静かなる復讐
劇場公開日:2017年8月4日
解説
強盗事件の巻き添えで恋人を亡くした男の復讐を描き、スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞で最優秀作品賞を受賞したサスペンススリラー。宝石店の強盗事件で最愛の恋人を殺された寡黙な男ホセ。事件から8年後、ホセは家族経営のカフェを切り盛りする女性アナと知り合い、関係を持つ。しかし、ホセがアナに近づいたのにはある理由があった。スペインの人気俳優ラウール・アレバロが初メガホンをとり、「マーシュランド」「アイム・ソー・エキサイテッド!」などでアレバロと共演したアントニオ・デ・ラ・トレが主人公ホセ役を演じた。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2017/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017」(17年7月15日~8月18日)上映作品。
2016年製作/92分/スペイン
原題:Tarde para la ira
配給:クロックワークス
スタッフ・キャスト
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2018年9月21日
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主役の喪失感や怒り、幸せだった過去。協力者的な存在のクーロの罪悪感や同情、復讐を止めたい葛藤。色んな感情が静かに動いていった。
最後は賛否あるかもだけど、自分は好き!まさに、罪を犯したら罰があり、罪を償えば救いがあり、復讐には何も残されない。
2017年11月25日
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リベンジモノというとほんと、カオスと猪突猛進な熱意、そして腕っ節!という印象があったのだが昨今の復讐劇っていうそうじゃないのが流行りなんでしょうか。
フツーの一般人が咄嗟にやってしまって、やり始めたら成し遂げるしかなく、ズタボロになりながらも全うするような展開。少し前に『ブルー・リベンジ』を観たのでやたらそう感じてしまった。あれと比べれば今作の主人公ホセの方がまだ計画的であったが。(とはいえ計画的だったのは掴みの部分だけ…)
強盗という1つの犯罪について、巻き込まれて誰かが死んでも当の犯人達にはあまり記憶に残らないのかもしれない。復讐される犯人達は皆デリカシーがなく、口から出る言葉のみで後悔を謳う。自分達のせいで収監されていたクーロにも、謝罪よりも面倒に巻き込むなという意思ばかり押してくる。ホセの家族が犠牲になっていた事などオマケのアクシデントのようだ。最初の殺人で震えながらキレたのも無理はない。
ホセが犯人達と会話もしようとしないため、目的が後悔の念を確認したいのではなく奪われた悲しみを同じように返す、シンプルな報復行為である事が分かる。
クーロにすら今後の予定?を打ち明けないまま案内だけさせて静かに事を済ませていくホセはクールで、感情移入してしまう。
タイトル通りの作品だとは思うけど、絶賛される、という万人ウケする映画だとは思わなかった。リベンジバイオレンスにちょっと飽きた人が箸休めに観るのがいい気が…。
2017年11月19日
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2017年8月14日
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鑑賞方法:映画館
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カメラを回したまま車内から車の転倒を映し出すオープニング。俳優さん、よくぞご無事で…。この激しさから一転物事は比較的淡々と進みます。
人の第一印象は数秒で決まると聞いたことがあります。本作の登場人物達、そしてこの映画全体も、その第一印象をことごとく覆す作りになっています。単なる復讐モノではないようです。
主人公Joseは、観ているこちらが戸惑うくらい、無表情を貫き通します。おとなしくて、無口で、感情を露わにしないので何を考えているのか分からないおじさんという印象。女性を誘う時も、復讐する時も、変わらない表情。しかし事件前のホームビデオでは屈託のない笑顔を見せています。事件が彼の内面をも変えてしまったのだと分かります。
妻の家族からは快く思われていない、短気でムショ帰りのCurro。顔も怖そうですが(^_^;)、捕まっても仲間を売ることはせず(売れば妻とその家族がもっと辛い思いをする)、自分だけ刑に服す所を見ると、仲間からすればとても(都合の)いい奴であり、見方を変えれば友人・家族思いの誠実な面を持ち合わせているとも言えます。
他にも… 犯人探しの過程で尋ねた、如何にもワルそうなチンピラ風の若い男性達。しかし返ってきたのは、留学生だからこの辺のことは分からない、という意外な答え。え?その派手な刺青で留学生?!と疑いたくなりますが、もしかしたら本当に学生なのかも知れませんよね。
お揃いのジャージ姿で男2人が、ダブルベッドの部屋に泊まる…。ラブラブのおっさんカップルか?と如何わしい視線を送る宿の亭主(^_^;)。それかスポーツ試合の帰りとかにも見えます。まさか1人は復讐のため、1人は妻子を救うため、強盗犯を捜索中とは露ほども思わないでしょう。
罪を逃れた犯人達はと言うと、これまた思いがけず非常に愛想の良い人もおり、(影でつまらない犯罪を継続していても、)家族や仲間に愛され、社会に溶け込み普通に暮らしている市民に見えます。
人生を謳歌している犯人達と比べ、動じることなく淡々と復讐を遂行していくJoseの方が、むしろ冷酷極まりない人間のようにも見えてきます。被害者と、彼の復讐に加担することになった加害者という対極に位置する2人の視点から、一つの事件を多面的に見つめることが出来ます。
Curroだけが生かされたのは、既に法の裁きを受け服役したからでしょう。復讐された犯人達は自首することもなく、また何の社会的制裁すら受けていません。Joseが奪われた幸せをのうのうと享受している犯人達。彼らの今の幸せは、他人の人生を奪い、不幸の底へ突き落とした後に成立しています。決して罪は消えないこと、過去の過ちは必ず追いついてくるという真実が、Joseの素人とは思えない、迷いのない復讐によって突きつけられます。しかしある日突然、友を、夫を、父を失うことになる周囲の無実な人々は、またJoseと似た苦悩を抱えて生きることになってしまいます。そして、Joseは捕まるのか自首するのか、それとも逃げて新たな人生を送るのか…。
人間の中の善悪は、明確に区別できるものではなく、白っぽくなったり黒っぽくなったり流動的な灰色なのかも知れません。
強盗に至るまでの具体的なきっかけや、Joseがどのくらい前からどうやってAnaのbarに足を運ぶようになったのか、その辺りも知りたかったですが、恐らく本作の意図からするとそれほど重要なことではないのでしょう。