「映画音楽の魅力」すばらしき映画音楽たち odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
映画音楽の魅力
60人を超える映画音楽家や監督、プロデューサー、心理学者へのインタビューに作品群を散りばめたハリウッドの映画音楽入門編、マット・シュレイダー監督は元CBSの記者、映画音楽好きが高じてドキュメンタリーを撮ってしまいました。ニュース帝国CBSの憲法ではニュース素材にBGMは感情を操作すると禁じられていたので欲求不満になったのでしょうか。
冒頭から谷間に響くピアノの音色、マイク・ベルトラミはトミーリージョーンズの映画の為に何やら壮大な野外共鳴装置まで作ってしまったようです、あっけにとられていると有名な「ロッキー」のテーマが流れ親近感がぐっと増します。無声映画時代は劇場のオルガンで盛り上げていたとかオーケストラを初めて映画音楽に取り入れ革命を起こしたのが1933年のSF「キングコング」、「ジョーズ」のテーマとベートベンのモチーフの近似性、ジョンバリーの「007」のテーマは映画音楽にビッグバンドを持ち込んだ意欲作、マカロニ・ウェスタンの旗手エンリオ・モリコーネ、そして映画音楽の神様ジョン・ウィリアムスの黄金時代へと続き現代のジャンルや楽器、演奏に囚われない多様性の出現で締めとなる。それでもマット・シュレイダー監督はやっぱり映画音楽の王道はオーケストラ演奏と言いたいのでしょう、多彩なスタジオで初見のスコア(原題)を見事に演じるプロミュージュシャンへのリスぺクトが滲み出ていました。
ただ成功例ばかりなのでちょっと物足りない、お涙頂戴のわざとらしい切ない曲づけや豊かな自然音を聴かせるべきシーンの疎外、あえて無音にするのも才能の内、シーンを活かすも殺すも音楽次第といった両刃の剣の面もあります。
然しながらそもそも失敗例では素材使用が許可されないでしょうし大半が凡庸なので本作で取り上げられた成功作が際立って聴こえるということかも知れませんね。