劇場公開日 2018年4月21日

「少女たちの切なくも美しい友情を描いた傑作」リズと青い鳥 sugikenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5少女たちの切なくも美しい友情を描いた傑作

2018年10月21日
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『リズと青い鳥』★4.5
(東京近郊の方は10月26日まで立川シネマシティで極上音響上映やっているので観に行こう!金は出す!)
傑作『聲の形』の山田尚子監督×吉田玲子脚本の最新作。京都アニメーションの人気アニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフながら、前作の知識がなくても本作だけで楽しめる独立した1本の作品になっている。
物語は高校の吹奏楽部に所属する2人の少女の友情を美しい映像で描いた青春劇。
本作で描かれる少女たちの友情はガラス細工のように繊細だ。ほんの少しバランスが崩れるだけで壊れてしまいそうな儚さがある。しかし、そうであるがゆえに美しい。思春期の少女たちの間でしか成立しえないであろう、奇跡のような瞬間のきらめきを切り取っている。しかし、青春時代にはいつか終わりが来る。少女たちは高校卒業後の進路という現実に向き合うことで、それまでの関係の見直しを余儀なくされる。
タイトルの「リズと青い鳥」とは物語内に登場するオリジナルの童話と同名の楽曲からとったもの。孤独な少女リズと彼女のもとにやってきた青い鳥との出会いと別れの物語を少女たちは自分たちに重ね合わせる。内気な少女・のぞみは自らをリズ、活発な親友・希美を青い鳥だと思っていた。孤独なリズが青い鳥との別れを選択することが理解できず悩むみぞれ。しかし、とあるきっかけで自分こそが青い鳥だったのではないかと彼女は気づく。自分が翼を持つ自由な鳥だと気付いたのぞみは自らの思いを演奏にのせる。
愛しているがゆえに、相手の幸せを願うがゆえにリズは青い鳥との別れを選択する。鳥は大空を自由に羽ばたいている姿こそが最も美しく輝いているから。
そばにいることだけが愛情の形なのではない。相手が最もその人らしくいられるような距離をとることも必要なのだ。
友情とも愛情ともつかない共依存的な関係から抜け出した少女たちは異なる進路を選択する。この先に待っているのは別れである。しかし、別れを選択することで、むしろ彼女たちの関係は以前よりより強固で明るく力強いものになった。
少女たちは2人ともが相手の幸せを願い、自らの小さな幸せを手放せるリズであり、同時に幸せに向かって羽ばたける翼を持った青い鳥なのだ。
青春映画、アニメ映画、百合映画?(個人的には百合とは思わない)の金字塔であり、2018年暫定ベスト映画。12月に発売するBlu-rayはもちろん購入します。
『聲の形』『リズと青い鳥』と傑作を2本連続で送り出した山田尚子監督と脚本の吉田玲子さん(最近話題の『若女将は小学生』もこの方!)の実力は本物。一生着いていきます!
https://youtu.be/lQxwNaoFdQQ

sensei_nyanko