超エリートの部類で髪結いの亭主だから間違っても食うに困ることはない、子供も自立して、老親の面倒も妹任せなのだから文句を言ったら罰が当たるくらいの恵まれた人。たいていの人は定年を予測してはいるものの、暇つぶしに悩む前に健康や暮らし向きの算段で頭が一杯というのが相場でしょう。
原作者の内館牧子さんは「養老院より大学院―学び直しのススメ(講談社、2006年)」を書かれているくらいのポジティブ思考のお方、ご自身もジムのシーンでカメオ出演されていましたね。
貧乏くさい生活感たっぷりの老後問題ではなくダンディな舘さんを主役にハートフル・コメディを描きたかったのでしょう、いかにも美容院で交わされる初老の奥様方の愚痴ネタを集めたかのようなエピソードでした。
個人的には老人を狙ったオレオレ詐欺や痴呆症がらみの重たい社会派ドラマより気楽に観られる分良いと思うのですが、「パラサイト半地下の家族」がアカデミー賞をとるご時世、これから先を思うと非正規雇用が労働者の4割近い現実では正社員で無事定年を迎えられる人は運にも恵まれた人達でしょう。贅沢な悩みもあったものだと興醒めする人も少なからずいらっしゃるのではないかと思うと、この種の映画自体も時代と共に終わっているのかも知れませんね、嘆かわしいことです。
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